【新卒就活生向け】ユーザ系SIerの噂と真実

はじめに

私本人がコミュ障気質ゆえの就活情弱者だったため、類友の後進に向けて何か役立つ情報発信をしたいと思い、こんな記事を書いてみました。

この記事ではユーザ系SIerの周りでよく聞かれる業務、処遇についての話について、私本人の経験及び見聞きした情報を元に私見を述べています。

一個人の経験を一般論かのように語ってもナンセンスなので、あくまで私が十数年間在籍した企業とその周りで見聞きした範囲の話であることをお含みおきいただければと思います。

ユーザ系SIerを好意的に捉える人もいれば否定的に捉える人もいますが、ユーザ系SIerに興味を持った人がこの記事を読み、興味を持った部分について志望企業に確認いただくような使い方をしていただければと思っています。

※一応念押しをしますがnoteでこんな奴がこんな事言ってるんだけど本当?という質問の仕方は止めましょう。ネットde真実を現実にやると痛いです。

"こういった業務に興味があるのですが、御社はどうですか?"という形で質問されるとよろしいかと思います。

噂1.ユーザ系SIerはスキルがつかない

スキルって何でしょう。
まず何のスキルについての話かを明確にする必要があります。

開発・構築スキルは身につかない

コーディングスキルやインフラ構築作業スキルについての話の場合ですが、ユーザ系SIerで実際の開発・構築作業するのは最初の2,3年くらいです。ITエンジニアとして一通りの業務を経験することは可能ですが、継続的なスキル習得は困難だと思ってよいでしょう。これは正しいです。

ユーザ系SIerへの就職を考える層はそもそもコーディングスキル等で食っていくことを考えないと思いますが、そういった志向を持たれている方はすぐにいき詰まりを感じることになるので、ユーザ系SIerは避けるのが無難かと思います。

ユーザ系SIerで身につくスキルとは

ではユーザ系SIerで身につくスキルとは何でしょうか。それは調整力です。

ユーザ系SIerにおけるウォーターフォール開発の流れとしては以下のような感じです。
・ユーザ部門の要望を聞き、要件定義に落とし込む。
・開発フェーズに進むと内製開発をする場合もありますが、小規模なものであることが大半で、多くは外注します。
・外注した場合、開発が終わったら、外注したものが要件定義通りであることを受入検証します。
・受入検証が終わったら、承認手続きを経てリリースします。
これをシステムを作る、保守開発を行うたびに繰り返します。万事順調であればよいのですが、時に問題も起きます。

システム子会社を持つ企業であればシステムの規模もそれなりに大きく、機能やシステムレイヤで役割が分担されます。そうなると責任分界点が生じます。受発注の立場という縦の関係でも責任分界点があります。ネガティブな表現をすると、「責任の押し付け合い」です。
(ここで関係者がある程度納得のいく形で、しかし自分に責任が及ばないように上手いこと立ち回れると「出来る奴」になれます。)

分業していますので、こういった調整は必要になります。問題は対処は誰がどうするのか、それによるスケジュールへの影響は、あるいは見直しが必要なのか等々。

またプロジェクト開発になると発注側としてコスト・スケジュール・品質をコントロールし、課題が発生した場合は解決にあたることもあります。

こういった業務と主となります。これらの仕事に興味が持てないと思ったら、ユーザ系SIerは避けるのが無難です。

スキルがつかない、つぶしが効かないとよく言われますが、このあたりを語れると転職市場の文脈で言われる「スキル」がある人材になれます。調整力というものが言語化されにくいが故にスキルがつかない、と巷で言われてしまうのかと思っています。

どういったプロジェクトにおいて(規模も重要な要素)で、どういった立場で、どういった役割を果たしたのか。

自社で導入しようとしているシステムに有識者がいないような会社は経験者を求めていますので、その経験をその会社で再現できると判断されるように上記のような事を語ることが出来れば、転職市場で大きな武器になります。

プロジェクトマネジメントスキルはどうか

大規模なプロジェクト開発に上流の立場に携わると聞くと、プロジェクトマネジメントスキルがつくように思いますが、実際どうでしょうか。伝え方が難しいところがありますが、発注側と受託側でマネジメントの内容は異なります。

外販をしていないような会社では受託側のマネジメントスキルは基本的に付かないものと考えます。プロジェクトマネジメントに関心がある場合はHやNやFなどのメーカー系SIの本体に入るとよいと思います(立場はともかく、待遇もこっちの方が良いです)。実際に開発・構築をするのは下請けになりますが、システム開発を受託して構築まで責任を持ってプロジェクトを遂行する業務の面白さは受託側にあると思います。

プロジェクト開発において発注側にもコスト・スケジュール・品質をコントロールする役割はありますが、PMBOKで定義されるような知識スキルが求められることは少なく、求められるスキルの本質的なところは調整力に集約されると考えます。

システム企画スキルはどうか

企画については経験可能ですが、超上流については親会社のIT部門に役割がある可能性が高いです。

また細かいシステム改修の要件定義は日常的に行いますが、ある程度の規模の開発の要求仕様決め、要件定義は年次が上がってからになるということと日頃のアピールが必要だということを認識しておいた方がよいです。

個人的には超上流工程の業務はシステム構築とは別物だと考えています。興味がある人はユーザ系SIerではなく業務改善コンサルタントなどを志向するといいと思います。(そもそもそういった方はシステム構築より業務プロセス改善に関心があるのだと思いますが)

噂2.ユーザ系SIerの給料はそれなりに良い

給与・福利厚生

概ね正しいと思います。ただ「それなり」っていくらのことを指すのでしょうね。

都心の一等地で生活するならばともかく、生活することに困ることはないでしょう。社内結婚は割と聞きます。2馬力だとだいぶ経済的に余裕あります。

近年テレワークが浸透して働き方に融通が利くようになったたため、育児介護を抱えながらのフルタイム勤務も比較的しやすいです。(個人の資質などはあると思います)

よく言われますが親会社から出向者してきた人達との待遇差には在籍している間ずっと、もやもやした気分にさせられることは間違いないでしょう。

福利厚生に関しては親会社と同じものが使えるという風に言ってるところが多いと思います。

健康診断や各種施設の割引といったような部分は親会社と同様に使えることが多いです。一方で住宅手当や慶災時見舞いや退職金積立の積立など金額にして表面的に見えにくい部分については意外と大きな差がついていたりするので、「親会社と変わらない!」という文句を額面通りに受け止めたりしない方が幸せになれます。

噂3.ユーザ系SIerはまったりホワイト

ホワイトかもしれませんが、まったりは運です。

基本的に名だたる大企業のシステム開発運用を請け負う会社ですので、時に数百憶、基幹システムの刷新などとなるとさらに1桁増えるようなプロジェクトが始まったりします。そうなると普通に忙しいです。特に若手は手足となり奔走することになります。

まったりしてるのはすべてを諦めたおじさんかマミー(パピー)トラックに降りた方たちです。これも幸せかもしれませんが、キャリアの最初に選ぶ選択肢ではないでしょう。

その代わり名前の知れた企業のグループ会社ですのでコンプラ順守などはうるさいです。セクハラ、パワハラ、賃金未払いなどのブラックな話に巻き込まれることは比較的少ないでしょう。ないとはいいません。人が集まる組織ですので。巻き込まれることがあったら全力で逃げるか、一人で抱え込まず孤立した状態にならないようにしましょう。

噂4.ユーザ系SIerは出世できない

はい。その通りです。

SIerに限った話ではなく、子会社プロパーの宿命だと思います。

そもそもエンジニアになりたい人は出世欲があるのか、という点に矛盾も感じますが。出世することを人生の目的や生きがいに据える方はユーザ系SIerは選択しない方が無難です。

おわりに

以上となります。なるべく実態が分かるようにいい面も悪い面も含めて正直に書いたつもりですが、やはり一般論して捉えることはできないように思っています。私が在籍していたところは内販主体の会社でしたが、外販の組織にいれば身につくスキルはまた異なりますし、他の会社では企画あるいはその上の超上流フェーズから一気通貫で対応されるようなところもありますので、志望される企業の実態はきちんと自分の手と目と口で確認頂くよう、改めてお伝えしておきます。

皆さんのより良い企業選択の一端になれば幸いです。
では。







この記事が参加している募集

#お金について考える

38,323件

ありがとうナス!