見出し画像

【深夜の映画感想:恋する惑星】知らない時代の知らない土地での話。でもなぜか懐かしさを感じる不思議な映画だった

これは映画『恋する惑星』の魅力に引き込まれた女が書く、ただの感想文(お気に入りポイント付き)である。

『天使の涙』についての感想はこちら

作品概要

題名 :『恋する惑星(重慶森林)』
制作年:1994年
監督 :ウォン・カーウァイ

記念すべき初めてのこと

この映画は一言で言うと、「失恋したイケメン警察官2人がそれぞれポエムチックな台詞を吐きながら、新たな道へと進んでいく過程を描いた物語」である。正直ストーリーがはっきりした作品でないため、好き嫌いはかなり別れるものではないかと思うが、刺さる人には本気でぶっ刺さる作品だ。

かくいう私もその1人だった。
久しぶりにやることもないしと、YouTubeに保存してあった「気になる映画の予告リスト」の中から、この映画を引っ張り出した自分を褒めてやりたいし、鑑賞後には今まで避けてきた映画を題材にした文章を書きたいと思うほどだった。

この映画の魅力

『恋する惑星』に引き込まれた理由の1つ。それは台詞がそれぞれ輝きを持っていることである。和訳された文章を飲み込んでいるからこそ、直接的に美しさを感じられないのが悔しい。
台詞を1つずつ並べて、押し花のように閉じ込めておきたい。言葉の輝きは失われないのだから、わざわざ保存しなくてもいい。そんなこと言われなくてもわかってるけれど、ふとした瞬間に見返したくなるそんな言葉たちだった。

その時、2人の距離は0.1ミリ 6時間後、彼女は彼に恋をした

恋する惑星

流行りの安い言葉で説明するのなら、エモい台詞が散りばめられたこの作品。しかしそれ以外にも魅力がたっぷりと詰まっている。お気に入り場面や設定を以下に書き記しておこうと思う。

彼らは自由な彼女達に恋をした

大前提私は、『ナラタージュ』や『バンジージャンプする』などのような、「周りが見えないほど誰かを愛する」という重ためな感情が垣間見える恋愛映画が好きだ。

この映画に出てくる登場人物は、「賞味期限間近のパイナップル缶を集めながら、彼女と復縁したいと願い続ける女々しい男」や「別れた元恋人を部屋中探し回ったり、タオルやぬいぐるみにまで話しかけたりする男」達で、先に述べた私の求める感情を持ち合わせていた。
しかも付き合っている時には恋人の足のマッサージをしたり夜食を買いに行ったりしてくれるという。

そんな彼らを惑わすのが自由な女性達。「冷蔵庫で涼を納る派手なリップの女」や「店に嘘をついて仕事を休み、好きな人の部屋に無断で上がり込む女」。別れた元恋人達も少ない情報の中ではあるが、自立した女性のようだった。

私は割りかし保守的な思考を持ちやすい人間であると自負しているため、こういった自由な女性に憧れやすい。そして、自由に生きながらも愛を手に入れた彼女達が羨ましかった。

ぬいぐるみに話しかける663号

この映画から学ぶ失恋の立ち直り方

先に説明したように、この物語には失恋した2人の男性が登場する。2人の失恋からの立ち直り方が対照的であったので注目してみたい。

物語の前半部分に登場する、金城武演じる223号は彼女と別れた後、馴染みの店の前でひたすら知り合いの女性に電話をかけて寂しさを紛らわせる相手を探す。
良く内容を確認してみると自分のことを覚えてない、ただ学生時代に隣の席だっただけの人にも声をかけるほどだった。それほど誰でもよかったのだろう。

彼のそう言った心情が読み取れるのは、バーで「次に見つけた女性に恋をする」というセリフを放ったことからも容易に想像できる。

だが223号の傷ついた心を癒したのは、結局その女達ではなく自分自身であった。

心に決めた女性の横で、映画を2本見ながら飯を食う。そして「美人には綺麗な靴が似合う」と自らのシャツで彼女の靴を磨く。
その後寝たふりをしたままの彼女に覆いかぶさることはなく、誕生日の朝に汗を流した。涙は運動して蒸発させるというのが、その時の彼にとって最適解であったようだ。

それに対して物語の後半に登場するトニー・レオン演じる663号は、「新しい恋」をきっかけに過去の恋から立ち直る姿が描かれている。この映画の好きなところは人それぞれの考えを否定していないところ。失恋の立ち直り方は十人十色だった。
この話が好きでたまらないので、語ると長くなってしまいそうだ。今回のところは熱が溢れる前に蓋をしておく。

またこのそれぞれの行動は、認識番号にも隠されているのではないだろうか。
私がよく映画を見る時に確認するエンジェルナンバーに注目すると、223は「強い信念を持って、主体的に進む必要があること」、663は「希望に満ちた魂の象徴で、気分を明るくし、人生を向上させるサイン」とのこと。
なんとなく、2人の結果に合っているような気がした。

5月1日が賞味期限のパイナップル缶を必死に探す223号


どこからか現れた懐かしさに後ろ髪を引かれて

本当は更に多くお気に入りのポイントはあるのだが、これ以上書くと止まらなくなってしまいそうなので、一旦留めておこうと思う。

題にも記載したこの不思議な懐かしさの正体は、おそらく私の好きな中華料理やYouTubeでよくみる擬似動画のせいだろう。
(おそらく、私の好きな『未来日記』のスケッチブック編?も多少なり影響していそうだ※ここの舞台は台湾であるが…)

素敵な思い出は見返したくなるもの。
それの感覚と同じように私はこの映画を何度も見返すだろう。

これだから映画が好きなんだ。
思い出や行きたい場所が、普通に生きる何倍ものスピードで増えていく。コロナ禍だとしてもそれは変わらない。

悲しいことに思い立って、劇中のようにすぐカリフォルニアへ飛び立つなんて、昔以上にハードルが高くなってしまった現代。私だって今すぐにでも台湾へ飛んで行って、あのお店でコーラとピザ頼みたい。

だけどそんなことは難しいから、とりあえずこの興奮を治めるため、近所にある行きつけの古びた料理店で、魯肉飯でも頬張ろうかと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?