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思考停止:本を読むほど、私の話はつまらなくなる。

1.スミさん、読書やめるってよ

図22

(…Facetimeの呼び出し音)

ーもしもし。

あ、コイさん。

ーあれもうスミさん今日は寝てたの。

ふて寝してた。

ーあらら。またなんで。

ステイホームでこの3か月くらい、わたしすごい勉強したのよ。

ーうん、いいことじゃん。

で、友達に30分くらい、今勉強してること話してみてよって言われたわけ。それで哲学の歴史について話したのね、30分。
結果、自分の話がつまらなすぎた。もちろん友達はそんなこと言ってないよ、自分で思ったんだけど。今思い返しても恥ずかしい。

ーいや、そんなことはないでしょう笑。

そんなことあったから、今ぐんなりしてるの。それで自省してたんだよ、なぜこんなに本も読んで勉強したのにつまらない話してるのかって。

ーほう。

そしたらさ、私には伝えたいメッセージがないんじゃないか、って気づいた。

ー笑。

もうね、色んな文豪たちが「読書について」って本出してるわけ。西田幾多郎も、ショーペンハウアーも、寺田虎彦も、三木清も。
でね、皆、本読んでるだけのやつは何も考えてない、考えろって言ってるわけ。

「読書するとは、自分でものを考えずに、代わりに他人に考えてもらうことだ。…本を読んでも、自分の血となり肉となることができるのは、反芻し、じっくり考えたことだけだ。」(ショーペンハウアー『読書について』)
「頭をからっぽにする最良法は読書だ」(寺田虎彦『読書の今昔』)
「私は思う、書物を読むということは、自分の思想がそこまで行かねばならない。」(西田幾多郎『読書』)

ーへえ。笑

真剣に悩んでるんだから、笑わないでくださいよ。
もうね、私はただ無目的無批判に本を読んでただけで、何も考えてない頭空っぽ人間なんだ。人に伝えたい自分の意思がない人間なんだ。社会人失格だよ。もう本読まない。

2.人に話をすると言うこと

図23

ーまあまあ、とりあえず落ち着いて、元気出しなよ。考える材料、教養として、インプットも大事だよ。

コイさんにもこれまで色々話してきたけど、全部わたしの言葉じゃなかった。人の借り物の言葉をつぎはぎしてただけだった。
コイさん人に話すの得意じゃん。どうやったら話うまくなる?

ーそうだなあ。
話すときは「今日これだけは相手にわかってもらいたい」っていうポイントを決めてるかな。それだけに集中する。おしゃべりは別として、人に説明するとか講演って、そもそも目的がそれでしょ。

やっぱり。

ーそれで、今日自分が話したことを、その相手がまた他の人にも伝えてほしい、っていうね。

うーん。わたしの話は、だらだら総花的に「話す」だけで、「言いたいこと」は何なのか、なかったな…

ー要点があると、聞いた人も話が再現できるんだよね。おれとしても、その人に理解して、また他の人に伝えてほしいっていう気持ちもあるからね。

確かに、面白い講演のポイントは、私も後から人に話せる。

ーそうそう。あと、ポイントは話すときにパッと思いつくんじゃなくて、常日頃から考えてるんじゃないか。

そっかあ。。。
とりあえず、もうちょっと考える生活に変える。反省した。

ー凹みスミさん。おもしろい笑

3.わたしは組織にお呼びではないのか

図24

このまま年だけ重ねて職場での位が上がるだけで、リーダーシップを発揮できない。クリエイティブな意思がないのにできるわけない。

ーまだ言ってる笑。

本気なんですよ。

ー自分の意思は大事だけど、自分の主張が激しいやつばっかりいても、組織は成り立たないと思うけどね。2:8くらいがちょうどいいんじゃない?

確かにそれはそう。特に、うちの会社は「自分が自分が」って人多い。
でもそうやって自分の意見もってリーダーシップとっていく人がカッコよく見える。

ーでも実際はその人たちも単独ではできないわけでしょ。それは昇進して立場が上になったとしても、いろんな役割があっていいと思うけど。

そうかなあ。

ーうん。自分オリジナルの主張じゃなくても、人の主張を理解して通せる人間になるのも大事なんじゃないの。

そんな気もする。自分が憧れたり、会社で目立つのは自己主張の強いキラキラした先輩だけど、そうはなれないし…

ーそうそう。うちの会社の中でも、ギラギラぐいぐい系じゃないけど、皆から支持されてる管理職も結構いるよ。
物事をロジカルに順序だてて実行するのが得意な人とか。

そうかあ。やっぱり自分にないものに惹かれちゃうけど、わたしはわたしで、自分に合ったロールモデル探さないとかもしれない。

ーそうそう。

なんか元気でてきた。気もする。

ー元気出せ。これでも読んだら。

また読書になっちゃう。

ーおもしろいよ。元気出るよ。

そうですか。じゃあ、息抜きにこの一冊だけ読も。それで読書に逃避するのはやめる。

ーでも、しっかりインプットすることも大事だと思うけどね。働いてるとなかなかおろそかにしがちだし。
ちょっと勉強して、すぐ何か形にしなきゃってする人も多いけど、そう簡単にモノになるともおれは思えないけどなあ。

うん…。なんか皆が精力的に活動してるから、ちょっと焦っちゃうじゃん。

ー笑。まあ、好きなだけまずは学んでもいいんじゃないですか、いろんなこと吸収して。

そっか。まあそうかもね。マイペースにがんばってみる。

ーうん、がんばれ。じゃあそろそろ行くわ。

ありがとうコイさん!またね~

(…Facetime終了)

★参考文献★
『読書について』ショーペンハウアー (光文社古典新訳文庫)
『読書』西田 幾多郎 (青空文庫)
『読書の今昔』寺田 寅彦 (青空文庫)
『如何に読書すべきか』三木 清 (青空文庫)
『好きなようにしてください』楠木 建 (ダイヤモンド社)


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!嬉しいです☺︎