マガジンのカバー画像

〇〇の彼

7
運営しているクリエイター

#短編小説

ラデュレの彼

ラデュレの彼

電子辞書をバックに忍ばせ、家を出た。

待ち合わせ場所は池袋。

私が東口に着いたとき、彼はすでにいた。

彼はシンガポール人で、1日前にサークルで知り合った。
ゲストとして来ていて、彼の半生をスピーチしてくれた。
あまり理解はできなかったけど、成功している人というのはわかった。

待ち合わせ場所に着いて早々、彼から可愛らしい紙袋に包まれた手土産をもらった。
ラデュレのマカロンだ。

当時の私は、

もっとみる

京王プラザホテルの彼。

友人から聞かれた。

「本気で愛したことないの?」

10月9日。

好きな人ができた。2人で食事をした。

今でも覚えてる。

どんな料理を食べたのか、どの席に座ったのか、その日が何曜日だったのか、どの洋服を着ていたのか、どんな話をしたのか。

全部覚えてる。

別れ際のエレベーターの中、
頭を後ろから「ぽん」とされて、「じゃあね」と言われたことが、
忘れられない。

その後、どうしたらまた会え

もっとみる

年に2回だけ連絡をする彼。

お互いの誕生日に毎年連絡をする彼がいる。

私は6月

彼は8月

連絡を取り合うのは、一年の内この2回だけだ。

彼との出会いは、中学3年生のときだった。

中学2年生のクラスが楽しくて、クラス替えが憂鬱だった。

最初は名前順で席に座り、私は彼の後ろだった。

プリントを配るとき、初めて顔をみた。

目がぱっちりで、鼻がしっかりしていて、背が高い。
私とは正反対のタイプだ。

どうい

もっとみる
相部屋だったトルコ人の彼。

相部屋だったトルコ人の彼。

20歳。
居酒屋のバイトで貯めた50万を握りしめ、上京をした。

ペパーミント色の長期用スーツケースをアマゾンで買って、
そこに米や服や当分必要なものを全て詰め込んだ。

選んだのは、高輪台のシェアハウスだった。
当時、高輪台が高級住宅街だとは知らなかった。
ただ、渋谷、新宿までの通学定期が欲しかったからそこにした。

入居した後に、窓がないことに気づいた。
そこは半地下だったのだ。
でも、当時は

もっとみる