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対話型メディアの優位:書道とパネルディスカッション

1.Podcastのふたりごと

図22

(…Facetimeの呼び出し音)

ーはろー。

ハロー、コイさん。調子はどうですか。

ーついに!いったん落ち着けるようになった!

まじですか!

ーうん。ホッとしたよ。体調もちょっと崩してたし。

そっかぁ…それはほんとに良かった。
大変おつかれさまでした。

ーありがとう。今、上野駅のカフェだよ。これから温泉に旅立とうかと。

なんと!それはいいですねえ。

ーそちらはいかがお過ごしですか。

わたし?ポッドキャストにはまってます。

ーおー。いいね。

ステイホームだと、常に画面見てて目が疲れるんですよね。
視覚に頼らない勉強方法を探したら、聴覚にいたったの。笑

ーどんなの聞いてるの?

一番好きなのは「RECODE DECODE」かなぁ。
アメリカの女性ジャーナリストが、毎週いろんな人をホストして対談するんです。

ーほう。

相手はいろいろで、LyftとかAirbnbみたいなテック系社長、政治家、あとは歴史学者とか。
テーマも含めて毎回変わるのと、司会者のまわしが上手くて面白いよ。

ーなるほど。

ゲストの具体的な話を引き出しつつ、自分は的確なツッコミ入れたり、話を構造化してくれるんですよね。

ーおれがよく聞く「こんにちは未来」も、同じような構図かも。
こっちは固定の二人が毎回話してるけど。

あ、私もそれすきです。よく聞く。

ー基本的に女性の佐久間さんが自由に喋って、男性の若林さんが突っ込んでくスタイルだよね。
「そういやこんな話もあるよ」とか「何それ?」とか。

2.パネルディスカッションと書道

図23

プロットがあるのかなぁ。

ーどうだろう、無さそうだけど。
二人の対話を通じて、話が自然と広がっていく感じ。

二人の会話で生まれる「発見」に、話が動かされる感じがする。
普通のインタビューみたいな、予め用意した「本日のご質問事項」感がないんだよなぁ。

ーその意味では、パネルディスカッションも同じ側面があるかもね。
おれもちょくちょくパネラーやるけど、思ってもみなかった話題が深まったりして、面白いよ。

コイさん、よく出られてますよね。
ちなみに、こんな記事を見つけましたよ。

「つまらないパネルディスカッションが生まれる構造」より一部抜粋
【問題3:直前の登壇者同士の打合せで面白い話が出てしまう】
当日直前の登壇者同士の顔合わせ。ここで当日のテーマについて、「軽く話をしましょう。こんなのってありますよね」と登壇者同士が事前に話が始めます。そして、登壇者同士の脳みそが急に回転を始め、相互刺激により、ポンポンと面白い内容が出てきます。(略)
この「楽屋で出た面白い話」というのは、どうしてもパネルディスカッションの場で、観客の方に紹介したくなってしまいます。(略)
ですが、登壇者同士はすでにその話を知っており、お互いに驚きや刺激がないため、表情の変化であったり、相互作用といったものは、すっかり低下してしまいます

ーあー。おれも実感があるな。
「その場の相互作用」の効果って思った以上に大きいと思うよ。

予め組み立てたプロットをなぞると、つまらないよね。
ちなみに、書道もそうですよ。

ーほう?

お手本を上からなぞって「綺麗」に書いたものより、自分の意思で書いたもののほうが、「勢い」を感じて目を惹くもの。
書道は、そのときの紙や筆、墨の調子と、書き手との対話です。(どや顔)

ー笑。さすが書道家のスミさん。

3.古今東西の対話型メディア

図24

それに、対話型の表現方法っていろんな面白さがあるとおもうな。

ーそうね。
「と、言いますと?」とか「ほほう」っていう一言も面白いよね。ない方が文章としてはコンパクトなんだけど、会話がすっと入ってくる。

われわれが、よく使うやつ笑。
あとは対談形式だと、聞き手から生まれる疑問や考えが、の中で自然と解消されていくから、わかりやすいかな。

ーそうだね。対話の中にも役割があるよね。

コイさんはどっちなの。

ーおれは、話の中身自体を話すほうが好き。

へー、そうなんだ?ファシリテートするのが得意そうだけど。

ーこの前、普段はファシリテータ役のような人に喋ってもらって、逆におれがファシリテータをやるってのがあったよ。

ほう。

ー話があっちこっち行って大変だった。笑

なにそれ珍しい!聞いてみたい。笑

ーいやだ、聞くに堪えない笑
そういえば、同じ対話でも「手紙」形式の本も結構あるな。

宮廷での政争に疲れたペルシアの貴族ユズベクが友人のリカとともにヨーロッパに出かけてパリに長期滞在する間、故国をはじめとする各地の知人・友人と交わした書簡の集成

へー、面白そうですね。
言われてみれば、宮本輝の『錦繍』も、最初から最後まで、女性の往信と男性の返信で物語が進むなぁ。

ーそういえばそうだね。

コイさんのおすすめで読んだけど、私の人生で出会った小説で一番すきかもしれない。
この手紙のやりとりを通じた大人のほろ苦さ。

ーそれはよかった。笑

人に影響されて自分の世界が広がるというのは、いいことですね。

ーそれは本当そうだよね。
あ、そろそろ新幹線が来る。いかなきゃ。

いってらっしゃいませ。ゆっくり休んできてください。

ーいろいろありがとう。
スミさんも、夏休み楽しんでください。

はい。とりあえず、仕事落ち着いてよかったね。

ーうん、久しぶりにゆっくりするよ。
じゃあまたー。

ばーい。いってらっしゃーい。

(…Facetime終了)

★参考文献★
『【イベント企画者に贈る】パネルディスカッションを面白くするための7つのポイント』(キャリアコンパス)https://ix-careercompass.jp/article/680/
『ペルシア人の手紙 』シャルル=ルイ・ド・モンテスキュー (講談社学術文庫)
『錦繍』宮本輝(新潮文庫)

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!嬉しいです☺︎