ペンギン図鑑 【ショートショート】
私はまったくのうわの空だった。
目の前にいる上司の言葉は、
右から左へ通り抜けていく風と同じだった。
私はただ、
上司のシャツに散らばるペンギンを数えていた。
上を向いたり下を向いたり、
斜めに傾いたりするペンギンの絵柄を
目で捕まえては、
私の架空の籠の中に
ひょいひょい放り込んでいく。
十六羽目、捕獲。
ああもう少し腕を上げてくれれば、
次の一羽を捕まえられるのに。
「ねえきみ、僕の話、聞いてる?」
はっとしてシャツから目を上げると、
じゅっと音がしそうなほどに
上司