マガジンのカバー画像

動物ことば考

5
動物と言語について。有料だけど無料で読めます。
運営しているクリエイター

記事一覧

山羊たちの沈黙

山羊たちの沈黙

はじめに
《史記》に「鹿を指さして馬と為す」という故事があり、俗に「馬鹿」の語源とも言われる。秦の趙高が、皇帝に鹿を馬と偽って献上したというエピソードである。が、はたして趙高は馬と鹿の区別がついていたのだろうか。どうでしょう班にもトラとシカを見違えた故事があるではないか。きたやまようこの名著『イスとイヌの見分け方』が指摘しているように、ある日突然イスとイヌが見分けられなくなることだって珍しくない。

もっとみる
ジャガーは「一突きで殺す者」なのか?①

ジャガーは「一突きで殺す者」なのか?①

(2020/09/08 この記事の続報を公開しました。)

前回に引き続き、ジャガーについて持ちネタを記しておきたいと思う。ソースの検証は怠っていないが、文末に(ホンマか?)をつけながら読むのを忘れないでほしい。別にこのブログに限った話じゃないですが。

(ウィー)yaguara♪今回やり玉に挙げるのは、ジャガーの語源とされている「一突きで殺す者」という説についてである。ネットに多く流布しているが

もっとみる
性なる勤勉家ビーバー

性なる勤勉家ビーバー

カストリウムの香水のせい
ビーバーといえばダムを作る動物である。原宿を歩いてる渋谷のJK100人に、ビーバーについて何を知ってますか?と聞いたら98.5人からそんな答えが返ってくるに違いない(1.5人は北陸製菓のおかきの話をすると思う)。JK以外の日本人に聞いてもまあだいたいは同じように答えるだろう。古くはダム作部(ダムつくりべ)としてヤマト朝廷に仕えたと古事記にも書いてある。嘘ですが。

裏を返

もっとみる
続報:ジャガーは「一突きで殺す者」なのか?②

続報:ジャガーは「一突きで殺す者」なのか?②

再三ジャガーの話題である。よく飽きねえなという感じですが、前回記事の続報ということでご容赦ください。ぼくはジャガーはかせではないです。

トップの写真はアメリカの自然学者オーデュボンの1854年のスケッチから拝借した。その名前どっかで聞いたな?という方は前々回の記事で紹介した「20世紀生きもの黙示録」を観直すとよい。米国ニューオーリンズにオーデュボンの名を冠した動物園と水族館があるくらいには有名な

もっとみる
ピラプタンガ考

ピラプタンガ考

注:本文中で出てくる注釈は、すべて記事の一番最後にまとめてある。たとえばこんな風に(注0)。

はじめにこちらの記事で(調子に乗って)調べてほしいものを募集したところ、とある方から依頼のお便りをいただいてしまった。調子に乗って書いたとはいえ思ってもみなかったことで、ありがたい話である。さっそくご紹介しよう。

「ピラプタンガの〈プタンガ〉って何ですか?」

お便りありがとうございます。というわけで

もっとみる