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冷静と情熱のあいだRosso★2【10冊読むまで帰れま10・6月⑦】女性作家の恋愛小説は…

「冷静と情熱のあいだRosso」江國香織【評価★2】

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フィレンツェのドゥオーモで再会しようと10年前に誓った元カレ元カノが悶々とする、イタリアを舞台にした恋愛小説。

辻仁成が描いた元カレ側の視線に対して、江國香織が描いた元カノ側の視線で物語は相互補完される。

1つの恋愛小説を元カレ元カノの両方の目線から組み立てていくという作戦は大成功を収めている。これは間違いない。

ただ、組み合わせた作家がどうだったんだろう?

辻仁成の洒落て気障な文体がイタリアにマッチしていたのに対し、

女性作家特有のものなのか、江國香織特有のものなのか、一読しただけで判別はつかないが、江國側は1つの事象を説明するのに、タラタラ書きすぎ。

元カレの順正を引きずる元カノのあおいと今カレのマーヴの煮え切らないタラタラしたやりとりが物語のほとんどを占めている。

言わせてもらうが、このタラタラした感じがイヤ。正直なところ、総ページの半分もあれば描写できたんじゃないの?と疑ってしまう(江國先生ごめんなさい)

辻仁成側の方は、順正のあおいへの葛藤だけでなく、絵画修復士としての仕事や、闊達な祖父との交流など事細かに書かれていた。そして、順正とあおいの破局理由には深く触れずに、ストーリーを組み立てていた。

破局のくだりは、江國香織側の方でしっかり描かれているのだと、早合点していたが、江國側にもスッキリとは書かれてなかった。なぜ?

ネタバレ注意と前振りすることなく、破局理由は読んでもらたいので書かないが、僕にはシックリこなかった。設定に無理があったか?

あと、元カレを引きずるあおいが、非の打ち所がない今カレを、ともすればぞんざいに接してしまうのが、読んでて悲しくなってくる。

順正が今カノの芽実に冷たくするのより、あおいが今カレのマーヴを遠ざける方が罪に感じるのは何故だろう。芽実よりマーブの方が不憫に感じるのは何故だろう。

最後にひとつ。

辻仁成側は人生経験に裏打ちされたような名言がバシバシ出てきたのに対し、江國香織側には「琴線ワード」がなかったんだよなぁ。それは、辻仁成の筆力と人生経験が抜きん出ているからなのだろうか…。

今度、頭を整理して映画版を見てみよう。



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