見出し画像

春の光に照らされて#青ブラ文学部

ほんのりと温かく、冬の間隠れていた花たちが顔を出し始めている。
そんな季節になると、私の心もどこかソワソワしだす。
春は新たな始まりを感じさせながら、過ぎ去った時間を振り返らせる季節だ。

ある日、公園を歩いていた私は、突然、昔の恋人のことを思い出した。
なぜだろう? きっと、春の空気が、あの頃の記憶をくすぐったのかもしれない。あの頃、私たちには、何もかもが輝いて見えていた。

春がもたらすのは、決して暖かな感情だけではない。
でも、その切なさが、時に私たちを成長させる。
過ぎ去った日々を思い出すたびに、私は自分自身と向き合い、新たな自分を見つける旅をしているような気がしてならない。

日々の忙しさに追われながらも、ふとした瞬間に感じる孤独。
家族がいても、友人がいても、自分だけが取り残されたような感覚。
そんなとき、春めく公園のベンチに座り、ひとり空を眺める。
顔をなでるそよ風と静けさが、心の中のざわつきを静めてくれる。

その日も公園にいた。
私はかつての恋人からメールを受け取った。内容は簡単な近況報告だったが、その一文一文から彼の温かさが伝わってくる。
それに対して私が送った返信は、「元気そうで良かった」
ただそれだけだった。それしか言えなかった。

このエピソードを友人に話すと、彼女は大笑いした。
「まだあんたも乙女だったんだ」と。その一言で、私たちは大笑いした。
そう、いくつになっても、心のどこかには乙女心が残っているらしい。
そして、春がくるたびに、その乙女心がくすぐられるのだ。

春めく季節は、私たちにさまざまな感情をもたらす。
孤独や切なさ、迷いや葛藤。でも、それらすべてが私たちを豊かにする。
だから私は、春が来るたびに、心の奥深くで何かが芽生えるのを感じずにはいられない。

それは、新たな始まりへの希望かもしれないし、過去の自分との和解かもしれない。どちらにせよ、春は私たちにとって特別な季節だ。
そして、私は知っている。春が終わり、夏が来れば、また新たな物語が始まる。

季節が変わるごとに、私たちの心も変わり、成長していく。
そんな切なくも美しいサイクルを、私たちは生きているのだから。
春めく季節に、ひとり笑い、ひとり泣いて、私たちはまた一歩、前に進む。それが、どんなに小さな一歩であっても、それは確実に、私たち自身の物語を紡いでいるのだから。


この記事が参加している募集

私の作品紹介

振り返りnote

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?