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きっかけ

4連休の最終日、一人暮らしの私はお家でパフェを作った。
というのも、たまたまスーパーでおつとめ品の198円の桃を見つけたからだ。
おつとめ品で198円といえど傷は一部だけで熟し具合も頃合いだった。しかも岡山県産。
生まれた時から桃としての英才教育を受け無事に育ちはるばる私の住む京都にまで出荷されてきたのだ。

「せっかく農家さんの愛情をたくさん受けて育ったんだ。私がもっと美味しくしてあげよう」

そんな事を思ったか思ってないかは忘れたが、確かに桃は寂しそうだった。
私は優しく桃をカゴに入れた。

帰り道どんな風に食べようか考えたのだがお家にたまたまアイスと食べかけのクッキーがあることを思い出したので案の定パフェを作る事で決まった。

いつもと同じ帰り道もほんの少しの楽しみがあるだけでいつも気付かない事に気付いたりと風景が変わって見える。

家に着きさっそくお楽しみのパフェを作り始める。
アイスとクッキーと桃だと少し寂しいので冷蔵庫にたまたまあった苺のジャムも使う事にして「ゼリーとかもあったらいいな〜」と思い仕込み始める。
あとは固まるのを待って、桃を湯むきしてカットしてコップに適当に材料を盛り付けていく。

普段仕事ではする事のないパフェ作りは私が思っていた以上に楽しかった。美味しそうな果物を見て買って、ウキウキしながらお家へ帰り、あれもいいなこれもいいなと思いながらワクワクした気持ちで作っていく。
さながらパフェ作りは色んな味や食感や形の物が一つの器の中に入っててワクワクした気持ちで次から次へと材料を盛り付けていく。まるで人生だなとも思った。

「あぁ〜私はこういう気持ちがきっかけでパティシエを夢見たんだ」と思った。

母は食べるものに手をかけてくれる人だった。
両親共働きだったが基本的にいつも手作りのおかずが5種類くらいは並び、休みの日は頼めばお菓子作りも教えてくれた。
そんな母を見ていたので忙しそうなのを見ると夕飯の手伝いもしたし、中学生になると一人でお菓子を作って披露したりもした。

母とした夕飯作りやお菓子作りはいつもワクワクしてとても楽しかったし、食べてもらって「美味しい」と言ってもらえるとすごく嬉しかった。

私の中ではありきたりな理由で話すのが恥ずかしいし、働き出してからはそんな気持ちを維持し続ける事ができず、忘れてしまっていた感情だった。

私は母にたくさんの愛情を受けて育った。当たり前ではない母の偉大さを知った。
もっと自分の力で周りの人も自分もみんながワクワクして楽しい時間を過ごせるようなケーキを作り続けたいと思った。

次の日仕事だった。
どうすれば喜んでくれるかな?いつもと同じ仕事内容もほんの少し楽しみがあるだけで違って見える。
この気持ちを忘れず。忘れかけたら思い出しながら私は私の人生という名のパフェを作っていきたいと思う。

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