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女が憧れるとってもかっこいい人

あ~頑張ったよく頑張った。
本当にありがたいことにここ数日
お客様がたくさんいらっしゃって久しぶりにしゃべりすぎて
がらがら声である。

気温が下がり急に厚手のニットやアウターをお求めになられる方でお店は大盛況だ。

改めて言うと
私の職場は洋服屋だ。
しかも、モールなどに入っている
ファストファッションなどではなく

百貨店や路面に立つ
ちょっとした高級なお洋服を扱うお店だ。

こういったお洋服を求めに来られるお客様は
「衣・食・住」の「衣」だけを求めに来られている訳ではない。
生きる為のお洋服なら、別に低価格でも現代なら
それなりにいいものはある。

いろんな意図や価値観を求めて
ご来店される為
濃厚な接客や技術、コーディネート力が必要となり

忙しくなると一日中しゃべってて
それなりに頭が疲れるし、集中力がいる。
立ち仕事で体力も使うし
みんなが思っている程キラキラしたものではないのに
どんなに疲れてたり悲しいことがあっても
キラキラした自分を演じるので精神的にも疲れる。

今回、数日noteの更新をお休みした理由はそれである。

睡眠も食事も気をつけ
なるべく仕事以外で頭を使わないようにした。
疲れをためないように努めてはいたが
連勤明けの今日の休み
死ぬ程爆睡した。

疲れと季節がわりも重なりお肌のコンディションが最悪だ。

カムバック時期に忙しくて睡眠不足に陥るのに
やたらとお肌が美しいKPOPのアイドルたちの
肌コンディションの管理方法を本気で学びたい。


まぁ、こんな状態だが
それでも私はこの仕事がとても好きである。

なぜならこの仕事には

「素敵な出会い」

が、たくさんあるからだ。
基本、私のブランドに来るお客様は
私よりも人生の先輩たちだ。

十人十色ではあるが
身だしなみに気を使い
とても素敵な年齢の重ね方をされている人が多い。

先日、ご来店されたお客様の話だ。
年齢はover75である。
うちにご来店されるお客様の中でも
かなり上のご年齢だ。

しかし、とってもかっこいい 
私の憧れの女性である。

先日ご来店された際
彼女のファッションstyleは

「デニムオンデニム👖
インナーに白黒ボーダーのタートルネック」

だった。
しかもトップスのデニムシャツは
Levi'sの20年程前のモデルで大切によく着ているのだろう。
完全に自分色にデニムが育っている。

そして、ボトムスはもはや世界のデニムブランドとして名高い
岡山児島産だ。
しかも、赤耳。
耳を見せる為にロールアップをしている。
恐らく、世界でも数台しかない希少な機械で作られている。
海外のハイブランドでの取り扱いも多い
児島産の中でもトップスクラスに価値の高いヴィンテージデニムだ。

それを、ピンクアッシュのベリーショートヘアと綺麗に磨かれたパラブーツで
着こなすover75のかっこよさは半端ない。

若年層がやると、間違いなく服に着られてしまうやつだ。

そんな素敵なお客様にご指名を頂き
コーディネートを担当させて頂けるのは
本当に販売冥利につきる。

今回、ご来店された目的は
その最高にお洒落なファッションに合わせた軽めのアウターが欲しいとの事だった。

迷わず私は国産縫製で高級ウールとアルパカ混合の
ニットブルゾンをお勧めした。

お値段7万円だ。

カシミアでもないニットアウターに7万円?
と思う人もいるだろうが
今回のお客様のコーディネートに見劣りしないレベルのものとなれば
このレベルで最低ラインである。

逆に本来なら30万超えのレザーのジャケットをお勧めしてもいい所だが
彼女の要望は

「デニムに合うアウター」

だ。あくまでも主人公はデニムで
このデニムを更に輝かせる為に探しに来られているので
それを殺しかねない程のアイテムはタブーである。

そしてその7万円のニットブルゾンを
ご試着頂き、一発でお決まりになられた。

そしてアクセントに
イングランド製の高級ウールのチェックのマフラーをコーディネートして

そちらも一緒にご購入が決まった。


恐らく、私の話だけ聞いてると
こちらの女性

「ただのお金持ちじゃないか」

と、思った人も多いだろう。

実は違う。彼女は

「無駄な買い物をしない」

だけだ。もちろん、目利きがいいのもあるが
自分が納得しない中途半端なものにはお金を払わない。

その分、先ほどのLevi'sのデニムシャツのように
いいものは大切に何十年でも使い続ける。
結果最高にコストパフォーマンスがいい。

流行ものではなく、自分に似合うものを知っている人の買い方だ。
だからお洒落なのだ。


聞いた話によると
彼女の人生は決して楽なものではなかった。

若くして最愛の旦那様を病気で亡くし
女手一つで3人の子どもを育て上げた苦労人だ。

彼女には心の支えになるものがあった。
それは、結婚する前、ナースとして働いていた頃
自分のお給料でご褒美に
百貨店で購入した高級バッグだった。

今は似合わなくても
いずれこのバッグが似合う女になりたい
という思いで選んだそうだ。

結婚して出産、子育て
そして旦那様の死に伴い
更にそのバッグは使わなくなった。

でも、どんなに苦しくてもそのバッグを手離すことはしなかったそうだ。
つらい時にはそのバッグを手に取り
子どもたちが自立して自由な時間が持てるようになったら
絶対このバッグをもう一度使うんだ。

そういう思いで頑張ってきたという。


話が変わるが
数日前にTwitterとnoteで
「若い女×ハイブランド=風俗嬢」 論争で炎上した一件を見かけた。

内容事態は炎上目的のツイッタラーが
noteを購入させる為に起こしているだけなので
正直興味がない。

但し、それに対して呟いたとある
育児垢のツイートに違和感を覚えた。

「私が若い頃に買って1番無駄だと思ったものがハイブランドのバッグだった」

確かに育児にハイブランドのバッグは必要ない。
だからといって、働いて苦労して買った高級なバッグを

「無駄」

と言い切る必要性はあるのだろうか?
まず、作り手に対して失礼だし
何より、「今の自分を肯定する」為に
「ハイブランドのバッグ」を使って
「過去の自分を否定している」ようにしか見えない。

ヴィトンなどのハイブランドが
修理を受け付けているのはなぜか?

それは自分たちの大切な商品を
何十年も何百年も何代にも渡って使い続けてほしい

という思いからだ。

今の時代、不景気とはいえ
まだまだ欲しいものはある程度簡単に手に入る。
いらなければ、メルカリにでも出せば
いい価格で売れるものもある。

だからこそ先ほどのお客様のように
自分が選んだ「物」をもっと大切にして欲しいと作り手側や売り手側は思うし
その考え方の方が粋だとも思うのだ。


話は戻るが、先ほどのお客様は言う。

「男も女もMr、Mrsを止めたら人間はその時点で生命力を失うわよ。
お洋服はあらゆる動物の中で人間だけが与えられた特権なの。
厳選して納得の出来るお洋服を着ることで生命力がみなぎるわ。」

そして更に言う。

「若い頃は、自分が似合うものが分からなかった。
だから流行ものに身をまとって誤魔化していたけど
今は違う。今の方が人生もお洒落も楽しい。
年を取るって本当に素敵なことよ。」と。

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