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ピリ辛展覧会エッセー🌶/『山内マリコの美術館は一人で行く派展』山内マリコ

美術館が好きです。でも展覧会はもっと好きです。そんな私にとって待望の本が山内マリコ著『美術館は一人で行く派展』。

もちろん展覧会について掘り下げた本は沢山ある。例えば図録。じっくり理解を深められるのはいいけれど、胃もたれしてしまう時もあるし、値が張るのでそんなにしょっちゅうは買えない。そこで気づいたのは、自分が広く浅く展覧会のことを知りたかったのだな、ということ。

『美術館は一人で行く派展』は作家の山内マリコが毎回自腹でウキウキウォッチングした展覧会の感想を1回見開き1ページで語るエッセー。某ラジオの映画評論コーナーをちょっと思い出す。7年分、約100の展覧会について掲載されている。

美術の本でままあるのが、筆者の言っていることが全くもって理解できないということ。アートの世界の言語で書いてあったり、そもそも作り手自体が作品について説明出来なかったり(作り手自身が言語化できないものを、アートとして表現していることもあるので、こういうことを書くのは野暮かもしれませんが……)。自分の理解の至らなさに負い目を感じる一方で、今すぐビリビリに破り捨てたくなる衝動に駆られる時だって正直ある。

対して山内さんの感想はというと、小難しいことは一切書いてない。とにかく感じたことがストレートに記されている。私の一番のお気に入りは「怖い絵展」の訪問エピソード。殺人的な混雑だった、という話しか書いてない。でもそれ、すごくわかる!私もいつしか訪れたムンク展の記憶はとにかく並んでストレスフルだった、というただそれだけが残っています。「叫び」の前では足を止めてはいけない、という鉄の掟があったなぁ~。

難しく考えずに、感じたままに、わからないものはわからないと、つまらないものはつまらないと、正直に言っていいじゃないか‼そういったスタンスは少し益田ミリと近いものを感じます。もちろん、益田ミリには可愛い4コマや挿絵だったり、山内マリコにはサバサバ、かつ痛快な文体があるから、読んでいて面白いのだろうけど。

ふと気づいたのが、自分の行く展覧会って男性作家のものが多いということ。別に男性作家という切り口でセレクトしているわけではないのに。それに引き換え、この本で紹介される展覧会は女性作家の展示が多かった。つまりわざわざ選ばないと、女性作家の展覧会って行く機会無いのだ。絶対女性のを見なくちゃいけない、鑑賞する作家の性別を均等にしなくちゃいけない、とかそういうわけではないけれど、女性作家の作品でも良いもの、面白いものは沢山あるはず。積極的にアンテナを張って、訪れたいなと思ったのだった。

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