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ウィ-ンの今#1-シュテファン広場〈居場所のある街を作るもの〉

世界遺産の街「ウイーン」の”非日常”⁈ 
コロナが変えた景色・変えなかった景色

ウィ-ンへようこそ!

オーストリアの首都ウィーンは押しも押されぬヨーロッパの観光都市ですが、コロナの影響で2020年4月からたびたびロックダウンに。2020年秋からは、ヨーロッパの国間の移動が特に厳しく制限されているため、世界中からの観光客でにぎわっていた街は、いま観光客がほぼいません。

ん!? ”日常生活都市としてのウイ-ン”—この状態って、今じゃなきゃ、伝えられなくない??? と思った私はウイーンの”非”日常を記すことに決めたのです。海外旅行ができなくても、今のウイーンやヨーロッパを近くに感じていただけたら嬉しいです。

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”居場所のある街は愛される”

オ-ストリア・ウィ-ンのおへそ、シュテファン広場の現在の様子です。

普段は観光客でいっぱいの観光地ウィ-ンも今はロックダウン中。

世界遺産の街をウイ-ンっ子が満喫しています。ウイーンっ子が大好きなカフェやレストランもすべて閉まっているし、お店も閉まっていますが、テイクアウトができるので、街中いたるところで様々なウイ-ンっ子がピクニック状態。(お仕事中の人もランチは外で)

ベンチだけでなく、モニュメントの足元の階段、閉まっている建物の入り口の階段…ヨーロッパの街ってこんなに座れる居場所があったんだなぁ。

”居場所のある街は愛される”


そして、そこには多くの人に愛される建築もあります。

「シュテファン大聖堂」ゴシック建築—当時の最先端技術を駆使した”荘厳で神聖な空間”はみんなのもの!

広場に座ってぐるっと見渡すと、まず14世紀に建てられたウイーンで一番重要なゴシック建築の一つ「シュテファン大聖堂」

ちなみに残念ながら火災に合ってしまったパリの「ノートルダム大聖堂」もゴシック建築。高い尖塔が特徴ですね。なぜなら、このころキリスト教を広く布教していく中で大事だったのは、文字(聖書)を読めない人たちにどのように宗教の壮大な世界観を空間を使って体験させるか。ちょうど、石などを積んで高い構造物や空間を作る技術(ゴシック建築の技術)が開発されたので、このころ作られた大聖堂は、天から光が降り注ぐステンドガラス窓と相まって、神聖で荘厳な空間を実現することが可能だったのですね。

私も当時、初めてそんな空間を体験したら、きっとキリスト教徒になってしまうかも…と思ってしまいますね(笑)

そして、シュテファン大聖堂では長い歴史の中で様々大切な行事が行われてきました。ハプスブルグ帝国の皇帝たちのお墓もあるし、モ-ツァルトの結婚式もここで行われたし…いってみれば、700年(!)にわたって様々な有名人ゆかりの場所であり歴史の証人なのですが、

ヨ-ロッパの教会のもっとすごいところは…

誰でも訪れることが出来るということ。コンサ-トなども行われたり、重要な人物がなくなると献花台ができたり、もちろん毎週日曜日のミサも。”究極のマルチスぺ-ス”なのですね。誰でもその空間が体験できる、見られる、妄想できる、もちろんお祈りもできる、赤ちゃんの洗礼も。”どんな人にも居場所を提供している建築”なのですね。だからみんなにとって身近で愛されるのでしょう。

そして気になる左のモダンな建物は?世界遺産の街なのにこんなの建てていいの⁉

建築家ハンス・ホラインのポスト・モダン建築「ハ―ス・ハウス」歴史都市のど真ん中に現代の建築を作る建築家の覚悟

1990年にオ-ストリアを代表する建築家ハンス・ホラインがこの石とガラスの建築を建てた時、ウイーンでは大論争が起こりました。施主はハ―スさんという富豪の方で用途は商業建築だったので、日本であれば持ち主がそれにしたいなら仕方がないじゃん、で終わりですが、ヨーロッパではそうはいきません。

建築家としてヨ-ロッパで仕事をしていると、日本ではあまりなじみのない建築申請が課されます。景観の審査と歴史建造物の審査です。これについてはまたの機会にお話ししますが、「新しいものに対する厳しい目」はヨーロッパの伝統でもあります。

「歴史的な街の調和を壊さないか」「これはこの街にふさわしいか」「美観はどうか」など、なにか新しい開発が行われる時や新しい建物が建つ時、街の人々の間で激しい議論が交わされます。歴史上では、実際に、設計した建物の批判を苦にして自殺をしてしまった建築家もいるくらいです。建築家としては大変な覚悟がいるとともに、裏を返せば、住んでいる人が街の美観や調和に高い関心があるということなのですね。

このように、多くの市民が自分の街に誇りを持ち、一緒に街を育てているとも言えます

当時、ハンス・ホラインはファサ—ドの原寸を建てて、そのガラス面にシュテファン大聖堂が映り込むアイデアを実証し、新しい建築が街に溶け込むことを実際に示すことで人々を説得しました。

30年たった今、ハ―ス・ハウスは街に溶け込んで、シュテファン広場を形成する大事な建築物となっています。100年後、街の人はこの建築をどのように言ってるのだろうなぁ、と思いをはせてしまいますね。

最後に

街に対して、歴史に対して責任を持つ建築、そして、それを共に厳しく育て愛していく市民の関心が今日のウイーンの土台になっているのだなと、観光客のいなくなったシュテファン広場に来て思ったのでした。

ではまた次の「ウィーン」でお会いしましょう!

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