もういいんだ垂直

失い続ける男。 つげ義春のように生きたいと願う 今まで出会った忘れられない女性たちにつ…

もういいんだ垂直

失い続ける男。 つげ義春のように生きたいと願う 今まで出会った忘れられない女性たちについて書きます

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ファンのあの子

芸人だったとき売れなかった僕にも1人だけはっきりとファンといえる子がいた。コンビとしてのファンではなく僕個人のファンだ。その子とどうやって知り合ったのかは忘れてしまったが、いつだったかライブの出待ちをしてくれて手紙をくれた。その手紙には僕の声が好きですと書いてあった。 その頃はまだ僕のファンということに気づかなかった。相方がとてもモテる男だったので、また相方のファンだろうなと思っていた。しかし、その後も何回も出待ちをしてくれ、話していくうちになんとなくそうなのかなと思うよう

    • 近況11

      4月から始めた仕事が忙しすぎて体調に異変をきたし、今週病院に行ったら適応障害と診断された。医者から1ヶ月休職して下さいと言われ診断書をもらった。会社に言ったら受け入れてくれ、休んじゃって下さいと言われた。 大阪の友達に話したらリフレッシュに遊びにこいと言われたので関西に来ている。今神戸の喫茶店でたばこをふかしている。 何をする気にもなれず何しても楽しくない。早く帰って寝たい。 結婚ましてや恋愛どころではない。 自分は何をしたらまともに生活出来るんだろうと考えると頭が重

      • 近況10

        仕事が始まった。初日から残業。今のところ毎日残業。完全なるデスクワーク。来週からはリモートワークになるかもしれないとのこと。職場の人たちはみんな優しくて面白くてよかった。周りの人にはいつも恵まれてありがたい。 恋愛の方はと言えば2人の女の子と引き続き会っている。というか、2人ともと仲良くなりすぎた。 どちらも可愛くていい子で面白くてどちらかを選ぶ決断が出来ない。 もう隠し事や嘘はつきたくなくて2人ともにそれぞれの女の子のことを全部話し、迷っていると告げてしまった。結果的に

        • 近況9

          もう毎日寝て起きて食べるだけの日々。完全に廃人化している。仕事が15日から始まるのでそれまでは自由なのだが自由すぎて何もやる気にならない。ほぼ寝てるから1日1食だし、金使いたくないという理由で大胆な行動も出来ない。もったいない時間の過ごし方をしている自覚はある。 恋愛は結構進んでいる。しかし結婚という目標を考えるとなかなか決断が出来ない状態。もう前みたいにお別れの激しい喪失感とか悲しみとか二度と味わいたくない。 古本屋で岡村靖幸の結婚への道という本を買った。いろんな芸能人

          札幌のあの子 後編

          僕は好きになった子とデートを何回かした。彼女と別れた寂しさや彼女のことを想うと後ろめたさも少し感じたが、それもだんだん薄れていった。 最後にお互い貸し借りしあっていたものを返したり精算するために彼女と大宮であった。昔一度一緒に入ったことのある細い路地のレストランで少しご飯を食べた。何を話したかはもう覚えていない。 店を出て僕は東京方面に、彼女はその時住んでいた福島に帰ることになると思ったが、彼女は新宿まで一緒に着いていくと言ったので一緒に電車に乗り、話をしながら新宿に向か

          札幌のあの子 後編

          近況8

          内定先に入社することが決まった。具体的な日付はまた面談するらしい。とりあえずもう無職は卒業できそう。 元彼女を引きずりまくっている毎日が続いてとても退屈。払拭するために藁にすがる思いでまたマッチングアプリを登録した。今2人の女の子と打ち解けて連絡をとっている。どちらも僕にはもったいないくらい可愛くていい人。退屈だった日常が一気にきらめき出した。今度は真剣に相手を愛せるように誠実に向き合う。来週のデートのために洋服を買いに行きたい。 サニーデイ・サービスがまた聴けるようにな

          札幌のあの子 中編2

          僕は一目惚れをしたその子に夢中になり、彼女との別れを決めた。 浅草の喫茶店で別れないかと言った。彼女は全てを悟ったような落ち着いた表情で「どうして?」と聞いてきた。好きな人ができたことを伝えた。「私もう30だよ」という彼女の言葉が辛かった。さらにこう続けた。「都会の絵の具に染まっちゃった?」彼女は木綿のハンカチーフが好きだった。僕が東京に行くことになり最後に宇都宮で2人でカラオケに行ったとき、彼女は僕に木綿のハンカチーフを歌ってくれた。この状況の中、この歌詞を質問で投げかけ

          札幌のあの子 中編2

          札幌のあの子 中編

          遠距離恋愛はうまく続いていたと思う。事務所に所属し、芸人になって同期たちとルームシェアを埼玉でしていた時期、ルームシェアを終えて一人暮らしをした時期、母が他界し実家に戻った時期、だいたい5、6年の間はうまく続いた。彼女が遠くからライブを観にきてくれたり、僕も彼女の元へ宇都宮に遊びに行ったり。 宇都宮に行くたびに僕は学生時代の懐かしさと、東京で奮闘している日常から解放されるような不思議な感覚を味わった。 彼女の研究室に夜忍び込んで普段の彼女の生活を覗き、2人のお気に入りの喫

          札幌のあの子 中編

          近況7

          奇跡的に内定もらった。求人の記事書いたり編集したりする仕事。ほぼリモートワークで、年収も僕なんかの経歴の人間にしてはかなりいい。二次面接の最後に実はもう内定の書類用意してますと言われ、その場で内定が出た形。びっくりして動揺しまくった。 今決めて欲しいと言われたけど、まだ他の会社の面接が控えてるからもう少し待ってくださいとお願いして少し猶予をもらった。しかし、その間に採用枠が他の人で埋まったらそれまでという状況。 かなり悩んでいる。ほぼ、ここで決めてもいいかなと思っている。

          近況6

          元芸人の先輩のルームシェアの部屋に空きが出たから入らないかと声をかけていただき、先月から格安の家賃で東京に住んでいる。 最近はその先輩たちやルームメイト、元芸人の先輩に後輩、大阪の友達などたくさんの人とコミュニケーションをとることでいろいろ活力が戻ってきた。就活も先輩がいろいろ対策を教えてくれたおかげで現在2社最終面接まで進んでいる。他にもこれから一次面接がある会社もあり、順調ではある。仲のいい先輩にはバイトも紹介してもらった。 いろんな人に支えてもらっているなと思う。僕

          札幌のあの子 前編

          僕は大学1年生のときから10年付き合った彼女がいた。彼女とは大学の同じ学科で仲良くなり、恋人になった。僕にとって初めての彼女だった。彼女は動物が大好きで、3年生のときには動物の学科に移動し研究職を目指した。 彼女との思い出は数えきれない。学生の頃から芸人時代まで、僕の全てを知っている女性だと思う。僕がすること全てを温かい態度で応援してくれていた。 芸人になったそもそものきっかけも彼女だった。学生時代、彼女に対して重い気持ちを持ってしまっていた僕は、彼女以外に何か夢中になれ

          札幌のあの子 前編

          湘南のあの子 後編

          僕は密かにマッチングアプリを始め、何人かの女の子と会った。そしてTwitterのアカウントを作り、仲のいい先輩にだけ分かるようにその女の子たちとのデートを呟いた。 内容は別に女の子の悪口を言ったり蔑んだりするようなものではなく、こんな子がいるんだ、と言うような内容で、どちらかと言うと自分を貶めて笑いを誘うようなものだった。それを先輩に見てもらうことによって「お前バカだな」と言って欲しかった。 芸人の性が身に染み付いている。僕は笑われたかった。自分の存在意義を確認するように

          湘南のあの子 後編

          湘南のあの子 中編

          やがて僕と彼女の楽しい日々に翳りが差しはじめた。彼女は結婚をしたいと言い出だした。つまり芸人を辞めてほしいということだ。辞めないなら別れてほしいと。売れない芸人にはよくある話だ。 彼女の言い分はこうだ。「私は芸人のあなたじゃなくて普段のあなたが好きなの。普段のあなたと結婚して仲良く楽しく生活していきたい。」僕は当時芸人の活動に疲れていた。なかなか思うようにいかず、相方とも喧嘩ばかりで、楽しいからはじめたはずのお笑いが全然楽しくなくなっていた。いっそ辞めてどこかへ消え去りたい

          湘南のあの子 中編

          湘南のあの子 前編

          彼女とは芸人の時に合コンで知り合った。完全に一目惚れだった。僕は当時長く付き合っていた遠距離の彼女がいたが、その彼女と別れてまでこの子と付き合いたいと思った。結果、付き合っていた彼女とは別れ、この子を遊びに誘いまくって押しに押してなんとか彼女は僕の恋人になった。その時は本当に嬉しかった。 恋愛を思い切り楽しむには自分達に酔ってしまうことだ。「僕たちってなんだか最高だよね!」「この場所は僕たちが写真を撮るために存在している!」バカップルになるというか、「君が最高で、君といられ

          湘南のあの子 前編

          近況5

          やっと風邪も治ってきてまともな体調に戻った。転職活動に本腰を入れ始めたが全然進展しない。再就職までの道のりは長そう。なんのスキルも実績もなく、たいした職歴のないアラフォーを採用する捨て身の会社はなかなか存在しない。 職業訓練に通おうと思ったが申し込み期限が過ぎていた。失業保険もそろそろ切れるのでバイトを始めた。 僕の心配をいつもしてくれている親戚のご夫婦が食事をご馳走してくれた。帰りにはお小遣いを3万円くれた。恥ずかしいとかみっともないとか情けないという感情はない。ただた

          台湾のあの子 後編

          彼女は何人かの男性とデートするようになった。女友達の友人や、仕事関係のイベントで知り合った人などにご飯に誘われたり遊びに連れていってもらうようになっていた。僕はその報告を逐一受けていて、「なに、あんた嫉妬とかしないの?」なんて言われていた。 嫉妬という感情とは無縁だった。むしろいろんな男が彼女にどうアプローチするのか、どんなデートをしてどうアクションするのかに興味があり、彼女の話を面白く聞いていた。その心理の根底には、自分より彼女のセンスや趣味に共感でき、自分以上に彼女を楽

          台湾のあの子 後編