【AIがすべての芸術を生み出すようになった社会】第19話
数日後。この日も青山と篝は外へと出た。
「さすがですね……うっ……」
立ち会った他の刑務官が、吐瀉物をまき散らす。
青山は、手を下して回った篝を真っ直ぐ見ている。そこには芸術家の小規模な拠点があって、本日は殲滅作戦を行った。二十三人いた芸術家や、芸術家に感化されていた感情表現者達は、既に首と胴体が離れ、手足が残っている者も少数だ。
拠点には、堕天使を描いた油絵が壁に掛けられており、黒い聖母の彫像があった。
これらは、ヨセフが関わっている秘密結社に属する芸術家達が、共通して飾る偶像だ。
「篝、戻れ」
無言で篝が、遺体の山から飛び降りて、青山の前へと着地する。篝の表情に動揺は見えず、今し方大量虐殺をしたようには到底思えない。その白い頬が血の紅に塗れている点だけが惨状を示すようで、青山はポケットから取り出したハンカチで、篝の右頬を拭った。
「事後処理は任せる。篝、帰るぞ」
こうして青山と篝は帰宅した。
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