みなみしま

横浜美術館/東京芸大修了/これぽーと主宰/旅する批評誌「ロカスト」編集部/美術手帖、文…

みなみしま

横浜美術館/東京芸大修了/これぽーと主宰/旅する批評誌「ロカスト」編集部/美術手帖、文春オンラインなど寄稿。

マガジン

  • 800

    校閲に主眼をおいた展覧会レビュー集

最近の記事

いつかの日記

スーパーで真鯛が600円で売っていたので、買って帰る。アルミホイルの油をしいて、焼いて食べる。ほうれん草とベーコンの炒め物に目玉焼きを載せた副菜もおいしい。食後は、ベッドに横になると眠くなってしまうので、足踏みをしながら、体を起こす。デスクのうえの郵便物をかき分けて、スペースを作り、パソコンをおいて、デスクトップに接続する。ツイッターのタイムラインでの告知が錯綜しているので、整理する。昨日買ってきた柿の種のパックとカルピスを飲む。『徹底討議 二〇世紀の思想・文学・芸術』をまた

    • 憂鬱なあなたへ 第1回 モランディの虚像

      モランディの絵を見ていると、何か喪われているという感覚を覚える。不思議なことだ。そこに描かれているものよりも、そこに描かれていないものが目に入ってくる。ただ、それは無とは似て非なるものである。何かが喪われているという感覚は、何かで満ちていることの裏返しでもあるからだ。つまり見えないものが詰まっていることの発見が、喪失感によって明らかとなる。この充填の感覚は、彫刻史の伝統から引き出されてくるものだ。20世紀の彫刻の革新は、自らを規定する実体的なボリュームを虚像化することにあった

      • みなさんの雪の日の思い出

        はじめまして。おいしい午乳(ごにゅう)と申します。いつもみなみしまさんの活動を陰ながら応援させて頂いております。私の雪の日の思い出なのですが、小6の頃くらいのことだったように思うのですが、お正月の三ヶ日に近所の氏神様にお詣りに行ったら、沢山のおみくじが結ばれた寒椿の根元のところに、何故か蝉の死骸が転がっていたという出来事がありました。雪の白さと、椿の紅、そこに添えられた灰色の蝉の死骸。なんとも言えない気持ちになった私は、死骸にそっと雪をかけて心ばかりのお墓を作り、その場から去

        • 水玉の坊と道の出会い

          水玉の坊が歩いていると、舗装されていない道に出会った。 彼は、「姉妹がいる」とだけ言って、去ってしまった。ひとり残された水玉の坊は、履いていたサンダルにぽつりぽつりと落ちては跳ねる、泥水をじっと見つめていた。どこから降ってきたものだろう。傘をさしていないから、雨が降っていたとしたら、その雨の雫に違いない。 雨は降っていない。さっきまであったあの道は、すっかり乾ききった黄色い大地に変わっていた。彼に姉妹がいるとしたら、ひとりは土砂降りの雨の中を駆け回っていて、もうひとりはも

        いつかの日記

        マガジン

        • 800
          6本

        記事

          24時間アートラジオについて

          12月29日正午から30日正午まで、みなみしまのツイッターのスペース上で開催される「24時間アートラジオ」の公式サイトです。(随時更新) まずは、当日は以下よりラジオをお聞きください。通知登録をすると、開始とともに通知されるのでは、分かりやすいです。 https://twitter.com/i/spaces/1eaKbgonAmjGX?s=20 次は番組表です。 ★リスナーの皆様の声を募集します。 本日から当日までにお便りを送ってください。お便りの方法は2つです。

          24時間アートラジオについて

          豊島美術館と心臓音のアーカイブ2016

          ようやく山を越え、下りの中腹まで来たところで、視界が開けた。海まではるか遠く見渡せる場所に豊島美術館は立っているとは到底言い難い。それは緑爽やかな地面に埋まっている。エントランスからは風の通る林の中に慎ましい豪族らの古墳のような、乳白色の流線体が見えるだけである。この豊島美術館も横尾館と同様に一般に建築と呼ばれる類のものではないだろう。モダニズム建築とも強烈な個性を持つ作家による芸術作品とも異なる、やはり豊島の自然との合作であると言えば適切である様な、停滞を恐れない空間を形成

          豊島美術館と心臓音のアーカイブ2016

          日記:11月18日

          恵比寿でナディッフを物色。布施くんの『涙のカタログ』を立ち読み。そうか、これはカタログだったのか(「カタログ」とは何たるかはあとがきで言及されている)。お茶する方いたら、とツイートしたら、多摩美の森川さんが来るとのこと。六本木で南谷理加「黙劇」展を見てから、合流。星乃珈琲店で2時間ほど話す。今年は美学校にも通っているらしい。ちょうどぼくも12月に美学校のゲスト講師をする予定だったので、昨今の美術批評とか新芸術校のあとのオルタナティブスクールの状況についても話す。それにしても、

          日記:11月18日

          20231027

          Kindle unlimitedで科学書と地政学の新書を読む。ぼくには電子書籍の方が読むのが捗るタイプの本があって、科学系と政治系はそれにあてはまる。文章ではなく、情報を入手することに特化して読んでいるからだと思う。文体やレトリックを読むのに、電子書籍は向いていない。そこにあるのは、どこまでいっても「情報」としか言いようのないテキストだからだ。もちろん、優良な科学書にも政治思想の本にも、情報以上のものがあることは言うまでもないが、情報としても摂取できることもまた事実である。そ

          日記20231009

          午前は毛布に包まり過ぎる。肌寒い。お昼は食べずに新宿の紀伊国屋へ。今野真二『「鬱屈」の時代を読む』、「新潮」最新号を買う。新潮は宮﨑 裕助さんの東浩紀論(『存在論的、郵便的』、『訂正可能性の哲学』)を読む。恵比寿に移動。アトレのつばめグリルが空いていたので、久しぶりにハンブルグハンバーグを食べる。その後、東京都写真美術館で「風景論以後」とコレクション展を見る。風景映画、特に「略称・連続射殺魔」がよかった。成城石井でコンテ16か月熟成を買い、帰宅。ツタヤで借りた「名探偵コナン

          20231005

          眠いが起きる。「卒論指導」の連絡は来ていない。最近、ツイッターでの反応がなんとなく薄い気がするけど、個人的な発信の問題かもしれない。出勤。退勤。これぽーとの編集を進める。ほか原稿類は編集者の返信待ちなので、一瞬の〆切ありの宿題はない状態。「アート・ジャーナリズムの夜」の書籍化が遅れに遅れているので、ちまちまと原稿を進める。ほかインプットと新しい企画を考えたい。来年は美術館の紀要に書くことが見えてきたので、1万字ほどの論文を書けるように準備する。展覧企画について、モノが必要な

          中谷優希「ふわふわの毛をむしる」展レビュー完成/完成までのプロセス公開

          タイトル:交差する身体たちに手をのばして 執筆者:pegさん  絵画のまえで私は目だけになる。画家が立っていた場所にいて、彼らの視線を追体験するように目に意識を集中させていると、私は身体のことをすっかり忘れてしまうのだ。  中谷優希の個展「ふわふわの毛をむしる」を見た。大きく開いたガラス戸からは気持ちのいい風が吹き込み、併設のカフェからはコーヒーのいい匂いが漂ってくる。床に敷かれたゴザの上にはクッションが並べられ、入口で渡されたフィジェット・トイで手遊びをしながら作品を鑑賞

          中谷優希「ふわふわの毛をむしる」展レビュー完成/完成までのプロセス公開

          夏休みをとる

          なんとなくツイッターを眺めていたら、知り合いも関わっている前衛写真の展覧会が新潟市美術館に巡回していて、まだ見れていなかったので、交通費などを調べ始めた。そしたら、東京からだと1万円ほどで行けることが少し意外で、さくっと夏休みをとって行ってみることにした。 新潟といえば、海というイメージがある。小学生の頃は、祖母の実家が新潟にあったから、お墓参りのついでに柏崎あたりで海水浴をするのが夏休みの旅行の決まりだった。あと、あれは夏だったか思い出せないけど、糸魚川沿いの旅館にも泊っ

          夏休みをとる

          自由に書いてみた。あと書籍化の呼び掛けです。

          最近は〆切に追われたり、追い越されてたりしている文章の内容を考えるばかりで、煮詰まってきたので、なんの目的もなく書いてみたい。 ツイッターが鳥からXになった。どうでもいいと思った。なぜなら、自分がツイッターであって、ツイッターはツイッターではないから。ツイートしようとして、ものすごく理解されなさそうだったので、やめる。昔、ある批評家が、インターネットがデータベースではないのです。データベースになる人間がいるだけです。と言ったことを聞いたことがあるけれど、まさしくそうい

          自由に書いてみた。あと書籍化の呼び掛けです。

          新企画800―原稿と編集「さばかれえぬ私へ」展のレビュー

          今回は第一弾として、レビューへの最初の編集を終えた原稿を公開します。以下のリンクよりご覧ください。 つづく。 文責:みなみしま

          新企画800―原稿と編集「さばかれえぬ私へ」展のレビュー

          日記抄2023

          6月30日 仕事。帰りにジャケットを新調。回転寿司で鮪の10貫盛り食べる。次号のアートコレクターズのレビュー初稿、編集者よりコメント返ってくる。漫画美術史シリーズ、南方熊楠をブックオフで買い、読了。 7月1日 朝イチで洗濯物。ホットサンドを作る。午後は下北沢で古着物色、カラフルなシャツ購入。紀伊国屋書店で成相さんの新刊など購入。ワタリウム地下でのKOURYOU個展トーク配信される。ハロービーでの12時間トークを途切れ途切れで見る。 7月2日 格闘技のYouTubeを見る。

          再起動するアート・ジャーナリズムの夜

          再起動するアート・ジャーナリズムの夜