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『未満警察』第1話の覗き問題について思ったこと

先週の土曜日、満を持して始まったドラマ『未満警察 ミッドナイト・ランナー』。韓国映画が原作の、警察学校に通う学生バディが事件を解決していく物語だ。いまをときめくKing &Prince平野紫耀とSexyZone中島健人が出演するとあって、注目度が高いドラマだと思う。わたしは中島健人くんが好きなので、やっと放送が決まってよかったな、と思っていた。

ドキドキしながら見てみると、平野くん演じる次郎は天真爛漫でかわいらしいし、ケンティー演じる快は神経質なキャラクターの中に本人の隠しきれない色気がにじみ出ている魅力的な人物造形だった。原作と比較しても、きっとケンティーは演技の勉強たくさんしたんだろうな、と思ったし、二人が話しているシーンは交換日記をしてまで培ったふたりの仲の良さがわかるような掛け合いで、見ていて嬉しくなる。これが毎週見られるなんてサイコーだ。

しかし、である。

放送直後から、作品中の一部のシーンが問題としてTwitter上で議論が巻き起こっていた。そう、それが「覗き」シーンの是非である。

第一話は寮の向かいの建物の部屋にいる湯上りの美女に目を奪われたふたりが双眼鏡で「覗き」をしていると、なんとその美女が途中で帰ってきた旦那と思われる人物に殴られてしまう。彼女を助けようとしてふたりが活躍し、話は二転三転していくものの結果的に事件は解決し、めでたしめでたし、となるのだ。

ここに対して、「性犯罪をコミカルに描くのはいかがなものか」という意見が席巻しているのである。

こんなことを言うのは悲しいけれど、たしかに、この脚本は贔屓目に見ても擁護できない。警察学校の学生だからとかではなく、覗きは普通に人間としてアウトである。それをコミカルに扱ったことがよろしくないし、せめて彼らには罰を与えて「覗き=悪」という共通認識は作って欲しかった。

おそらく脚本の方も、悪気があったのではない。


当初わたしは「必然性のない『覗き』からの始まり」に対して違和感を持っていた。偶然見かけただとか訓練の時に女性と関わりを持ったとか、他にもいくらだって始まり方がある中で、なぜに覗きをさせた、と思った。
しかし上記のTweetをみる限り、脚本の渡辺さんは数ある物語の始まりの選択肢の中から「覗き」を選び取った、というよりはヒッチコックのサスペンス映画『裏窓』へのオマージュありきで脚本を組んだようである。(『裏窓』は隣のアパートの人間観察が趣味の足を骨折したカメラマンがある日、事件を察知して.......という話。下記で見れます。おもしろかった。)『裏窓』を見てから第一話を見返すと、なるほど、これがやりたかったのか、という気分になる。

だが『裏窓』が作られたのは1954年で、今は2020年である。当時とは状況が違うのだ。オマージュだからOK、とはならない。そしてヒッチコック作品を見ている人はニヤリとできるシーンなのだと思うけれど、そもそも元ネタを知らない人がおそらく多い中で、突然の覗きは通用しない。

また、『裏窓』においては覗きを行う主人公に対し、訪問看護師に「州法により覗き魔は6ヶ月間の矯正病院行き」「昔は目に熱い火搔き棒を当てたそうですよ」という辛辣な言葉を浴びせているが、本作では快の覗きを発見した次郎はノリノリで乗っちゃうし、物語の最後に教官からくらうお説教でも、怒られている内容は「寮から無断外出したこと」「すぐに通報すべきだったのに勝手に行動したこと」の2点だ。おいおい教官、生徒の覗き行為把握してんでしょ〜? 快が転んだ時助けなかった生徒に罰則で走らせていたけど、彼らに罰則はないのか? 仲間を見捨てるのと同等以上に素質に問題があるぞ? と突っ込みたくなってしまう。

公共の電波でこういうシーンを作る場合、せめて罰を与えて「いけない行為である」という共通理解をつくったほうがいいのではないか、とわたしは思う。
たとえば漫画『銀魂』では、お妙さんに変態行為を働く近藤さんは常に罵られ、ボコボコにされている。これがあることで、わたしたちは作品を楽しみ、近藤さんを愛しつつも、近藤さんは気持ち悪いキャラであると認識し、変態行為は容認されるものではないと思っているはずだ。

そのような表現なしの今作では、「エッチなことに興味のある2人かわいい♡」「だめだよもう♡」程度にしかとらえなくなる人が出てしまう可能性があると言わざるを得ない。だって2人はジャニーズで、彼らを好きな女の子はたくさんいるのだ。そして価値観が定まっていない時期に好きな人がこういうシーンに出ていたら……好きな人を全肯定したいがあまりに、彼女たちの価値観が歪んでしまうのではないかとわたしは危惧している。

この問題以外は楽しく見ていたので、この後の脚本が改善されるといいな〜、と思う。来週も楽しみにしています。


【PS】

Twitter上でよく見かけたけれど、役者2人を責める意見は論点がおかしいのではないかと思う。
ストーリーを作るのはあくまでも脚本家であって、役者ではない。

「問題がある脚本だと認識していたのであれば出るべきでない」「脚本家に意見してストーリーを変更すべきだった」なんて意見があったけれど、どんなに良い関係を築けていたとしても、役者はキャスティングしてもらう立場である。同じジャニーズだとしても山Pだとかキムタクだとか、大御所なら話は違うかもしれない。けれどまだ売り出し中の彼らを責めるのは違うのではないか、と思う。








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