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文学的な何か

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読んだ本と観た映画のレビューです。
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2022年1月の記事一覧

ふくわらい 西加奈子

ふくわらい 西加奈子

始まりでは、暗闇や紺色の世界を纏っていたストーリーと主人公が、徐々に明るい世界を見始めて、強烈に生きていることを実感していく様子にグッとくる。終わりの世界は例えるならば、赤や橙の燃えている色であった。

主人公の鳴木戸 定は25歳の編集者として働く女性であり、過去の強烈なエピソードや生い立ちから、今も独特の空気感を持つ女性であり、感情が読めず、周囲がドン引きすることも平気でしてしまう所がある。そん

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流星ワゴン 重松清

流星ワゴン 重松清

私は小学生の頃、重松清の「カレーライス」が教科書に載っていた世代だ。
記憶は朧気ではあるが、主人公の男の子は父親に謝らないと意地を張っていて、それが何故だかをクラスメイトと議論する授業があったと思う。教科書の文字が大きかった気もするから低学年だったのだろうか?

それから時を経て、「ステップ」が映画化されたのを機に、小説が図書館にあったので読んだ。過去に「とんび」がドラマ化された時には、家族で食卓

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たゆたえども沈まず  原田マハ

たゆたえども沈まず 原田マハ

絵画に詳しくなくとも、大半の人が名前を知っている名画家ゴッホの生きた時代を、タイムスリップしたかのように思わせてくれる正確な描写と熱量が迫る。
私たちの生きる時代で、ゴッホは超が付く有名画家だけれど、彼は遂に生きている間に自分の絵の価値を確かめることができなかった人だと初めて知った。

舞台は1886年〜91年のフランスで、その頃のフランスは絵画ブームが起きており、その新しい波として日本の浮世絵が

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