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現役マーケターが感じた、吉野家【元】常務・伊東正明氏の「生娘をシャブ漬け戦略」発言

皆さんこんにちは。関西人パラレルワーカーの向山純平です。

前回記事を書いてから、あっという間に半年以上が経過してしまいました。

別にサボっていたわけではありません。ただただ時間が割けなかったのです。私からの弁明(言い訳)は以上です。

さて、今回あえてnoteで執筆しようと思い立ったのには理由があります。

それはつい先日発生した、吉野家常務取締役(当時)伊東正明氏が、早稲田大学でのマーケティングセミナー講義中に発した、所謂「生娘をシャブ漬けにする戦略」発言。

言わずと知れた吉野家の基幹商品「牛丼(吉牛)」を、同社の弱点層である18歳から25歳までの女性に対し、上記のような暴言を複数回、しかも笑いながら発したという事案です。

僕ごときの駄文をご覧の方は、その後の伊東氏がどうなったかを含め、事の顛末をご存知やと思いますが、念のために申しますと、発生日(2022年4月16日土曜日)から週が明けた4月18日をもって、吉野家常務取締役を解任されました。翌日には公式でアナウンスが流れ、「今後一切の関係を持たない」という文面までつけられたものとなっています。まるで「絶縁状」です。

加えて、外部契約をしていた3社のうち、2社から19日をもって契約解除。さらに全国ニュースでは、連日「伊東正明」の実名付きで大々的に報道。なにか犯罪を犯したわけではないのに、まさに社会的に抹殺されようとしています。一夜にして、「失敗者」の烙印を押されようとされています。至極当然ですが。

伊東正明氏というのは、かつて日用品メーカーのP&Gに所属し、担当商品の売上を大きく伸ばしたことでも知られているマーケティング担当者(マーケター)。同業者の中では、「成功者」として大きな称賛を浴びる存在でした(過去形)。

現状、様々な立ち位置の方たちが本件について分析している発信をしています。が、分析を強みとしているはずのマーケターたちが、どういうわけかダンマリを決め込む事態となっています。

マーケター界隈は、「声がデカイ」空間です。「機を見るに敏」とばかりに、「トレンド」に対し、ああだこうだ言います。そんな界隈が、まるで示し合わせたかのように本件について触れないのです。一体なぜでしょう?不思議で仕方ありません。

というわけで、現役マーケターである僕が、そんな静寂を断ち切るべく、記者やSNS運用者としての観点からも含め、本件を俯瞰的に語ってみます。

■概要 

改めまして本件は、2022年4月16日(土)に、東京にある早稲田大学の日本橋キャンパスで開かれたマーケティングセミナー「デジタル時代のマーケティング」の初回講義にて発生しています。

当時、吉野家常務取締役であった伊東正明氏は、「モノの喩え」として、吉野家がターゲット(弱点)としている18歳から25歳までの女性に対する施策として、「生娘をシャブ漬けにする戦略」と発言。しかもそれを複数回、笑いながら、というシチュエーションで発しています。

正直もうこれだけで全く意味が分からへんやつですね。しかし伊東氏は、さらに妄言を続けます。それは、「田舎から出てきた右も左も分からない女の子を無垢・生娘のうちに牛丼中毒にする。男性に高い飯を奢ってもらえるようになれば絶対食べない」ということ。

余談ですが、伊東氏は男性に対しても放言を発しています。それは「家に居場所がない人間が何度も来店する」と。

さて、本件ですがご存知の通り、「生娘をシャブ漬けにする戦略」という発言が特にクローズアップされています。

今回Facebook上で告発した人物が女性だったため、「当事者」としてより強い嫌悪感を抱いたという面もあるでしょう。といっても、後日の取材で、男性に対しての放言についても、不適切発言であると問題視しています。

講義実施日当日の4月16日に投稿された告発は、翌17日にTwitterで“受理”されます。一気に拡散され、18日は燃え盛る業火のごとく炎上します。事態を重く見た吉野家は、当日付けで伊東氏を解任。同時に講師として招いた早稲田大学もその任を解き、外部コンサルとして契約していた2社にも契約解除されます。

■何がどう悪かったのか

というのが事の顛末ですが、僕は本件について1つ印象的に感じたことがありました。それは、伊東氏が実名で大々的に報道されているということです。

もちろん「吉野家常務取締役(当時)」という社会的地位のある人物ということもあります。吉野家ファンをはじめとした、多くの方に強い不快感と激しい怒りを与えましたね。しかし、法に触れるような犯罪行為をしたわけではないのです。今後、社会的信用を失墜させたとして何らかの動きがあるかもしれませんが、しかしそれは可能性に過ぎません。

そして解任後も実名付きで報道されるという、まるで犯罪者のような扱いになっています。(noteで実名付きで執筆している僕が言う権利はありませんが)しかしなぜ、そこまでの厳しい扱いを受けているのでしょう?

本件では、「性差別(男女双方で)」という観点で、伊東氏の発言が大きく問題視されています。昨今では、「ジェンダー」という言葉でも置き換えられている「社会問題」のひとつです。

今回の舌禍で代表的なものを並べてみます。

「生娘をシャブ漬けにする戦略」
「田舎から出てきた右も左も分からない女の子を無垢・生娘のうちに牛丼中毒にする」
「男に高い飯を奢ってもらうようになれば(牛丼は)絶対食べない」
「(男性は)家に居場所がない人間が何度も来店する」


いやあ……ホンマどれも最低最悪のクソ以下の放言のオンパレードですね。私生活で発してもドン引きされますし(いや、そこで発するのもあり得ませんけど)、「生娘」「シャブ漬け」なんてワードは、普段から使っていないと一生のうちでも縁のないものです。「人権面」でも論外ですね。どういう神経をしているのでしょうか。

しかも今回は、日本の代表的な教育機関である「早稲田大学」にて発しています。

伊東氏には申し訳ないですが、今まで一体どういう教育・私生活を送れば(受ければ)こういうボキャブラリーになるのか、もはや興味が湧くレベルです。友人たちはこうした戯言を耳にする機会があったんでしょうか?ま、調べる気も起きませんがね。

ちなみに「生娘」というのは、すごく平たく言えば「年頃の若い女性」になります。「18歳から25歳」というのには該当はしますね。するだけですけど。ともかく、言うまでもなくセンシティブな単語です。

そして「シャブ漬け」というのは、「シャブ」が覚せい剤を指す隠語であることから、NHKなどが濁して表現した「薬物中毒」というニュアンスになります。要するに犯罪行為です。

「男に高い飯を奢ってもらうようになれば(牛丼は)絶対食べない」「(男性は)家に居場所がない人間が何度も来店する」これはもうただの偏見です。僕の母は吉野家の牛丼が好きですし、色んな境遇の男性が吉牛のヘビーユーザーです。言うて、「吉野家のマーケティング責任者」を名乗ってたなら、それくらい知っていたはずですが。

ただ、伊東氏といえば、かつては日用品メーカーの「P&G」のマーケティング責任者で、世界各国の支社を飛び回っていた人物。それ相応の収入もあったであろうし、日本以外の生活圏で暮らした経験も長い方です。ひょっとしたら、少々感覚が異なった方だったのかもしれません。

が、その経歴は「圧倒的少数派」なのです。そんなことも分からなかったのでしょうか?浮世離れも甚だしいですね。

「50歳手前の偏見の凝り固まったおじさんの発言」として発した戯言の数々は、周知のとおり厳しい社会的制裁を受けることとなりました。

僕はこの処分については、極めて妥当やと思っています。吉野家も考え得る限りの迅速な対応だったのではないでしょうか。個人的には「性差別」「人権侵害」以上に、「シャブ漬け」が問題視されたように感じます。

先述の通り、覚せい剤使用はまごうことなき犯罪行為です。これを公人として教育機関のセミナーで、「モノの喩えとして使うなら大丈夫」と思えれたのが信じられません。さらにそれを女性の皆様方へ、最上級の侮蔑として使用するとかもう……ね。中傷とかそんな次元超えてますわ。ありえん。

一方で、僕は吉野家が今回伊東氏を即刻追放したのは、もう1つ理由があるのではないかと考えています。それこそが、マーケター向山純平的観点やったりします。

それは、「吉野家のブランドイメージを著しく失墜させたこと」です。元々伊東氏は、2018年にマーケティング責任者として入社しています。過去には、小盛サイズや、ライザップ牛サラダなど、これまでの吉野家ブランドを良い意味で脱却させる商品を提供するなど、少なくない話題を提供していました。近年の吉野家躍進の立役者といっても差し支えはないでしょう。

しかし今回の騒動は、そんな貢献も一瞬で霧散するような愚行。それは、過去に築いたP&G時代の栄光にも少なからず影響すると思います。

そもそも「生娘をシャブ漬けにする戦略」という放言ですが、これは「女性差別」と同時に、「所詮吉牛とはその程度のもの」という「上から目線」で発した暴言という側面もあります。ブランドに対する中傷でもあるのです。

吉野家の牛丼といえば、並盛で400円ほどの比較的リーズナブルな商品。男女問わず多くの方が、少なからず喫食した経験があると考えられます。

そのためこういった商品のマーケターとして活動する際、どうしても「大量消費」を念頭においたマーケティング・ブランディング施策を講じなければなりません。特定の層だけに売れるような、「ニッチ商品」ではいけないのです。

といってもそれは、伊東氏が発したような「ユーザーを中毒症状にさせる」ものでは決してないのです。一部でマクドナルドと比較する声もありましたが、あれだってもう20年も前の話です。その間、マクドもかなり痛い目を見て、大改革を施しています。

余談ですが、僕は以前、「エスフーズ」という企業でマーケティング担当者を担っていました。エスフーズには、「こてっちゃん」という吉牛と同じ牛を食材とするブランドがありました。(肉とホルモンの違いはありますが)

また、こてっちゃんは、今年で40周年という歴史を持つロングセラーブランド。かつてはかなりの量でCMも全国放送で放映しており、現在でもトップクラスの知名度を有しています。

僕は「こてっちゃん」にマーケターとしての多くを教わりました。「商品に?w」と思われるかもしれませんが、ロングセラーブランドというのは、それだけの「存在感」を放っているものです。

例えば、イベント出展やスーパーの試食販売でも、「こてっちゃん?なら、ちょっと食べて(買って)みようかな」と立ち止まるのです。これは歴史のないブランドやと、よほど話題性がない限りはまず無理な現象です。既に「選択肢」として存在するというのは、かなりのアドバンテージです。大企業やロングセラーブランドの「無形の財産」ともいえますね。

そしてそれは、吉牛でも同様です。恐らくこてっちゃんよりも、さらに上位に分類されます。僕は、過去に何度か吉野家と同じイベントに出展したことがありますが、「さすが吉牛やな……」と思わせるほどの圧倒的な存在感を放っていました。同じ牛を食材にする同士なので、かなりのリスペクトを持っていましたが、同時に一種の畏怖を抱いていました。

確かに吉野家は18歳から25歳の若い女性層が弱点です。ちなみにこれはこてっちゃんも同様です。そもそも牛肉というのは脂っこいし、鶏や豚よりもハードルを感じさせる肉です。それに高いですしね。女性が買わない要素が揃っているのです。

また吉野家というのは良くも悪くも不器用。過去に一度倒産していますし、牛丼に固執しすぎ、松屋の定食類、すき家の豊富な丼メニューなどを取り揃えない時期が長くありました。牛丼に対するこだわりが強すぎたのです。

しかしそれは、かつてBSE問題で原料の米国産牛肉の輸入が不可能になり、物理的に製造が出来なくなった後でも、当時東京・築地にあった1号店だけは国産牛で対応するというこだわりでもあります。

先述の通り、僕はかつて「こてっちゃんのマーケター」だったので、この頃の辛苦は「じっちゃん」と慕っていた開発者から聞いています。エスフーズもまた、会社存続の危機に陥る絶体絶命の大ピンチでした。数年は販売すら出来ない状況でした。豚では、完全に代用はできないのです。豚丼自体はおいしいです。しかし別物なのです。

そんな苦難の中でも守り抜いた牛丼は、吉野家にとっての「魂」ともいえるものです。なので、伊東氏が発した「生娘をシャブ漬けにする戦略」は、絶対に許容できない発言だったのでしょう。これまでの功績があった「功労者」にも関わらず、即日解任という極めて厳しい処分を下しています。

逆に考えると、素早い“損切り”を行った結果、吉野家としての姿勢が広く伝わり、後の「親子丼フィーバー」が発生したのかもしれないですね。

マーケティングを従事している人間なら、「歴史」というのは絶対に知っておくべき基本情報です。「責任者」レベルなら言うまでもありません。僕もささやかながら色々な企業のマーケティング支援的なこともしていますが、対象企業の取り扱い商材の特徴や購買層に加え、歴史を調べるのはまず最初にやっています。

多分伊東氏も知っていたとは思います(知らなかったら逆に吉野家のスタンスに疑問が生じるレベルです)。ただ、結局のところ、「吉野家の牛丼」というのを心の底で見下していたのでしょう。さもないと、あんな発言はまずしません。

伊東氏の行った所業は、マーケターとして大変に恥ずべき行為です。はっきり言えば、全マーケターを冒涜しています。大きな業績を上げ、有名企業の常務取締役までのぼり詰めた人物が起こしたというのは痛恨の極みです。こんな発言をするような人間に、今後一切「マーケター」などと名乗ってほしくありません。

しかしながら、本件について、マーケティング界隈は驚くほど静かです。普段は、別にいちいち言わなくていいことまで叫んでいるのに。あの勇ましさはどこへ行ったのでしょう。

伊東氏と同程度に実績を挙げたような“上級マーケター”に至っては、Facebook上で氏への擁護や、「個人攻撃」に関する不満といったことでしか述べておらず、結果それがTwitterへ流出してしまっています。

確かに、家族や容姿まで攻撃するような行き過ぎた投稿があるのも散見されます。いつの炎上でも感じますが、関係ないことまで揶揄するのはお門違いです。

しかしそれを踏まえても、特に伊東氏と同じ早稲田大学のセミナー講師を務めていた人物は、自身の見解をしっかりと発信する必要があるのではないでしょうか。おじさんマーケターたちのコンプライアンス意識が、全く伝わってきません。

そういった逃げも含め、僕は現状のマーケティング界隈は、日本特有の「ムラ社会」であるとしか言いようがありません。新しいことをしているつもりになっている割には、実に内輪で固まっています。あれでは、若い人材がマーケターを志向しにくくなります。

この業界は、一度徹底的な浄化が必要な時期に入っているのかもしれませんね。風向きが悪くなったら、Facebookへ逃げる習性は改めて欲しいものです。

■「失格者」の烙印を受ける意味

今回の騒動で、僕は2年前に起きたとある出来事を思い出しました。

それは、玩具メーカーの「タカラトミー」が起こした「リカちゃん炎上事件」。

2020年10月、当時Twitter上でトレンドワードのひとつとなっていた「#個人情報を勝手に暴露します」に合わせ、タカラトミー公式Twitter担当者は下記のようなツイートをします。

「とある筋から入手した、某小学5年生の女の子の個人情報を暴露しちゃいますね…!」

続けて、年齢や身長などの“身体的特徴”、タカラトミーが公式にダイヤル登録している電話番号といった「個人情報」を掲載。

記憶に新しい方も多いかもしれませんが(といってももう2年近く前ですが)、上記のツイートには「性犯罪」を想起させるとして大炎上しました。数日の後、本投稿は削除し、後日、社長記名でお詫び文が掲載。結果として、当時の担当者は解任され、現在の「情報発信用アカウント」として数か月後再稼働することとなりました。

僕は、noteならびにwebメディア双方で、このことについて触れています。その際にも触れたのですが、「リカちゃん炎上」で本当に問題だったのは、「担当者が『リカちゃん』というブランドが持つ価値や世界観を全く理解しておらず、多くのファンを踏みにじる行為をした」という点。

「性犯罪を想起」を問題視していないわけではありません。そちらについても最低最悪な事案です。しかしながらそういった面も含め、今回伊東氏による「シャブ漬けにする戦略発言」は、少なからず似通った点があると感じるのです。

伊東氏もタカトミ(当時の担当者)も、その筋(マーケター・Twitter担当者)では、知らぬ人はいない有名な存在でした。各種メディアにも多く取り上げられていました。「成功者」でした。

ただ一方、有名になり過ぎた結果、段々と善悪の判別が付かなくなってきた。これはかつてのタカトミがそうで、そして伊東氏にも言えるでしょう。

マーケティングもSNS運用も、ともすれば「エッジの効いた表現」というのが、殊更持て囃される傾向にあります。後者(SNS運用)に関しては、タカラトミー以降に頻発した炎上で多少は改善されつつありますが、前者(マーケティング)は、発言が社会問題化したのは恐らく初のケースではないでしょうか。

そのため、先ほど僕が「ムラ社会」と揶揄したマーケティング界隈も、若干の戸惑いがあるのかもしれません。「なぜここまで叩かれるのか?」と。

しかしながら、本件は語るまでもない愚行です。社会的影響力を鑑みずとも言語道断です。一部で「復帰希望」なんて声もあるようですが、ここまでの社会的信用度を失墜させた人物を復帰させることに、世間が許すとでも思っているのでしょうか。悪い意味で今回と比肩する騒動を起こしたタカトミは、2年近く経った今でも、SNS上では未だ復帰が叶っていません。そしてそれはこれからもでしょう。世の中はそう簡単に忘れてくれません。当たり前の話ですがね。

僕は過去に何度か登壇経験があり、現在はライターとして、本名の記名で記事が日本を代表するニュースサイトのほぼ全てに掲載されているという、少なからず社会的な影響力を持っています。

そういった人間は、同時に「社会的責任」が発生します。こんな駄文を執筆している僕も、もし今後、かつてのタカトミや今回の伊東氏のような放言を公の場で発した場合、非常に厳しい罰を受けるでしょう。知名度を得ることは、そうしたリスクと隣り合わせなのです。

■声をあげるということ

「シャブ漬けにする戦略」は、一人のセミナー受講者の勇気ある告発により生じた事案です。これは僕の推測ですが、当の受講者は告発をするのに至り、少なからずの葛藤があったはずです。

それでも発したのは、「人の矜持として決して受け入れられないこと」「マーケティングという仕事に真剣に向き合っていること」といったことも要因ではないでしょうか。

僕も今回こうして久しぶりのnote上で発したのは、そのような感情が心の奥底に沸き起こったからでもあります。それは2年前、タカラトミーによる「リカちゃん炎上事件」を受けたときも同様でした。

当時僕は、自分の意見を発信するか否かで大いに悩みました。タカトミほどではないが、自分もメディア露出の多かったTwitter担当者「中の人」のひとり。僕が発信することで、「流れ」を形成してしまう可能性も考慮しました。

それでも最終的にnoteで発信したのは、実はすぐ間近にTwitter運用上の取り組みで登壇する機会もあった中で、目の前の重大事案を見てみぬふりは出来ないという理由もありました。しかしそれ以上に、やはり絶対に受け入れられないという気持ちが強かった。とはいえ、発信したnoteが反響を呼んだ結果、記事としてブラッシュアップするというのはさすがに予想しておりませんでしたがね。

公民権運動で知られるアメリカの牧師「マーティー・ルーサー・キング」が遺した言葉に、「最大の悲劇は、悪人の圧制や残酷さではなく、善人の沈黙である」というものがあります。

先ほど述べた通り、伊東氏が起こした騒動に関して、マーケター界隈は驚くほど静かです。じっと時が経つのを待ち、まるでほとぼりを覚めるのを期待するかのように。もう間もなくゴールデンウィークなので、連休明けならみんな忘れると高を括っているのかもしれませんね。マーケターの割には、随分と甘めな分析ですね。

しかし世間は、そんな「やり取り」もじっと見ています。一部のマーケターの皆さんは、「世の中なんて簡単に動かせる」と思っていると感じざるを得ない行動や発信をされていますが、世の中そんな甘くありません。もう少し現実を見た方が良い。

吉野家が今回迅速的な対処をしたのは、時間が経つにつれ、「伊東氏の発言=吉野家の総意」とされることを憂慮したことも大きかったと思います。なので、「常務(当時)・伊東正明の個人見解」であることを伝えるべく、素早い解任に踏み切ったと考えられます。

といっても、今回吉野家が負った「疵」は、そう簡単に拭いきれるものではありません。長い時間をかけても完全に払拭できるかは正直分かりません。

一方、マーケティング界隈は、吉野家が危惧した「バッドエンド」を選択しようとしています。現実を直視せず、特定のワードをミュートにして目に入れることすら避けている。「お客様の声」に真摯に向き合うつもりがないのです。

僕はマーケティングという仕事が好きです。今の自分のキャリアがあるのも、エスフーズでマーケターとして働ける仕事を得たからです。

「こてっちゃん」という大看板に出会い、色々なものに触れることが出来た日々は僕にとってかけがえのないひとときでした。仕事って楽しいなと感じれました。

やからマーケティングを含め、その面白さや魅力を胸を張って後輩たちに指導するためには、伊藤正明氏が今回引き起こした「生娘をシャブ漬けにする戦略」に対して、はっきりと「NO!」を申し上げたいと思います。

沈黙は金ではありません。罪なのです。

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