札幌のあの子 中編


遠距離恋愛はうまく続いていたと思う。事務所に所属し、芸人になって同期たちとルームシェアを埼玉でしていた時期、ルームシェアを終えて一人暮らしをした時期、母が他界し実家に戻った時期、だいたい5、6年の間はうまく続いた。彼女が遠くからライブを観にきてくれたり、僕も彼女の元へ宇都宮に遊びに行ったり。

宇都宮に行くたびに僕は学生時代の懐かしさと、東京で奮闘している日常から解放されるような不思議な感覚を味わった。

彼女の研究室に夜忍び込んで普段の彼女の生活を覗き、2人のお気に入りの喫茶店やレストランでご飯を食べ、誕生日を祝った。

しかし僕は彼女がそばにいないのをいいことに、東京では合コンに行ったり他の女の子と遊ぶようになった。彼女が好きでなくなったのではなく、単に遊びたかったという気持ちからだった。

浮ついた気持ちと、芸人として結果を出せてないことにストレスを感じ、それから逃れるために僕はいつからか遊んでやろうというスイッチを入れた。彼女がよく「最後に私のところに帰ってきてくれればいい」と言っていた言葉に甘えていたとも思う。会う度の彼女とのセックスもプレッシャーになっていた。

僕はやがてもう一度引っ越し、東京で一人暮らしをした。その時期に合コンで知り合った女の子に一目惚れをしてしまう。


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