クリスマス・プディングについて
今回の記事は、イギリスのクリスマスについてロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館所蔵の古いイラストも交えてご紹介します。
イギリスの伝統的なクリスマス菓子の一つ、
クリスマス・プディング。
黒っぽいドーム状の塊で、クリスマス当日のランチを食べた後にデザートとして食べられます。
このお菓子は、プラム・プディングとも呼ばれかなり昔からイギリスで親しまれていました。レーズンやサルタナ、オレンジピールがたっぷり。クリスマスを連想させる香り、シナモン、ナツメグも入っています。中に空洞はなく、ぎっしりと詰まっていて、濃厚な甘さなので、少しだけ切り分けてもらえば十分満足。カスタードソースやブランデー入りのクリームを添えていただくと美味しい。
イギリスのクリスマス
ヘンリー8世によって英国国教会となったチューダー朝のイングランドでも、クリスマスは重要な祝日の一つとして祝われました。ただ宮廷の華やかさに反して、多くの人々は農民で貧しい生活をしていたため、家族で今のようにクリスマスを祝うような文化はなかったようです。その後、ピューリタン革命(政治的背景)や産業革命(祝うための経済的余裕がない)などの間、人々がクリスマスを祝う風習はすたれてしまいました。
イギリスで今のように家族や友人で集まり、子供たちとともにクリスマスを祝うようになったのは、ヴィクトリア時代中頃になってからといわれています。ヴィクトリア女王の夫アルバート公は、祖国からクリスマスツリーの風習を取り入れて、ウィンザー城で楽しむようになります。家族団らんで過ごす、あたたかなイメージのクリスマスは、この時代に浸透しました。ヴィクトリア女王は、自らが家族と過ごすクリスマスの様子を通して家族愛溢れる女王一家の姿を国民に向けてアピールしたのです。
この時代にクリスマスカードやクリスマス・クラッカーも発明されました。
クリスマスの翌日、12月26日ボクシングデーが1871年より英国では公式に祝日となり、庶民でも休暇をとって実家に帰ることができるように。クリスマスの当日にお屋敷に仕える使用人たちは、クリスマスのディナーの後に主人からクリスマスディナーの残りとプレゼント、特別手当があてがわれ、翌日に実家に帰ることが許されました。
英国の人気小説家チャールズ・ディケンズ
ヴィクトリア女王とアルバート公の他にもう一人、クリスマスの普及に貢献したのが、小説家のチャールズ・ディケンズ。ビクトリア時代に活躍したディケンズは、「クリスマス・キャロル」(1843年出版)の中で、クリスマスに人々が集まり、食卓を囲み、笑いあう様子を描きました。奉仕の精神によって、自らが幸せになることも説いています。
クリスマスのお菓子
代表的なのは、クリスマス・プディングとミンスパイ。
プディングとは、元々は丸くまとめて布にくるまれて茹でた料理のことを指しています。ソーセージやスコットランドのハギス、ブラック・プディングなどもその仲間といえるでしょう。
チャールズ・ディケンズの「クリスマス・キャロル」の中で、クリスマス・プディングについて書かれているくだりに、洗濯屋のにおいがする・・というのは、プディングをくるんでいる布を茹でた時の香りを表しています。
クリスマス・プディングとは
クリスマス・キャロルに登場するような「まん丸なプディング」は、布に包んでから茹でていました。銅製、陶器の容器が手に入るようになると、材料を混ぜ合わせたものをプディング型に詰めて、上部を蓋をするように布で覆い頑丈な紐で縛り4時間ほど蒸しました。クリスマスまで1か月ほど熟成させて、25日当日の朝に蒸して(温めなおして)からいただきます。甘いカスタード(あたたかくてドロドロしている)か、ハードソース(いまではブランデーバターと呼ぶ)を添えるのが伝統的な食べ方です。
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いまでもクリスマスのお菓子を手作りする?
イギリスで手作りしようと思ったら、材料は簡単に手に入るし材料費もそんなにかかりません。作り方も混ぜるだけとシンプルです。ただ、鍋で4時間蒸すという作業が現代人にはなかなか受け入れられず?今では市販品を購入する人がほとんどなのでは・・・・。それを物語るかのように、高級デパートからスーパーマーケット、田舎のファームショップなどで素敵なパッケージのクリスマス・プディングをたくさん見かけます。とくに好きなのは、フォートナム&メイソンのクリスマス・プディング。毎年、可愛い陶器の入れ物に入っていて(デザインが微妙に毎年違う)食べた後もプディング型が使える・・という楽しみがあります!
とにかく、クリスマス・プディングは今でもイギリスでクリスマスに欠かせないお菓子の一つであることは間違いありません。
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