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人生を語らず

瀬戸内にある島のひとつに先月行った。
いまだに考えても行く理由はわからん。
が、旅気分も持って訪れた地は近年アニメやドラマの舞台になったりもしている通称「神の島」のうちのひとつらしい。
 
故人はそこで神主をしていたという。最終的には。
 
若い頃その地で次々にあたらしい事業を手掛けたり、
だからそこで考えることやることは……以下省略。
血のつながりもないし、いまだに誰なんだかよくわからないこともあり、
無を通り越して真顔になるを通り越して、見知った人に、
「え、紀伊国屋文左衛門? 藤山寛美? やしきたかじん?」
みたいなしょうもないことを言ってしまったら
「そうやそうや」と言われたから笑うしかなかった。
「松本清張ドラマみたいやなあ」とも思った。
言わんけど。事件や殺人はないしね。
 
そんな故人が最後に選んだ仕事が神主と農業だったらしい。
 
「罪悪感っていうか、懺悔的な気持ちからだったんやない?」
 
そんな美談にせんときぃな。でも、するんやろう。
せな気持ちが整理出来へんのかもしれへんなあ。
 
最終最後は交通事故に遭って入院となったが、
リハビリ中も数字を見たときだけ、「今日はボートの日じゃ」と正気になったりを繰り返し、そのまま旅立たれたという。
 
「ブレないですね」

無&真顔を越えて一周回った言葉を肚から返した。
 
同じく死ぬ前に病床で「ボートのプロペラが欲しい」と謎に口走った父親を持つ身としてしみじみしてしまったのかもしれない。
 
式は神道の形式だった。
無論わたしはそんな形式も出向いたのも初である。
参列者のひとりである知らないジイサンはしみじみと呟いていた。
「これ、皇室とおんなじ形式やで」  
どっかから来た若い神主さんはめちゃくちゃ緊張していたが、
年寄りが多すぎるせいか何度も参列者のスマホが鳴りまくった会場にブチ切れ寸前だった。それだけじゃない。
葬儀で一番のハイライトで爺さんたちが妖怪大戦争みたいに集まってきて、
その中のぬらりひょん的存在の人が恭しく言った。
「では般若心経でみおくりたいと思います」
大合唱の中神主さんは真顔に怒りを滲ませながら冷や汗を流していた。
ああ、聞きたかった話したかった。
 
『人生を語らず』という拓郎の歌があって、
世代でもないのに時折思い出す。
『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』でも使われていた。
この歌について歳をとってからの拓郎が何かでインタビューを受けていた。
「今でもまだ人生を語れませんか?」「今は語れる」
語れるんかい。
 
学生時代に居た劇団絡みでは、卒業後に神主になった先輩も寺を継いだ後輩も居る。
どちらもエピソードに事欠かないほどにファンキーでクレイジーだ、今もいまだに。
 
ボートのプロペラを所望した父にわたしはありとあらゆるツテと根性を使ってGETした。でも間に合わなかった。
なぜか病院のメモ帳に食べたいものと共にゆるキャラみたいな山頭火の絵を描いていたのを亡くなってから見つけた。
皆気持ち悪がったり鼻で笑ったり好き勝手を言ったりしたのでわたしがもらった。どこかへなくしてしまって今はもうない。


◆◆
【略歴や自己紹介など】

構成作家/ライター/エッセイスト、
Momoこと中村桃子(桃花舞台)と申します。

旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。

普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、
各種文章やキャッチコピーなど、やっています。

劇場が好き。人間に興味が尽きません。

舞台鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)と、
学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)、
本を読むことと書くことで生きてきました。

某劇団の音楽監督、
亡き関西の喜劇作家、
大阪を愛するエッセイストに師事し、
大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。
lifeworkたる原稿企画(書籍化)2本を進め中。
その顔見世と筋トレを兼ねての1日1色々note「桃花舞台」を更新中。
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