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三浦豪太の探検学校

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冒険心や探究心溢れる三浦豪太が世の中について語った日本経済新聞の連載記事「三浦豪太の探検学校」(2019年3月に最終章)の、リバイバル版。わずか11歳でキリマンジャロを登頂。フリ…
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2022年9月の記事一覧

梅雨の時期の健康法

 梅雨になり、じめじめした天気にうんざり、太陽が恋しく思う人も多いのではないか。こうした気分は梅雨の薄暗く湿った空気により自律神経が副交感神経優位になることからきている。自律神経には副交感神経と交感神経があり、副交感神経はリラックスを促し、体を休めさせようとする。しかし、その反面これが持続すると気だるい気持ちになり、何をするにもおっくうになりがちだ。  交感神経は興奮や覚醒を促す。仕事や勉強の恒常的なストレスは交感神経を常にオンにする。これは様々な体の悪影響が指摘され良いイメ

8500メートルでお茶会

2015年4月25日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  これは僕がエベレスト登頂前日の2013年5月22日に書いた「豪太日記」の抜粋である。  「明日は夜中の出発になる。そのため早めに用意を始め就寝しなければならない。最終キャンプであるC5(標高8500㍍)の献立にはC4(7980㍍)と同じく手巻きずし!これならどこに行っても口に入る。礼文島のウニの缶詰、カニ味噌、塩辛、さらに山わさびがメニューに加わる。みんな盛り上がり、やんや言いながら、それぞれの手巻きずしミックスを考

見えなくても登れる

2015年6月27日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  先日、以前にも紹介したダイアログ・イン・ザ・ダーク(DID)のガイドと友人数人で山梨県の大菩薩嶺(2057㍍)に行って来た。DIDとは完全に光源をゼロにして作られた空間で、そのガイドは視覚障害者ではあるが、暗闇では誰よりも頼りになる。  実はDIDの方々を登山に誘ったのは今回が初めてではない。3年前、神奈川・逗子の里山登山に一緒に登った。彼らは好奇心旺盛で明るく楽しい。この時は9キロほどの行程であったが「これでも短い

ネパール支援の輪

2015年6月20日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  登山家、栗城史多氏の呼びかけで現役で活躍する登山家が一堂に会し、ネパール大地震について考える「ネパール復興チャリティーイベント」を開催した。  清掃登山や環境保全活動に積極的なアルピニスト、野口健氏は震災当時ネパールゴウキョピークをトレッキング中だった。地震の後、トレッキングから山間部の村々を歩き、それぞれの村のダメージを記録する活動に切り替えた。  そのダメージは幅広く、一部の村では壊滅的な被害であった。今回のイ

防虫加工の繊維

2015年6月13日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  梅雨に入り、いよいよ夏も近づいてきた。僕はアウトドア全般が好きで、スキー以外でも山登り、海遊び、川遊びができる夏が待ち遠しい。しかし、こんなに楽しいアウトドアの中に一つだけ僕が苦手なものがある。それは蚊やダニによる虫刺されだ。  エベレストのように標高が高く空気が薄く寒い所で何日でも耐えられる僕でも、日本の低山で蚊が飛ぶ高い音が聞こえただけで眠れなくなってしまう。   そんな中、僕にとって力強い見方ができた。米国の

給食が夢を育てる

2015年5月30日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  僕が通っていた札幌の盤渓小学校では秋の収穫の時期になると普通の給食に加え学校で育てていた新ジャカをふかして出してくれた。採りたてジャガイモにバターをつけてほおばるだけで、なんとも幸せな気持ちになったのを覚えている。  こんな給食の思い出を、横浜みなとみらいで24日に行われたウオーキングイベント「WFP(世界ショック量計画)ウォークプラザ」で横浜の名所を歩きながら参加者と話をしていた。  WFP主催のこのイベントは今

お風呂の効果に注目

2015年5月23日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  日本ではほぼ全国のスキー場の近くに温泉施設がある。一日スキーのあと、ゆっくりお湯につかる。日本ほどアフタースキーに温泉の恩恵にあずかれるところはないのではないか。こうした温泉やお風呂に入る効果について修文大学健康栄養学部教授、伊藤要子先生の話を聞く機会を得た。  伊藤教授はHSP(ヒートショックプロテイン)研究の第一人者である。HSPとは熱、紫外線、低酸素、精神ストレスなどによって誘発されたストレスで傷つけられた細

身体の内部感覚をつかむ

2015年5月9日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  先日、久しぶりにトータルフィットネスコーディネーター、中尾和子先生のボールエクササイズに行ってみた。軽快な京都弁で冗談を交えながらも、その内容は極めて解剖学的で奥が深い。  会場に着くと中尾先生はプロジェクターにタブレット型の小型端末を接続している。プロジェクターに映し出されているのは人体の骨格だ。  エクササイズが始まると体の内部感覚を得ることの大切さを話し始めた。僕たちの体には200以上の骨と600を超える筋肉があ

「極限スポーツ」の進化

2015年4月18日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  昨年、ソチ冬季五輪で平野歩夢選手がスノーボード男子ハーフパイプで銀メダルをとり、日本中が大いにわいた。平野選手の出身地は新潟県の最北端に位置する日本海に面した自然が豊かな村上市だ。  その町に平野選手のお父さん、平野英功氏は廃屋と化した体育館にほぼ手作りでスケートパークを作った。僕は6年前にそこを訪れた時、その本格的なつくりとまだ幼かった平野選手のスケートボードの腕前に心底驚いたのを覚えている。  今度の夏季東京五

暗闇から世界が変わる

2015年4月4日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  先日、2年ぶりに東京・神宮前(現在はアトレ竹芝シアター棟1F)にあるダイアログ・イン・ザ・ダーク(DID)に友人と行って来た。DIDは光源0の暗闇の部屋に多数のギミック(アイテム)が用意されている。人は光源0の完全な闇の中では目はなれることが無く、視覚は完全に遮断される。5~8人ほどのブループを視覚障害者であるアテンド゙スタッフが案内してくれる。知らない人同士でも楽しめるのだが、今回の僕たちのように最近では友人同士のイ

「食」で築く平和な世界

2015年3月28日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  12日、父三浦雄一郎が国連世界食糧計画(WFP)協会親善大使となり、僕はその顧問に就任した。  WFPとは飢餓の無い世界を目指し活動する国連機関である。現在、世界にはおよそ8億500万人が深刻な食糧・栄養不足の状態にある。世界の人口が約70億人にだとすると9人に1人は飢餓に直面していることになる。しかし、WFPは現在の世界の食糧事情を考えれば世界のすべての人々に十分な食料が行き渡ると考えている。  そのためWFPで

逆境でのチャレンジ

2015年4月11日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  昨年11月、日本人初の世界王座3階級制覇をプロ初黒星で逃した藤岡奈穂子選手(39、竹原&畑山ボクサー・フィットネス・ジム)が、3月14日、メキシコで行われた世界ボクシング評議会(WBC)女子スーパーフライ級インターナショナル王者、マリアナ・フアレス選手と対戦し2-1の判定勝ちで復帰を飾った。  藤岡選手は、世界ボクシング協会(WBA)女子スーパーフライ級王者でもある。もともとミニフライ級だが、タイトルを返上し、より

技あり 九州のスキー場

2015年3月7日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  九重(くじゅう)森林公園スキー場は、九州中央部、大分県の阿蘇くじゅう国立公園の中にある。古くから父の友人である三浦健二朗さんはこのスキー場でレンタルを営み、毎年、モーグルレッスンの講師として僕に声をかけてくれる。   僕は九州のような緯度が低い場所にスキー場があるとは思ってもいなかった。さらに驚いたのはハイシーズンの週末、来客数は1日4千人を超える。九州のウインタースポーツへの思いは熱い。  九重山系の標高は千㍍以上