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PMIでどんどん営業が辞めていった話|M&Aアドバイザーのつぶやき

こんにちは。かきもとみさです。私はM&Aアドバイザーの仕事をしています。

少し前に、これからの時代の営業についての話を書きました。

「営業マシン生産工場」的な組織はもう古く、営業が自主性をもってイノベーションを生み出していくことをマネジメントは促すべきだということをハーバードビジネスレビューより引用し、難しいと思うものの理想だなぁという感想でした。

ただ、ふと思い出したことがあります。
私が2社目に勤めた会社はそういえば営業の自主性に任せる組織だったなぁということです。

そして、M&Aにより大手企業の傘下に入った際に、まさに営業マシン生産工場のような経営を強いられ、営業人員がどんどん辞めていったのでした。

今回はそのことを書きたいと思います。

外資系的な組織文化だった私の2社目

私が新卒で入った会社は、営業をゼロから育てるそこそこ大企業グループのIT営業の会社で、企業としては非常に整っておりビジネスの常識を学ぶのには非常に良い環境でした。

2社目は真逆のような会社で、外国人営業人員が多い、外資系ぽい会社でした。「3ヶ月以内に月のターゲット売上を達成しないと正社員になれない」という超絶サバイバルな環境におかれ、顧客リストを渡されることはなく、机と電話だけ与えられ「はい、どうぞ売ってきて」という感じです。

完全なる成果主義!

社長はイギリス人で、営業メンバーにはオーストラリア人、フランス人、アメリカ人、フィンランド人、日本人・・・など、超多国籍な感じで、全体で30名くらいの小さな会社でした。

週次ミーティングは、月の実績と見込みだけを報告して終了。

売れない人は、契約社員のまま正社員になれず契約終了され、正社員でも数か月間、売上目標を達成できない期間が続いてしまうと、すぐ減給を打診される。

かといって、営業の仕方も何も教えられることはありません。

私にとっては超楽しい環境でした(笑)※Mっぽい発言ですが違います。

それ以外のプロセス部分は完全に営業ひとりひとりの力量に任される、まさに営業人員の自主性を尊重した組織でした。

そんな会社がゴリゴリの日系企業にM&Aされた顛末

この2社目の会社は、人材広告の会社だったのですが、日経の大手人材紹介会社にM&Aされました。

私が在籍中、ちょうどPMIの時期に入っていたのですが、まさに異文化カルチャーのぶつかり合いを目の前で見たという感じ。その頃はM&Aに携わっていなかったけれど、いま思えば貴重な体験だったと思います。

マイクロマネジメントしたい営業マシン量産工場 VS 自主性に任せた放任主義国家

親会社になった日経人材企業は、買収した対象会社(笑)である私の2社目の会社を見て、「こんな放任経営で業績があがるか!もっと営業人員のプロセスを可視化して、育てていかなければ!」という感じの真っ向から放任経営を否定する姿勢だったと感じます。

そこで、徐々に日本人による日本人っぽいマネジメントを施行するようになりました。架電件数、アポイント件数、見積金額、受注件数目標を細かく設定し、進捗を細かくフォローしていく。

週次のミーティングは「実績」「結果」だけだったのに、報告事項が増え、施策が増えていく。

こんなマイクロマネジメントへの移行があっては、「売れていれば文句を言われない」環境を好んで長年在籍していた外国人営業が不満を感じないわけがありませんでした。

そんな感じで、会社のキー人材となっていた外国人営業人員はどんどん辞めていく。中には、新しいカルチャー(営業マシン量産工場化)にあたり、以前は活躍していたのに「もはや辞めてもらった方が良い」とされるような人員までいたように感じます。

何が失敗だったのか?

一言でいえば、私が見ていた期間においてだけで言うと、正直、PMIは失敗だったと思います。

では何が悪かったのでしょうか。

一番強く思うのは、親会社自身が、自分たちのやり方が「絶対」と過信しており、自分たちのカルチャーに子会社を「染めなければ」と考えていたことだと思います。

本来は、買収した会社のカルチャーというのは尊重されるべきであり、「良いところを伸ばす(むしろ親会社が見習うこともあっても良いと思う)。さらに改善できる部分は改善していく」というアプローチが必要だと思います。

それを頭ごなしに「いままでのやり方は間違っている」というスタンスでPMIを始めてしまっては、これまでうまくいっていたことも機能しなくなります。

買収された側の自尊心は傷つけられ、まるで地球で幸せに暮らしていたのに突如現れたエイリアンの侵入を許し、捕虜となった地球人はエイリアンの指示に従わない限り命はない、という状況に置かれているようです。

放任国家だって悪くなかったのではないか

私が見ていた限りでは、親会社は最後まで「営業はマイクロマネジメントしてこそだ」という考えが根底にあったと思うのですが、果たしてそれは正しかったのでしょうか。

下記著書の紹介で以前も書いた通り、これからの時代こそむしろ営業は自主性に任せるべきなのかもしれません。

だから、もしかしたら私の2社目の会社の放任国家のほうがむしろ先進的で、親会社の方が後進的だった可能性があるのではないかと思うのです。

私が2社目に入社した当初は、まだこの不穏なPMIはスタートしていなかったのですが、その頃の会社の雰囲気はとても良かったと思います。

外国人セールスが適度に営業をがんばり、きちんと売上を上げ、仲良く談笑し、ときに一緒にランチしたお茶したり。売れない人たちは去っていく厳しさはありましたが、それは結果がでていないから納得の出来事でした。

それに対して、PMI後のカルチャーは日本人の若手営業が増え、全く業績がでていないのに正社員として採用され育てられるものの、力がつく前に転職していく。日々の営業はマイクロマネジメントのための報告業務に追われ、ただつまらない仕事が連続していく。

もともと持っている「会社の良さ」を消してはいけない

もちろん放任国家が必ずしもうまくいくとは言えないですが、この現象を傍からみている立場からすると、私の2社目が創業当初から築き上げてきた「会社の良さ」というのがどんどん失われていっていたように思います。

これはPMIにおいて、一番やってはいけないのではないかなと思います。

買収したら、対象会社の強みを生かし、伸ばしていくべきです。もちろん、買収目的がはっきりしていて「そんなのどうでもいい」というケースもあるかもしれませんが、人材と事業ありきの取引がM&Aですから、基本的にはここを無視してはいけないように思います。

結果的には、元オーナーだった社長は辞め、2番手だったマネジメントも辞めることになりました。

私自身も、「日本企業的なマネジメントをされるんだったら辞め時かな」と思ってその頃に辞めました。

自社の経営方針を絶対だと思わない

振り返ってみると、過去にPMIの失敗例を目の当たりにしていたわけですが、繰り返しになりますが買収した側(買手)は自分たちのやり方が正しいという目で子会社を見ない方が良いと思いました。

そのスタンスは、言葉にしなくても子会社のメンバーにも伝わるし、軋轢を生みます。親会社のカルチャーを「浸透」させてやる、という意向が見えてしまいます。

PMIは Post Merger Integrationですから、「統合」であり、買手が「支配」するのとはまるで違うのです。

今回は私がM&Aに携わる前の実体験を思い返してみて、気づきをまとめてみました。

何かの参考になれば幸いです。


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