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幸せの理由(グレッグイーガン本)【読書紹介にも理由があった。理由がある方が断然書きやすいのは言うまでもない】

ハードSF作家として定評のあるグレッグイーガン。

でも私、グレッグイーガンは、実はあんまり好きじゃないです。
変ですね。量を読んでないからかもしれませんが。
なんとなく、使われる技術が予想の範囲内というか。

こちらに、ザリッとくる感じを感じさせないというか。
おそらく、翻訳されるのに時間がかかったからだと思います。
少なくとも、この本に出てくる話は、そんなに好きじゃありませんでした。

時代的には80年代や90年代に書いた短編なので。

(しばらく時が経ちました)

・・・と思ってましたが、再読したら面白かった。
なんだろう。この違いは。
なんか、昔は目新しいものがスキだったのに対して、
今は、物語の作られ方に気が向いている気がする。

SFとは、
背景にちゃんと納得できる理由を当てはめたファンタジー。

ファンタジーは型にはまった世界観が多いのに対して、
SFが本来バリエーション豊かなのは、
合理的な背景づくりに成功すれば何をやっても許されるから。
(ハリウッド映画の世界ではワンパターンでそうでもないが)

よくよく読むと、イーガンの話は、
ちゃんと物語づくりの定型に沿っていて、
科学的なガジェットを使うのは単に舞台を整えているだけ。
というのが多い気がする。

短編だからそこまで書かれてないかもしれないけど。
いわゆるハードSFらしさは逆に感じなくなった。

ハードSFって延々と設定だけが書かれているようなのを想像してしまう。
登場人物もなんか妙に感情がなくて、予定調和的な行動を取り続けるみたいな。
イーガンは意外とそういうとこがない。

私がハードSFで連想するのって、フォワードなんだけど。

イーガンを典型的なハードSF作家で、
登場人物に感情移入できないって感じる人が多いとの話ですが。
今のところ、私はそういう風に感じない。
ちゃんと物語構成がしっかりしてるなーと感じる。今では。

もちろんもっとバックグラウンドに、風変わりなガジェットを使ってもらえたら楽しめるのかもしれないけど。
文系としてはこれで充分かなという気がします。
そう、イーガン本は、ちゃんと文学しているのだ。

幸せの理由。表題作。
小児ガンで脳内幸福物質が大量に出て、その治療でものすごい鬱になって、
その後ほにゃらら。

愛撫。
人間の女性の頭部と豹の体を持つキメラ女性と、
神経学的に強化された警官との、バッドエンド風味のある展開。

チェルノブイリの聖母。
特殊な染料を使って作られた、ロシア正教のイコンを巡る争奪戦。
タイトルでネタばれる作品。

闇の中へ。
街中にできるようになったワームホール災害。ブラックホールのように一方通行にしか進めない世界を、救助しながら下に向かって脱出していくだけの、パズルアクションパニックサスペンス。

いくつか簡単に紹介してみました。

****

今どきのSF映画が型にはまりすぎなのは、
たぶん設定に物語構成が追い付けないからじゃないかな?
ループ物とかでも、ようやく一通り出尽くして落ち着いてきたくらいだし。
物語の歴史は、人間の好みの幅が決まっている以上、有限だけど、
まだ際には全然達していない。
もうちょっと、色んなものが読みたいな。
と思ったら、最初と同じ感想に戻ってきたんだ。

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