湘南のあの子 後編


僕は密かにマッチングアプリを始め、何人かの女の子と会った。そしてTwitterのアカウントを作り、仲のいい先輩にだけ分かるようにその女の子たちとのデートを呟いた。

内容は別に女の子の悪口を言ったり蔑んだりするようなものではなく、こんな子がいるんだ、と言うような内容で、どちらかと言うと自分を貶めて笑いを誘うようなものだった。それを先輩に見てもらうことによって「お前バカだな」と言って欲しかった。

芸人の性が身に染み付いている。僕は笑われたかった。自分の存在意義を確認するように密かにそれを続けた。

しかし、その行為が彼女にバレてしまった。SNSは恐ろしい。絶対に気づかれないように限られたアカウントにしていたつもりだったが、その仲のいい先輩からバレてしまった。Twitterが勝手に関連づけて彼女のもとに僕のアカウントが届いてしまった。

なんともまぁ、ものすごい愚かなオチがついてしまった。

喫茶店で彼女から別れたいと言われ、分かったと言った。その時僕は芸人を辞めた辛さや、そのきっかけを作った彼女への苦言、自分の行いの言い訳を彼女にぶちまけてしまった。全て自分が悪いのは分かっていたけれど、言わずにはいられなかった。そこが僕と言う人間の小ささを表している。

彼女はそれを聞いて、「ごめんね。私が壊しちゃったかもね。でも私たち2人とも、真剣じゃなかったかもね。」と言った。先に僕が喫茶店を出て、それが最後のお別れとなった。

一度彼女から結婚の話が出て、別れると言われた時は本当に悲しくて大泣きし、ストレスで身体中に蕁麻疹が出来もしたが、この時はなんにも感じなかった。

それから1年後くらいに、好きなバンドのライブを渋谷で観た。彼女と付き合っている時は一緒に行ったこともあるバンドだ。実はその時ライブに彼女も来ていて、僕を見つけたと言っていた、ということを共通の知人から後で聞いた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?