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「ジュリエット・ビノシュ」が出演する映画 おすすめの3作品

ジュリエット・ビノシュは1964年生まれのフランスの女優。
「ポンヌフの恋人」「トリコロール青の愛」「存在の耐えられない軽さ」「イングリッシュ・ペイシェント」などの代表作の他、数々の映画に出演しています。

ここではこれらの代表作ではなく「日本ではあまり知られていないけどオススメ」な作品を3つ紹介します。


1. トスカーナの贋作

『トスカーナの贋作』
2010年製作/106分/フランス・イタリア合作
原題:Copie Conforme
監督:アッバス・キアロスタミ

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物語の舞台はイタリア南トスカーナ。この小さな村にイギリス人作家ジェームズが自身の著書『贋作 本物より美しき贋作を』の講演をするために訪れる。地元でギャラリーを経営するフランス人女性(ジュリエット・ビノシュ)はその講演会で彼と出会い物語が始まる。

この物語のテーマは「贋作」だ。

講演でジェームズは言う。

「本物を証明する意味で贋作にも価値がある」

考えれば考えるほど迷路に入る。
贋作の価値とは突き詰めれば何か?本物の価値は真実か?人は贋作と本物を見極めているのか?

「贋作」について議論をかわす二人は、カフェで夫婦に間違えられる。
特段否定もせずカフェの女主人の前で夫婦のふりをしているうちに、二人はまるで本物の夫婦であるかの如く感情を交差させていく。

やがて、映画を見ている我々の方が惑わされ始める。
成り行きで始めた戯れの、そして偽りの会話だったはずなのに、実はこれが真実なのか?(実は彼らは本当の夫婦なのか?)
真実と偽りの境界線がだんだん曖昧になっていく。

「本物を証明する意味でも贋作にも価値がある」

この言葉が意味深だ。二人の関係は最後まで謎めいている。
現実か虚構か、本物か贋作か、鑑賞後に謎と余韻を残す作品だ。


2. 夏時間の庭

『夏時間の庭』
2008年製作/102分/フランス
原題:L'heure D'ete
監督:オリビエ・アサイヤス

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パリ郊外の広く古い邸宅に一人暮らすエレーヌには、独立した三人の子供がいる。彼女は家族がかつて暮らしたこの家と、著名な画家で大伯父のポールが残した絵や美術コレクションを守りながら静かに暮らしている。そして自分の死んだ後は、美術品はオルセー美術館へ寄贈し、家は売却することを望んでいた。

エレーヌは自分がこの世から消え去る時、自分が大切に守ってきたものや「想い」がこの世から消えてなくなることを知っている。

「私が死んだらすべては消えていくのよ」

亡き大伯父ポールとの秘密の関係や彼への想いも自分の死によって葬り去られると静かに感じている。

やがて彼女は死を迎える。
フランスに暮らす長男フレデリックは、想い出の詰まった家や母親の遺品を守っていきたいと願うが、海外に拠点を築いている長女アドリエンヌ(ジュリエット・ビノシュ)と次男ジェレミーは乗り気ではない。
しかし、相続税問題を前に選択の余地はなかった。結局は亡き母の希望通り美術品は美術館に寄与され家は売却されることになる。

こうして想い出のつまった品々と家は家族の手元から離れ、子供達や孫娘であるシルヴィー、邸宅の使用人エロイーズなど関係する人々それぞれの心に「想い」だけが残った。

人には積み重ねてきた「想い」がある。
その「想い」は、継承する側によって形を変え引き継がれていく。
形を変えることで「想い」は生き続けているとも言えるが、いつしか忘れ去られてしまうかもしれない。それはある意味せつない出来事のようにも思えるが、それでも、時の流れと同じようには淡々と引き継がれていくのだ。

ところで、作品中でとても印象に残っているシーンがある。
それは母エレーヌが、自分の誕生日を祝うために久々に集まった子供達を見送るシーンだ。誕生日会がお開きになり、子供とその家族らが慌ただしく自分の生活に帰ってゆく。母親と子供たちでは時間の流れる速度が違う。優先順位も然りだ。それゆえに気持ちもすれ違う。しかたがないことだとわかっていても、エレーヌのさみしくげな表情に胸が締め付けられた。


3. ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン

『ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン』
2007年製作/113分/フランス
原題:Le Voyage du Ballon Rouge
監督:ホウ・シャオシェン

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「悲情城市」のホウ・シャオシェン(侯孝賢)が、普及の名作 アルベール・ラモリス監督の「赤い風船」(1956)にオマージュを捧げ描いた作品。

舞台はパリ。
人形劇師スザンヌ(ジュリエット・ビノシュ)とその息子シモンの日常が描かれる。

瑣末で、でも本人にとっては重要な、うまくいかないあれこれを抱えるスザンヌの日常は淡々と過ぎてゆく。
この淡々と描かれる日常の表現は侯孝賢作品ならではという感がある。
日々の生活に忙殺されるスザンヌだけでなく、その周辺の人々が放つ空気が伝わるのだ。ちょっとうれしいことも、なんとなく悲しいことも、せつなさ、愛情、そして、溜息までも。

ベビーシッターで中国人留学生のソンも、スザンヌとシモンの日常には欠かせない人物だ。いつも同じようにやって来て、いつも同じように仕事をする。
そう、そのことにこそ意味がある。存在感とはそういうものだ。

物語終盤、心に残るセリフがある。
シモンとクラスメート達が美術館で「赤い風船を追う子供の絵」を鑑賞していると、教師が生徒達に尋ねる。

「この絵は悲しい絵?それとも楽しい絵?」 
「両方」 
「どうして?」 
「日向と日陰があるから」

日常も、それと同じだ。

シモンの透き通った横顔や大きな瞳、スザンヌの表情の変化、ソンの落ち着いた優しい声、そして、ゆらゆらと揺れる赤い風船の映像が印象的なこの作品。
何か大きな事件が起きるわけでもない。平凡な、でも当人たちにとってはそれなりに悩み多き日常がとても優しい視点で描かれている。
そしてそれが観る者の心満たす。


4.  昔のブログを読み返してみた

この3つの作品を観たのは随分前だ。
全て映画館で観たのでおおよそ10年以上前という事になる。

これらの作品をもう一度観たくなって、Prime Video やNetflix で探してみたが残念ながらラインナップには入っていなかった。
そこで、映画を観た当時書いていたブログ(映画を見るたびに感想をブログに書いていた)を再読したら、映画の内容が甦えってきた。同時に、その頃の自分を取り巻いていた状況や感情などが思い出され、懐かしいくも複雑な気分になった。あれから10年。少しは成長できたのかしら。

ともあれ、ここで紹介した3つの映画のレビューは、当時書いたブログの文章をリライトしたものだ。そのまま使った箇所もあるが、書き直した箇所の方が多い。そう言う意味ではリライトとは言え、現在の自分の考え方が反映されているのかもしれない。

それにしても、10年以上前と言えばストリーミング配信がなかった頃。にもかかわらず、かなりの数の映画を見ていたことに我ながら感心する。ブログを改めて読み返し、存在を忘れていた数々の名作を思い出したことも収穫かも。

さて、最後に今日のテーマであるジュリエット・ビノシュの作品について。
先日、Prime Video で鑑賞したビノシュ主演の「アクトレス」(2015年)も心に残る良い作品だった。近々レビューを書きたいと思う。

(day5)


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