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少年散歩。

太陽はさんさんと道路を照らしていて、僕の五歩、いや七歩ぐらい先を歩いているビチッとパリッとしたスーツを身に纏った会社員の頭もついでに照らしていた。

僕も二十年後、もしくは10年後、いやもっと早いかもしれない。僕が学生の内に能無しの頭から髪に上手く栄養が行かないようになっていき気が付けば目の前にいる光景を毎日鏡の前で見ることになってしまう可能性がある。そんなことを思ってしまった僕は、先の道を歩くことが怖くなってしまった。

けれども、僕は歩く。
先の道は怖いが立ち止まる事の方が何倍も怖いことを僕は知っているからだ。

スマホの画面にはAM8時58分と無機質なまま映し出されていた。何の感情もない文字に対して普通の学生ならば、心臓が早まり、それに合わせるようにして脚を魔回転されるだろう。しかし、今現在僕は歩いている。

なぜ?と大人やクラスの友達に聞かれても僕はわからないと答えるし加えて言うとしたら何となく、と言って会話を終わらせると思う。

いつも自転車で走っていく道は、やけに静けさが蔓延っていて普段聞こえないであろう、風が葉を揺らす音が鮮明に聞こえてきて、この街にはまだまだ驚きと発見があるのだなと感じ、久方ぶりに自然と一体化したような、産まれてきた心のままで街を歩くことが出来た。

そのままの心で歩く。

それから僕は道で会うおばあちゃんに全力の笑顔で挨拶をしてこの世で一番の優しさを受けとり、道端で花を咲かす者の匂いに呼ばれた小さな子にも心を奪われ、暫くすると作業を終え羽音を刻みながら空の青に吸い込まれていく様を兄弟と生き別れる瞬間のような悲しみを覚えたかと思ったら、次に会う子犬を連れた婦人に直ぐ様別の感情を植え付けられてしまう。

今日は感情の動きが一段と激しい。
まるで人間のようであり、もっと言えば無垢な少年。まさにそれだった。

AM9時40分。
もう学校では一時間目が終わりを迎えようとしている。

僕が進む道には数多の人種が歩いてる。
けれど、学ランで歩く人間はたった一人。
たった独りの僕は一応大人だったし一応少年でもあったのだ。

それが分かっただけでも、意味があった。

もう一度だけスマホを睨む。
時刻はAM9時50分、二時間目が始まった。

僕は遠くの山に佇む学校へと先程よりも小走りでビシッとした学ランを風に吹かせながら、散歩がてら向かったのだった。

そうだ、きっと

僕は紛れもなく社会からはみ出したあの時間だけは少年だった、

毎日マックポテト食べたいです