【AIがすべての芸術を生み出すようになった社会】第1話

【あらすじ】
 西暦2223年。AIがすべての芸術を生み出すようになった社会。芸術は人間が生み出すものではなくなり、人間は芸術を鑑賞する存在になった。AIの生み出す芸術品以外は、人間の感性を刺激しない。芸術家は犯罪者だ。またAI以外の生みだした芸術作品で感動するなどの心的変動をする者は、感情表現者と言われ拘束対象だ。
 違法な芸術家を捜査し追いかけるのは、警邏庁特別刑務官・通称蒐集家である。ただ芸術は芸術家にしか理解できない。そこでは感情表現者らが、特別刑務官の指示の元に判別と逮捕・及び排除を行っている。
 特別指定表現者である篝は、特別刑務官の青山二葉と共に、ヨセフという犯罪者を追いかける事になる。

 *** 第1話 ***

 西暦2217年、第八シェルター・日ノ本。
 第六エリア・旧第三東北市。

 そこにここ、日ノ本国最大の 感情表現者センシティブ収容矯正施設・ 御堂みどう学園は存在する。

 AIが全ての芸術作品を生み出すようになって、早百五十有余年。
 芸術作品は、人間が生み出すものではなくなった。

 人間は、鑑賞する存在であり、芸術を生み出すのはAIの仕事である。今、人間はAIが生みだした芸術作品にしか、感動しなくなった。

 しかしながら一定の例外は存在し、異分子たる彼らはセンシティブと呼ばれている。人格の矯正を行わなければ、将来的には違法な存在である 芸術家アーティストになり、犯罪行為に手を染める者が出てくる。

 実際に過去、大規模な芸術家集団によるテロ事件が発生した。被害者の数は計り知れず、今も占拠されたビルで亡くなった人々の慰霊碑には、悲惨な記憶を忘れないようにと、多くの者が花を手向ける。

 さらに小さい事件は、数多ある。芸術家は、独特の創造性を殺戮により昇華させる事が多い。今日も街のどこかで、血が流れているのかもしれない。それを芸術家は、〝オリジナリティ〟とし、〝個性〟であり、〝美〟あるいは〝表現〟だと豪語する。

 決して野放しにしてはならない存在だ。だが今も、テロを手引きしたとされる芸術家による 秘密結社ソサエティの行方は、分からないままだとされている。彼らは事件の陰で暗躍しているようで、その気配を感じさせるのに、影のような残り香があるのみで、実態は掴めない。

 さて――この御堂学園では、そんな感情表現者だと認定された児童・生徒を収容し、人格的な矯正を行い、犯罪を未然に防いでいる。彼らが決して、自ら芸術作品を生み出す……人間の手で違法な芸術作品を生み出すアーティストにならないように監視し、教育する機関、それが御堂学園だ。

 一度芸術家になってしまえば、その者は二度と一般市民には戻れない。そうなれば、 蒐集家コレクターと呼ばれる警邏庁の特別刑務官に、排除される事となる。

 待ち受けるのは、基本的に、死だ。



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