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ネパール支援の輪

2015年6月20日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 登山家、栗城史多氏の呼びかけで現役で活躍する登山家が一堂に会し、ネパール大地震について考える「ネパール復興チャリティーイベント」を開催した。

 清掃登山や環境保全活動に積極的なアルピニスト、野口健氏は震災当時ネパールゴウキョピークをトレッキング中だった。地震の後、トレッキングから山間部の村々を歩き、それぞれの村のダメージを記録する活動に切り替えた。
 そのダメージは幅広く、一部の村では壊滅的な被害であった。今回のイベントでは全壊した家屋、テント生活を強いられる人々がプロジェクターに映し出された。今後、雨季に入り雨が降り続くと、こうしたテント生活はより厳しさを増す。さらに地震により発生した土砂崩れは至る所で山間部のルートを寸断し、陸上輸送を困難にしている。復興にはルートを再開通することが急務であると訴えた。

 国内外の山々で活躍するクライマー、花谷泰広氏はネパールの山の魅力を語った。その上で自身が経験した阪神大震災について話し、ネパールの震災が風化しないよう訴えた。
 女性初のピオレドール賞(優秀な登山家に贈られる国際的賞)を受賞したアルピニスト、谷口けいさんは震災当時、カトマンズから北西約150キロ離れたアンナプルナサーキットをトレッキングしていた。そこはそれほどのダメージではなかったが帰路で変わり果てたカトマンズ市内を目のあたりにした。この時、被害に大きな地域差があることを実感した。
 僕は現地のシェルパから集めた情報を話した。3度のエベレスト遠征を献身的に支えてくれたシェルパのほとんど48人の家が全壊した内容だ。

 今後の支援のあり方について、野口氏は既に「ヒマラヤ大震災基金」を立ち上げ、現在インドに600張のテントを発注、ネパールに届けている最中だという。また栗城氏は「ふんばろうネパール支援」プロジェクトを立ち上げた。これはネパールの各地域で必要な物資の意見をまとめ、日本事務局は義援金をもとに現地で購入し、現場に届ける仕組みだ。

 これまで活動も考え方も違う登山家が集まり意見交換する中、最も印象的だったのは最後には「ネパールを訪れその魅力に触れることが最も大きな支援になる」と一致したこと。ネパールの人々や山の魅力は今回の震災でも決して損なわれることはない

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