松永光弘(編集家)

編集でものごとを解決する人。ブランディングやコミュニケーション、事業、学びの場づくり、…

松永光弘(編集家)

編集でものごとを解決する人。ブランディングやコミュニケーション、事業、学びの場づくり、地域課題など。顧問編集者のパイオニア。クリエイティブ本の制作歴20年。自著に『「アタマのやわらかさ」の原理。』『ささるアイディア。』。“編集の伝道”がライフワーク。

最近の記事

ビジネスパーソンとクリエイターがわかりあえない構造的理由。

「わかりあえない」のは本当に努力不足のせい? 「クリエイターは、なにを考えているのか、さっぱりわからない」 「いい案なのに、クライアントがわかってくれない」 仕事柄、ぼくはクリエイターにも、ビジネスパーソンと呼ばれる人たちにもかかわる立場にいるのですが、その両方からよく聞かされるのが「わかりあえない」という言葉です。ビジネスパーソンはクリエイターの考えていることが、クリエイターはビジネスパーソンの考えていることが、それぞれなんだかピンとこない。もちろんはなから互いに相手を拒

    • 普遍的な編集/編集的思考について学ぶ講座「編集のつかいかた」を開催します。

      「編集のしくみ・原理」や「そのつかいかた」に関する講座を、私塾的に開催します。テーマは「編集のつかいかた」。もちろん本づくりの話ではなく、普遍的な意味での編集もしくは編集的思考についての講座です。 よくいわれることですが、現代はもはや新しいモノがつぎつぎと生まれてくるような世の中ではありません。すでにあるものを受けとめて、それを再定義したり、意味づけたりすることが大切になってきています。コロナ禍で閉じこもりを余儀なくされたときもそうでしたが、新しいモノをこしらえなくても、受

      • 使えないアイディアばかり出るのはなぜ──1年かけて、15人のクリエイターたちにインタビューしてわかったこと。

        「使えるアイディアを生み出せない」編集家として、これまでクリエイティビティをテーマにした本や教育事業を手がけたり、顧問として企業にかかわったりすることが多いからか、ごく一般的なビジネスパーソンからよくアイディアにまつわる相談を受けます。“定番”はやっぱり「どうやったらアイディアが発想できるのか」。ただ、この数年は少し事情がちがってきています。アイディアの出しかたではなく、アイディアの質についての相談が目立つようになってきているのです。 ワークショップの普及やデザイン思考ブー

        • 編集によって人や組織を生かす“顧問編集者”

          企業などが抱える課題を「編集」の考えかたで解決する“顧問編集者”という仕事を、いくつかの企業で、ぼくはかれこれ6年くらいやっているのですが、このところにわかに、その活動の内容について訊ねられることが増えてきました。そんなご興味の参考に少しでもなればと思い、昨年刊行の書籍『ビジネスの課題は編集視点で見てみよう』(酒井新悟 著)から、著者のお許しをえて、ぼく(松永)と酒井さんの対談記事「編集によって人や組織を生かす、顧問編集者」をまるごと公開させていただきます。 組み合わせから

        ビジネスパーソンとクリエイターがわかりあえない構造的理由。

          編集は「整理」、デザインは「整頓」。

          編集とデザインの役割のちがいときどき「編集とデザインの役割のちがい」について訊かれることがある。 ざっくりとした印象からすれば、「混同することはないでしょ?」といいたくなるところだが、じつは骨組みだけを取り出すと、両方とも「さまざまな情報をコントロールして価値を提示する」という意味では共通している。また、編集とデザインには、ひとつのモノをつくっていくうえでのフェーズのちがいのようなところもあったりする。そんなことから、微妙な「すみ分け」を気にする人が出てくるのである。 では

          編集は「整理」、デザインは「整頓」。

          苦手だったからこそ、プロになれた。

          仕事にするなら「苦手なこと」を選ぶのはやめなさい、とよくいわれる。「苦手」なのだから不利に決まっている、というのがその“こころ”だが、ほんとうにそうだろうかと、ときどき思う。世の中には、苦手だからこそわかることもあるからだ。 ぼく自身でいえば、長いあいだ編集者として本をつくってきていて、自分の本も出しているせいか、はじめて会った人から「きっと子どものころから本好きで、読書家だったのでしょうね」などと訊かれることが多い。でも、実際のところはその逆だった。子どものころは文字を読

          苦手だったからこそ、プロになれた。

          伝わる文章は、コミュニケーションの「高さ」に気をつけている。

          意外と忘れられがちなコミュニケーションの「高さ」指摘されると重要性を感じるのに、意外にちゃんと意識されていない文章作法のひとつに「コミュニケーションの高さ」がある。かんたんにいえば、書き手と読み手とのあいだでの「意識のうえでの上下関係」みたいなものだ。実際には文章だけでなく、会話を含めたコミュニケーション全般にあてはまることだが、そこへの配慮は、文章を「伝わる」「共感できる」ものにするうえで不可欠だとぼくは思っている。 たとえば、的確で正しいアドバイスをメールで書いて送った

          伝わる文章は、コミュニケーションの「高さ」に気をつけている。

          「インプットからアウトプットが生まれる」のではなく、「アウトプットからインプットが生まれる」。

          新型コロナウイルス禍による外出自粛のせいもあって、ぼくの周囲でもSNSやブログなどへの投稿をはじめる人が増えた。これまで“発信”してこなかった人たちだから、はじめは妙にまじめだったり、たどたどしかったりもする。が、そこは見事なもので、投稿の数を重ね、日数を経るうちに、だんだんとクオリティが上がってくる。 メディアにはそれぞれの表現作法がある。noteならnoteに合った書きかたがあるし、TwitterにはTwitterの、FacebookにはFacebookの文化というか、

          「インプットからアウトプットが生まれる」のではなく、「アウトプットからインプットが生まれる」。

          企業にも、自治体にも、編集者を。

          「魅力を引き出して、うまく伝える」のが編集者今月から「JAPAN EDITOR'S LABO」という編集者ネットワークの顧問に就任し、活動に協力することになりました。 編集者といってもさまざまな立場の人がいますが、「JAPAN EDITOR'S LABO」は、なかでもおもに本や雑誌の世界でキャリアを積んできたフリーの人たちに注目し、そのスキルを広く世の中に活かしていくことをめざす全国規模の集まりです。 ぼくのnoteの記事「教養として知っておきたい「編集」の基本①:そもそ

          企業にも、自治体にも、編集者を。

          この外出自粛は、きっと未来という花のタネになる。

          何年か前に仕事で金沢を訪れたときのこと。ふらりと入ったカフェで手に取った小冊子に、服飾デザイナーの鴨居羊子さんのインタビュー記事があった。 鴨居さんといえば、1950年代のなかばに新聞記者からデザインの世界に転じ、当時としては斬新な女性下着を世に送り出すことで女性意識の解放をうながした、いわば立志伝中の人。活躍されたのはおもに関西だそうだが、ジャーナリストだった父親の仕事の事情で、幼少期には北陸で過ごしたこともあったらしい。そのときの経験をもとに、記事ではこんな指摘をしてお

          この外出自粛は、きっと未来という花のタネになる。

          なぜ本を「2冊セット」で贈ると気持ちが伝わりやすいのか。

          ■1冊だと、受けとめかたは相手次第講演などでもときどきお話しするのですが、ぼくは、だれかに本をプレゼントするときに、1冊だけを贈るのではなく、2冊セットにすることをおすすめしています。なぜなら、そのほうがずっと思いが伝わりやすくなるからです。 だれかに本を贈りたいと思ったときには、たいてい、 「その本を通じて○○○を相手に感じてほしい」 という思いがあります。つまりは、その本に込めたい相手へのメッセージがある。 ただ、その1冊を相手に贈っても、そのメッセージがそのまま伝

          なぜ本を「2冊セット」で贈ると気持ちが伝わりやすいのか。

          教養として知っておきたい「編集」の基本②:仕事のどこに「編集」をつかう?

          この記事は、さまざまな「モノやコトの編集」にたずさわるなかで見えてきた編集の基本的な考えかたを紹介する『教養として知っておきたい「編集」の基本』のシリーズです。 ■ 組み合わせると、なぜ「意味」が変わるのか「編集」とは、組み合わせによって価値や意味を引き出すこと。そのことを以前の記事では、つぎのような2組の写真をつかって説明しました。 なにか手を加えたわけでもないのに、横にならべるものを変えるだけで、左側の写真の意味がちがってしまう(ひとつめの組み合わせは「プライベート」

          教養として知っておきたい「編集」の基本②:仕事のどこに「編集」をつかう?

          編集家 松永光弘のプロフィール

          こんにちは。 松永光弘(まつながみつひろ) です。 「編集を世の中に生かす」をテーマに、さまざまな「人やモノ、コトの編集」に取り組んでいる、1971年(昭和46年)大阪生まれ、横浜在住の編集家です。 本の編集者歴は20年で、いわゆるトップクリエイターを著者に、広告やデザインに関する本を数多くつくってきました。「才能」や「センス」という言葉にしづらいテーマを扱うので、なかなか大変なのですが……、おかげさまで愛読してくださる人たちもいて、業界のバイブルのように長く読みつがれて

          編集家 松永光弘のプロフィール

          感動して撮った「花火の写真」が、意外と共感されづらい編集的理由。

          ■花火の「意味」を引き出すには。夏の風物詩のひとつといえば、やっぱり花火大会。つぎつぎと夜空をいろどる赤や青の大きな花はまさに幻想的で、思わず日常を忘れてしまいます。 せっかくのこの感動を写真に残しておきたい。だれかに伝えたい──。 そう思って、スマートフォンやデジタルカメラを手にする人は少なくないでしょう。 けれど、そうやって撮った「花火の写真」を、SNSにアップしたり、あとで人に見せたりしても、意外と“わかってもらえなかったり”します。あるいは、友だちから楽しそうに

          感動して撮った「花火の写真」が、意外と共感されづらい編集的理由。

          教養として知っておきたい「編集」の基本①:そもそも編集ってなに?

          はじめまして。編集家の松永光弘と申します。 ぼくは15年あまりにわたって、日本を代表する広告制作者やデザイナーといったクリエイターと呼ばれる人たちの本を数多くつくってきました。そして、そこで得た知見や編集者としての気づきをもとに、ここ数年は出版にとらわれることなく活動の領域を大きく広げて、編集家として「世の中に編集を生かす」をテーマに企業のブランディングや広報、学校づくり、イベントの企画、講演・司会、パーソナルセッションなど、日々、さまざまな「モノやコトの編集」に取り組んで

          教養として知っておきたい「編集」の基本①:そもそも編集ってなに?