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企業にも、自治体にも、編集者を。

「魅力を引き出して、うまく伝える」のが編集者

今月から「JAPAN EDITOR'S LABO」という編集者ネットワークの顧問に就任し、活動に協力することになりました。

編集者といってもさまざまな立場の人がいますが、「JAPAN EDITOR'S LABO」は、なかでもおもに本や雑誌の世界でキャリアを積んできたフリーの人たちに注目し、そのスキルを広く世の中に活かしていくことをめざす全国規模の集まりです。

ぼくのnoteの記事「教養として知っておきたい「編集」の基本①:そもそも編集ってなに?」でも説明しているように、編集とは、ひとことでいえば、「組み合わせのなかで意味や価値を引き出す」もの。出版の編集者はこの「編集の原理」を活かしつつ、本や雑誌をつくっています。

別のいいかたをすると、編集者の仕事の本質は「魅力を引き出して、うまく伝える」ことにある。その引き出す対象が、本の場合なら人やテーマ、雑誌なら服や雑貨、お店、プロダクトだったりするだけで、「魅力を引き出して、うまく伝える」という部分はいつも同じです。

「ここ、じつはすごく魅力的なんですよ。こんなふうに伝えたら、もっとみんなにわかってもらえるはず」といえるのが編集者、ということ。

そして、この「魅力を引き出して、うまく伝える」は、じつはいろんな場所で活かせます。ブランドづくりや広報活動はもちろん、商品・サービス開発やコンテンツづくりにも役立ちますし、経営者やリーダーのビジョンの整理にも貢献できる。あるいは、体系化されていないスキルやノウハウの整理や言語化にも力を発揮します。

実際にぼく自身も、これまでいくつかの企業の「顧問編集者」として、「魅力を引き出して、うまく伝える」スタンスで、ブランドマネジメントや広報のサポートをしたり、サービス開発に取り組んだり、新規事業の立ち上げにかかわったり、経営者やマネジャーの相談相手になったりしてきました(念のためにつけ加えると「なんとなく編集者が事業にかかわる」のではなく、「こうやって編集の力をつかう」と、ちゃんと意識的に「編集の原理」を活用して、仕事に取り組んでいます。ここ、大事(笑))。

この「魅力を引き出して、うまく伝える」ことができる編集者の力を、もっと社会で広く活用してもらおう──それが「JAPAN EDITOR'S LABO」の活動のメインテーマです。

オンライン時代は発信の“品質管理”がさらに重要になる

でも、いきなり編集者と組みましょうといわれても、すぐにはピンとこない人もいるかもしれません。編集者は、一般的な仕事の現場では、あまり見かける人ではありませんし……。

そこで、まず提案したいのが、「発信・コミュニケーションのアドバイザー」としての編集者の活用です。

企業にしても、自治体にしても、デジタルであれ、紙であれ、さまざまな発信物を社会に向けて投げかけるわけですが、そのクオリティチェックを編集者にゆだねてみる。あるいは、デザイナーなどに外注してあがってきた制作物の選考・確認に、編集者を立ち会わせてみる(本当は「発注」が大事なので、そこにからむとより効果的ですが)。そうやって、「発信・コミュニケーション」のクオリティアップをはかっていく。

メーカーでは、プロダクトなどの品質管理を徹底するのが当たり前ですが、いわばその「発信物版」です。

ウェブサイトであれ、ポスターであれ、フライヤーであれ、文書であれ、発信物というと「うまい文章」とか「きれいなデザイン」とかといった目に見える部分ばかりが注目されますが、伝わらない発信物の多くは、その前の段階、つまりは発信すべきメッセージや情報が十分に整理できていないことに原因があります。いわば「発信物制作の川上の部分」ですが、編集者はそこから流れをコントロールし、川下で文字やデザインといったかたちに落とし込むまでを管理します。

表面だけをつくろうのではなく、骨組みまでを意識してつくりあげていく。だからこそ、ただのウケねらいとか、にぎやかしではなく、芯を食ったコミュニケーションを実現しやすいのです。

(もちろん、編集者であればだれでもいいというわけではありません。編集のスキルを備えているうえに、編集について知的に整理して理解し、それを応用するノウハウを心得ている必要があります。そのあたりについても「JAPAN EDITOR'S LABO」でフォローしていく予定です)。

新型コロナウイルスの影響もあって、今後は社会においてオンラインコミュニケーションがさらに重視されるようになると予想されます。そうなれば、いままで以上に、発信物のひとつひとつに企業や自治体の印象や評価をゆだねることにもなってきます。“発信・コミュニケーションの品質管理”は、かなり重要な課題になるはず。

ぜひ、企業にも、自治体にも、編集者を。



※ご興味があるかたは、お気軽にお問い合わせください(自治体に関しては助成金制度などもふまえつつ、ご相談に乗らせていただきます)。

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