映画「すずめの戸締まり」震災をテーマに批判覚悟で作られた日本映画史に残る名作を早速観た感想と考察
2022年11月11日。
「君の名は」「天気の子」で有名な日本を代表する新海誠監督の最新作「すずめの戸締まり」が公開されました。
早速見てきたので、レビューしようと思います。
◆作品情報◆
◆キャスト◆
◆あらすじ◆
予告を見ただけでは、詳しい内容がよく分かりません。
少女と青年、扉が関連する物語くらいの情報で鑑賞。
劇場で映画館に入る前に、注意喚起の案内があり、震災をテーマにした映画ということが分かりました。
事前情報なしの状態で映画を鑑賞したい僕にとって、少しネタバレのように感じましたが、これは映画を鑑賞するに当たってある程度心の準備をするために必要な情報でした。
震災で実際に被害にあった経験のある人にとっては、見るに耐えられない内容だと思います。
それでも僕は見て良かった作品でした。
「君の名は」から災害をダイレクトに描いてきた新海誠監督、さらに攻めたなという印象です。
批判が生まれることも折り込み済みで作られたこの作品が、多くの人の心に届いて欲しいと感じました。
僕がレビュー記事を書くときは、これから見る人のために基本ネタバレなしで書くようにしているのですが、今回の記事はネタバレありで書き進めていきたいと思います。
日本映画史に残るであろう新海誠監督の最新作、気になる人は作品をご覧になって頂いたうえで、続きを読んでいただければ幸いです。
以降ネタバレありのため、作品をご覧になられた人向けにレビューします。
1.美しく描かれた日本各地の風景
物語の主人公すずめは、廃墟にある扉を探しているという青年・草太と出会う。
草太に一目惚れし、また会いたいという気持ちから草太を追いかけていったところ、地震の元凶である扉の秘密を知ってしまう。
それから草太とともに、日本各地へ「戸締まりの旅」に出る。
物語の舞台は九州から始まり、愛媛、神戸、東京へと移っていきます。
その都度描かれる、日本各地の風景描写がとても美しい。
これまでの新海誠監督作品は、東京が舞台であることが多く、作品公開後都内各地が聖地として巡礼されています。
個人的には地元の岡山県にある鷲羽山ハイランドが、神戸で廃墟になった遊園地のモデルと知り、嬉しく思いました。
本作品のモデルになった場所については、上記記事をご参照ください。
2.震災を描いた作品
冒頭でも触れましたが、本作品は東日本大震災をダイレクトに描いている作品です。
震災が起きた当時、東京の自宅にいてあまり被害を受けなかった僕でも、「3.11」という文字が書かれた日記や、恐怖をあおるダイジンの言葉を聞いて、あのときの感情がフラッシュバックしました。
こちらの記事にまとめた通り、あのとき何もできなかった悔しさが、僕の人生を変えるきっかけのひとつでした。
毎年3月11日が来るたびに黙祷をして、あのとき感じたことを思い出し決意を新たにしていたものの、年月が過ぎる度にその気持ちは薄れていたと思います。
さらにあの当時子供だった人、また「3.11」以降に生まれた人にとっては、「知らない」または「覚えてない」出来事。
戦争を体験していない僕らの世代が戦争映画を見て、「日本でこんなことがあったんだ」と知るように、これからの世代の人にとっては、またいつ起こるか分からない震災の恐怖を知るきっかけになると思います。
新海誠監督がこの物語を考え始めたのは2020年。
コロナで緊急事態宣言が発令されている最中で、震災に触れる物語を書いていいのか不安があったそうです。
不安がありながらも、新海誠監督の実の娘さんの成長を見守る中で「震災が教科書の出来事になっている」と気付き、今しかないと思い作品を世に出されたそうです。
この作品をオススメしたい気持ちがありながらも、震災に対するトラウマや実体験がある人は、覚悟を持って見ていただきたいと思います。
3.ダイジンの正体
要石から開放され猫となり、草太を椅子へ変え、要石の役割を渡したダイジン。
結局ダイジンは何だったのか、ネット上では様々な考察がされていますが、現時点では新海誠監督のダイジンに対するコメントはありません。
個人的には、ダイジンは草太と同じ閉じ師だったのではないかと考えています。
神戸のスナックに現れたダイジンを見たママは、ダイジンが猫ではなく人に見えていました。
草太が要石になったことを草太の祖父である宗像羊朗に告げたとき、祖父はこんなセリフを言っていました。
さらに宗像羊朗は、黒い猫になったサダイジンに「お久しゅうございます」と声をかけます。
草太は要石になるときに、すずめと出会ってからの日々を思い出し、もう少しこの世にいたかったと、すずめに対する恋心を描いた描写がありました。
草太と同じように昔は人間で閉じ師だったダイジンは、人を好きになったり人から愛されるという体験がないままに、要石となり役割を全うしていた。
そして要石となっていたダイジンを引っこ抜き、役割から解き放ち優しくしてくれたすずめに対して、初めて愛情を感じた。
だから要石の役割から逃れるべく、草太にその役割を押し付けたのではないでしょうか。
真相はさだかではありませんが、そうだったとするとダイジンがどんな人だったのか、気になりますね。
4.魔女の宅急便へのオマージュ作品
本作品は少女の成長物語であり、猫が登場し、ドライブシーンで流れる曲は「ルージュの伝言」。
見終わった感想として、宮崎駿監督作品「魔女の宅急便」へのオマージュ作品だと思いました。
新海誠監督はインタビューでも、魔女の宅急便の影響を受けていると話されています。
新海誠監督は、世界的アニメーション映画監督である宮崎駿監督につづく、「ポスト宮崎駿」とも呼ばれています。
新海誠監督がアニメーション映画を作り始めたのは、宮崎駿監督の作品を見たことがきっかけになったそうです。
大ヒット作品が増えるにつれ、新海誠監督作品シリーズも、ジブリ作品シリーズに近づいてきている印象があります。
宮崎駿監督を尊敬されている新海誠監督が、本作品を魔女の宅急便に似ているところがあると名言し作品を作られたことは、ファンとしても嬉しく思いました。
いずれ新海誠監督作品がジブリ作品に並び、「ジブリパーク」のようなテーマパークができることも、近い将来あるかもしれませんね。
5.新海誠×RADWIMPS&新人アーティスト
「君の名は」から新海誠監督作品のテーマ曲を手掛けたRADWIMPS。
今回で三度目のタッグとなり、新海誠監督作品=RADWIMPSという印象がついてきました。
新海誠監督作品の世界観を表現する、RADWIMPSの新しい名曲の数々も最高です。
エンディングテーマに使われていたこちらの曲。
草太のすずめ対する恋の心情が、歌詞で描かれています。
すずめを娘として受け入れた、おばの環(たまき)の名前がタイトルに入ったこちらの曲。
環の葛藤が歌詞になっていて、本作品を観た人はグッと来るものがあると思います。
そして、今回の予告編にも使用されている主題歌ぶ「抜擢されたのは、新人アーティストの「十明(とあか)」さん。
Tik Tokでギターの弾き語りで再生回数を伸ばしている、19歳のアーティストです。
新海誠監督とRADWIMPSの野田洋次郎さんが、主題歌に合う声を探していたところ、オーディションで十明さんの歌声を聞いて大抜擢したそうです。
無名のアーティストだったところから、新海誠監督作品の主題歌の座を掴み取ったとは、夢がありますよね。
本作品を見事に表現した楽曲の数々にも注目です。
◆まとめ◆
待望の新海誠監督作品。
今までの作品とは少し違った、見応えのあり考えさせられる作品だったため、その良さを凝縮し紹介させていただきした。
気になった人はぜひ、映画を見てみてください。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
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