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【読書日記】2021年12月4日

見てはいないテレビの影響で、ジョージ・ソーンダーズ氏の作品が読んでみたくなった。読んだことが無い作品をいきなり購入する勇気が無かったので、図書館へと急ぐ。借りてきたのは『短くて恐ろしいフィルの時代』

国民が一人しか入れない、小さな小さな「内ホーナー国」が半分崩れ落ち、「内ホーナー国」から「外ホーナー国」へ国民があふれてしまった。そこに目をつけた「外ホーナー国」のフィルは、「内ホーナー国」の住民から税金を徴収しようと国民に訴える。

ここから独裁者としてのフィルが活躍していくのだけど、この卑劣な状況がなぜおかしいと思われないのか、どうしてこんなことが許されていくのか、憤りながら読み進め、すっかり目が離せなくなり、あっという間に読み終えてしまった。

軽い気持ちで手に取ったのに、すごいものを読んだ気がする。

声の大きな人の意見を信用してしまう、なんてことは、今までの歴史にだってたくさん存在していることなんだろうけれど、でもやっぱりそこに染まることなく、おかしいことはおかしいと言える人でありたいよね、といった願望を抱いていた。

けれども実際に、大きな声に逆らえるのか?と問われたら自信なんてないし、むしろヘタレとしては誰にも負けない自信さえあって、私はきっと声の大きな方へ流されていくことを選んでしまうのだろうな、と思ったりした。

この本の良さは、岸本佐知子さんの翻訳しているという部分が大きいと勝手に思っている。終盤のフィルの心情なんて、岸本さんの訳し方のおかげで胸に迫ってくるものがあったもの。

原文がどうなっているのか、英語が出来ない私には見当もつかないのだけど、訳し方ひとつで物語をよりダイレクトに伝えてもらえた気がして、それはとても嬉しい出来事だった。ありがたい。

私は翻訳物が大好きなので、こうして訳してくださる方がいるということだけでも、ありがたくてたまらない。久しぶりに集中した読書時間を過ごせた。幸せ。

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