【読書感想文】 家族とは血の繋がりだけじゃない 『そして、バトンは渡された』
運動会において、選抜メンバーによるクラス対抗リレーは花形競技であり、一番盛り上がるメインイベントです。
そのメインイベントのメンバーに、小学校1年生の私は選ばれました。
運動会前の体育の授業中、担任の先生に言われるがまま、同じクラスの女子2人と短い距離を何度も走らされたのは、リレーメンバーの最後の1人を決める選考会だったのだと今なら分かります。
しかし、私は物心ついた時にはすでに近所でも有名な運動能力が貧弱な子だったので、当然走るのも遅く、故に選ばれた理由は未だに分かりません。
それでも選ばれたことは嬉しく、選ばれたからには一生懸命走りました。
1位でバトンを受け取り、抜かされることなく次の子にバトンをしっかり渡せた私は、私の役目を果たせたと小1なりに満足していたことを覚えています。
一方、私がリレーに出ると知った母は密かに仰天し、運動会当日は1位で走ってくる私の姿を、"これが最初で最後だろうな…"と思いながら呆然と目に焼きつけていたそうです。
2019年本屋大賞受賞作
本日は、『そして、バトンは渡された』(瀬尾まいこ 著)をご紹介します。
2019年本屋大賞、他多数の大賞受賞作
17歳までに7回家族の形が変わり、4回苗字が変わり、結果、5人の父と母がいる主人公が、すべての親に愛されながら成長していく物語。
累計発行部数は2021年10月時点で110万部を突破し、同年同月には永野芽郁さんが主演で映画化されました。
その映画も好評で、第46回報知映画賞、第45回日本アカデミー賞、そして、第64回ブルーリボン賞で、監督賞や主演女優賞などを受賞されています。
家族とは血の繋がりだけじゃない
この物語の最後の一文を読み終えた時、心の深くからじわじわと幸せな感動が湧き上がってきました。
家族とは血の繋がりだけじゃないことを改めて考えされます。
しかしながら、いくら愛されている、幸せを願われているからと言っても、主人公が親に振り回され続けてきたことは確かなわけです。
故に、他人から見れば複雑に思える家族関係にも関わらず、「全然不幸ではない」とはっきり言い切れる主人公の冷静さと優しさと、包容力と達観ぶりに感服しました。
もし私が主人公と同じ境遇だったならば、どこかで耐えられなくなり、誰かを恨んでしまうかもしれません。
でも、主人公はまったく傷ついていないわけではないけれども、素晴らしい出逢いに素直で、その素直さに救われてきたように感じます。
そして、その素直さが素敵な縁を引き寄せているのかもしれないと想像すると、自分の心の狭さを反省しました。
親たちが繋いできた愛のバトンがさらに繋がり、新しい明日へ向かおうとしている主人公のこれからが、より幸せで輝かしいものになることを私は信じています。
P.S.
読書メモを見てみたら、「楽器が弾けるようになりたい人生だった」と書いてあって、この時に何があったんだ、と我ながら少々心配になりました。
それはさて置き、美味しい食事と素晴らしい音楽は、心と身体を健やかにし、人生を豊かにしてくれるものだとつくづく感じます。
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