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ヴィンランドサガ(著:幸村誠)【幸村誠がなんと言おうが中世ヨーロッパからマンガ感想はあった・・・とさ。「こいつ、伝聞にしやがった」】

今回は第1巻から最新巻までざらっと紹介するので必然的にネタバレです。

かつてプラネテスというマンガを描いて、
星雲賞を取ったマンガ家である幸村先生の次の作品は、
北欧中世のヴァイキングを扱ったマンガでした。

第1部では、少年マンガの王道たるバトルマンガの様式で描かれました。
父の仇として団長を付け狙いながら、その戦士団で生活し、
あまたのヴァイキングたちのひとりとして、
掠奪と戦争と戦いの日々に明け暮れる第1部。

第2部に入って様相が一転。
希望を無くし、無気力な生活をする主人公。
(ニートではなく奴隷なので働いてはいますが)
ここで再び気力を取り戻すための日々が始まります。

第3部は、心機一転し、平和主義の商人に転向して、
金を稼いで事業を起こそうとする好青年に変身します。
しかし戦士だった日々が呪いのように追いかけてきて、
戦士としての生活に戻らせようとします。
主人公は名の知れた戦士でしたからね。
しかもやんどころなき血筋だった。
(やんごとなき、ね)

第4部ではついに新事業を起こし、
マンガのタイトルであるアメリカ大陸(ヴィンランド)に居住地を建設。
ようやくタイトル回収です。長かったよ。
しかし先住民と安定した関係をつかめたのもつかの間、
移住者と先住民の双方の過激派によって、一気に情勢は不安定化。

というところまで進んでいます。

激しいネタバレでした。申し訳ない。
ネタバレタグつけましょう。

でもマンガの演出がすさまじく巧みなので、
違和感がまったくありません。

なんかどこかで聞いたことのある、
無理のあるトートロジーを聞かされるような不安がしていたのですが、
完全な杞憂でしたね。

すごい!すごい脚本力!

あまりにも違和感がなく、引き込まれるストーリー展開は、
こりゃ大御所だわ、と納得させられました。
やはりこの人は日本でも屈指のマンガ家のひとりなんだな。

タイトル回収まで15年くらいかかってますが、
もうその間に打ち切りを食らう余地すらないというのがすごすぎる!

タイトル回収できなかった作品がこの世にどれだけあるというのか。
日露戦争物語に日露戦争がまったく描かれてなかったり、

そもそも主人公が登場する前に終わってしまったり、
(さすがにそんなのあったっけ?いやある・・ような気がする)

大河のタイトルをつけて、大河になれなかった作品の方が圧倒的に多い。
最近もアグリッパという、ローマ初代皇帝の腹心だった人物の話が、
続きが読めないまま、フェイドアウトしてしまった。無理もないよ。

だって、ショート動画が流行るくらいなんだよ。
大河どころか、30秒もたないんだから。

よくよく考えたら、本作は大河とは言え退屈な話というのが、
いっぽんもない。ロシア文学的な冗長さは皆無だ。

話についてこれないとみんな去ってしまうが、
そういうのがきれいさっぱり削られている。
そのかわりに簡単な演出でつなぐのだ。
それも違和感がない。職人の世界。

でも個人的には、この先生が次に何を書くのか。
気になる。
この人のペースからすると、
人生で超大作を3本くらい描いて終わっちゃうから。
プラネテスとヴィンランドサガで、すでにふたつ。
あとひとつ。
何が待っているんだろう?

追記:アニメ化もされてます。

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