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みなとせ はる
2021年5月13日 16:56
「愛、そろそろ起きないと遅刻するよ!」お姉ちゃんの声で、私は目を覚ます。何だか、長い夢を見ていた気がする。よく思い出せないけれど、私は夢を見ながら涙を流していたようだ。「お姉ちゃーん、駅まで車で送ってー」時計を見ると、いつも家を出る時間の15分前だった。「そろそろ」どころから、このままでは遅刻してしまう。私は、急いで制服に着替えながら、お姉ちゃんに車を出してとお願いした。「
2021年5月10日 19:13
「別れって、どういうこと……?」私は、その言葉の意味を理解できず、聞き返した。「愛……、ごめんね。私は、あなたのお姉ちゃんではないの」お姉ちゃんは、美しく整った顔を少しも歪めることなく、透き通った瞳で私を見つめて言った。「意味分かんない。そんなわけないよ。 お母さんは違うかもしれないけど、私達は姉妹だよ。私が小さい頃から、ずっと一緒にいたじゃない。怖い夢を見たら、いつも隣で寝てくれ
2021年5月12日 01:43
「──そうよ、愛。怒って。私を憎んで」お姉ちゃんのその言葉を聞いて、私は自分が眉間に力を込めて、涙を流しながらお姉ちゃんを睨(にら)みつけていることに気が付いた。「これまでの古い枝を折り、この新しい枝を挿せば、あなたの記憶から私は消える。元から、今の家族と幸せに暮らしていた。そういうあなたになれるわ」「嫌だ! 私は、お姉ちゃんを忘れない。菜佳だって、忘れるわけないよ!」「あなたの『
2021年5月8日 19:40
次の日の朝、自席で本を読んでいた私の元に、菜佳が駆け寄ってきた。「愛、聞いて! 昨日は、夢に鬼が出てこなかったの! しかも、なんだか懐かしい、楽しい夢を見た気がするんだよね。どんな夢か思い出せないんだけど。やっと鬼に追いかけられる夢から開放されたよ! やったー!」菜佳は一気に話すと、大きく万歳して、本心から安堵している様だった。「菜佳、よかったね。お姉ちゃんの悪夢祓いは、すごいでしょう
2021年5月6日 15:53
ゆったりとしたピアノが、ドラムとバスのリズムの上にジャズのメロディーを奏でる。目を開けると、お姉ちゃんの飲みかけの紅茶に、飴色のライトが映っていた。私は、元の世界に戻ってきたのだ。隣に座るお姉ちゃんは、私の方を見て微笑んでいた。「ん……」眠っていた菜佳が目を覚す。「わ、いつの間にか寝ちゃってた。ごめんなさい」「菜佳さん、気分はどう?」「うーん、何だかいい気持ち。お姉さ
2021年5月3日 00:20
「菜佳ちゃん、みて。私は、パンダにみえるよ」私がそういって天井を指差すと、小さな菜佳はやっと顔を上げた。「パンダちゃん?」「そう。パンダは目の周りが黒いでしょ? それに耳も」本当は、パンダというには苦しいけれど、茶色の濃い場所はパンダのタレ目に、鬼の角(つの)にも見える木目も(少し長めの)パンダの耳に見えなくもない。「それに、あっちには蝶々が飛んでる!」パンダの様に見える(
2021年5月4日 02:38
お姉ちゃんと繋いでいる手が、じっとりする。これは、私の汗だ。私の不安に気付いたお姉ちゃんは、少し顔を傾けて私の目を覗き込んだ。「大丈夫よ。他の原因を探そう」お姉ちゃんの前髪がサラリと揺れて、瞳に光が見えた気がした。お姉ちゃんが私の髪を優しく撫でると、不思議と恐怖が和らぐ。お姉ちゃんを、信じていいんだ。そう思った途端に、涙腺が緩んしまう気がして、私はもう一度気を引き締めた。「