私労働小説 ブレイディみかこが「私たち」のクソみたいな仕事をロッキンに書ききった
クソみたいな仕事ってなに?
それは「自分が自分でなくなってしまう」仕事。
クソみたいな仕事をしていたら自分が自分でなくなる。
自分が自分でなくなってしまうと自分ではない、それは、ない、
ありえない、あってはならない。のに。でも。
それでも。
クソみたいな仕事をしている主人公たち、
つまりそれは著者自身であり「私」である。
そんな「私」たちの〝私労働小説〟。
『私労働小説 ザ・シット・ジョブ』
この本は、
出てすぐに買って、
勿体なすぎて1章1章読んだのだが、
毎回気持ちが鷲摑みにされるものだから困った。
怒りと悲しみと途方もなさやるせなさと、
苦しかったこと悔しかったこと許せなかったこと、あ、過去形じゃないな、
苦しいこと悔しいこと許せないこと、
自分の、まわりの、身近な人や身近でない人のそれらを思い出したり、思わされたり、思ったりもして。
でも、同時に、自分の中で自分が自分であるブレなさ激しさのようなものからの、「前を向く」気持ちを掻き立てられた。
不思議な読書感というか読後感、
まさにロック、音楽の中に居るような。
好きな音楽(激しめのね)を聴いて、聴いた後の気分のような。
すぐに言葉にしたいけれど、
それをすると今までや
いつも以上に勢いまかせだったり素敵に口が悪かったりになりそうだったり、
「痺れた、唸った、泣いた、生きようぜ、生きる」みたいなことだけになりそうで、
でもそれでええんちゃうかとも思ったりして、
しばらくの間、それこそ労働や大事な用事へ向かう際、ずっと鞄に入れていた。
なんだそれ。
でも、本当のこと。
吐き気がするほどロマンチックだぜ。
ブレイディみかこさんは、
お子さんの目を通して多様性社会の決して「よいこと」だけじゃなく、
どうしようもなさ難しすぎるさ、
でも、みてみぬふりではなく、痛みと共に考えていくことを広めた『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で一躍人気になられるも、
この本を出した責任と覚悟のようなものと共に、次々に、ブレず新しい深掘りの視点で、書き続けておられる。
物凄い熱とソウルとスピードで、
まるで次々に殴り込みをかけるかのように、出し続けておられる。
シンパシーとエンパシー。
だけではなく「アナーキーな視点」。
自分自身という芯を持ちながらの〝アナーキック・エンパシー〟の大切さと、
そこから、「経済」に目を向けることや学ぶことの重要さを説かれ、
「リスペクトの気持ちとDIY」をテーマにした小説のの後の、今作。
今作のテーマはずばり、「セルフリスペクト」だ。
ロックな「ブレなさ」が生み出した1冊にまたもや熱くなりながら震え奮い立たされる。
「自分を愛するってことは絶えざる闘いなんだよ」
それが出来なくなる環境や時勢や国や他者、現代社会の問題。
エッセイではなく、小説として、
小説は小説でも、私小説、だけど私小説(だけ)じゃない、〝私労働小説〟として。
だから、「私」という視点から他者や社会を思わされる、考えるをえなくなる。
抉られる。抉られた。
パンと薔薇。
薔薇、つまり人の「尊厳」の大切さ。
でも、尊厳を大切にするには、パン、
つまり日々食べていくこととものが不可欠で、
経済と人の尊厳は切っても切り離せない。
尊厳もパンも、パンも尊厳も必要だ。
これは、「アタシ」の、私的な、でも、アタシの話だけでなく全ての人の労働と薔薇の話、生きる、生きて行くこととための「ほんとうの」話だ。
*
こちらの本を含むブレイディみかこさんの本など、
東京湯島の「本屋・出発点」内
箱貸しシェア本屋「はこハブ」コーナーの
我が「本屋・桃花舞台」に置いてます。
よければ是非遊びに来て下さいませね。
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以下は、自己紹介 。よろしければお付き合い下さい。
構成作家/ライター/コラム・エッセイスト
中村桃子(桃花舞台)と申します。
旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。
普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、
各種文章やキャッチコピーなど、やっています。
劇場が好き。人間に興味が尽きません。
舞台鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)と、
学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)、
本を読むことと書くことで生きてきました。
某劇団の音楽監督、
亡き関西の喜劇作家、
大阪を愛するエッセイストに師事し、
大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。
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