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読書日記・心の雨戸

6月21日(金)

岸本佐知子さんが折りにふれて読み返す日記本、乙一さんの『小生日記』だった。私も『小生日記』が好きなのでうれしくなる。

岸本さんの『わからない』には、岸本さんが好きな日記本として、町田康さんの『真実真正日記』と小川洋子さんの『原稿零枚日記』が紹介されている。どちらも読んでみたい。





6月22日(土)

朱野帰子さんの『対岸の家事』を読む。

専業主婦になることを望み、自分なりに日々を工夫しながら生活している詩穂。しかし世間は専業主婦にきびしい。詩穂が仕事していないので家計は苦しいはず、旦那さんがかわいそう。仕事もせずに家事だけをしていればいいなんて気楽そう。

専業主婦になったのは間違いだったのか。自分が専業主婦だと家族は不幸なのか。家族を幸せにするには、自分が働きに出ることが正解なのかもしれない。悩んだ詩穂は、フルタイムで働くことを考え始める。


みんなと同じ暮らしをすれば、もっと安心できるのではないか、と思ってしまうのだ。

『対岸の家事』より引用


自分の人生に不安を抱くとき、千差万別あるはずの「みんな」をひとくくりにし、その中に自分も入れば安心できると思ってしまう感覚、私にも大いにあるため詩穂に共感しまくった。

しかしよくよく考えてみれば、幸せそうに見える「みんな」にも苦労や不安は山のようにあるわけで、だから「みんな」と同じに暮らしをしようと思えば、「みんな」と同じように不安や苦労を抱えるということであり、結局のところどういう生活をしていようと、人間の悩みはいつだってどこへだってつきまとってくるのではないか、という身も蓋もないことを考えていた。

そんな身も蓋もないことを考えていたわりに、本を読み終わったら何だか気持ちがスッキリとしていたので、とても面白い本だったな、と改めて思うのでした。

「みんな」と同じでなくてもいい。自分の人生は今のままでも悪くないと、本を読みながら思えたので『対岸の家事』に出会えてよかった。





6月23日(日)

津村記久子さんの『枕元の本棚』を読む。津村さんの書評がうまいこと私の心に引っかかりを与えるので、読みたい本がどんどこ増える本だった。

津村さんの紹介文で、特に気になったのは深澤真紀さんの『働くオンナの処世術』

「あなたのためを思って」と、他者は好き勝手なことを言ってくることがあるけれど、その善意の顔をした言葉のナイフは、時にグサリと刺さって抜けなくなるんですよね、困ります。

そんな言葉のナイフが投げかけられたとき、『働くオンナの処世術』にある「心に雨戸を閉めてもいい」というのが素晴らしくよさそうだった。


「心に雨戸を閉めてもいい」という章では、上から目線で何か言われた時、どうしても心が他人の言葉を受け付けない時に、相手の話をちゃんと聞いているふりをする方法として「オウム返し」をすすめてくれる。
〈相手「いい年して何考えてるの」
自分「確かに、いい年して何考えてるんでしょうね」〉
という一節は、思わず笑ってしまうし、実用的で素晴らしい。

『枕元の本棚』より引用


「オウム返し」に惹かれる。これ、息子に理不尽なことを言われたときも使えそう。

息子「なんか今日のママ、ブサイクだね」
私「そうね、今日のママ、ブサイクだね」


・・・・・・・


はあ?????? ブサイクとは何事だー!!!表出ろ!!こんちくしょうめ!!!!


心の雨戸は、閉まるとは限らないので要注意。



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