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水玉の坊と道の出会い

水玉の坊が歩いていると、舗装されていない道に出会った。

彼は、「姉妹がいる」とだけ言って、去ってしまった。ひとり残された水玉の坊は、履いていたサンダルにぽつりぽつりと落ちては跳ねる、泥水をじっと見つめていた。どこから降ってきたものだろう。傘をさしていないから、雨が降っていたとしたら、その雨の雫に違いない。

雨は降っていない。さっきまであったあの道は、すっかり乾ききった黄色い大地に変わっていた。彼に姉妹がいるとしたら、ひとりは土砂降りの雨の中を駆け回っていて、もうひとりはもう何か月も雨の降っていない砂地に立っている。水玉の坊が覗き込んだ単眼鏡は、姉妹の姿を交互に映し出しても、たがいに焦点を結ぶことはなかった。

姉妹の間には手紙のやりとりだけがあった。ただし身の上ではなく、大文字の歴史だけが記されていた。ふたつの国史が編纂された往復書簡は、スコットランドの湖水地帯に沈められたという噂がある。どの国にも属したことがない水玉の坊は、ただ歩くことを生業としていた。生きることは歩くことだった。いずれ、手紙のもとにたどり着くはずだと思っていた。

道は至る所に見つかった。嬉しくなった水玉の坊は、サンダルを脱ぎ捨てて、裸足になって走っていった。日付がもう少しで変わる頃になって、空が晴れていたことに気が付いた。指と指の隙間からは、恒星が瞬いた。頭と足は上下反転して、水玉の坊は道を転がり落ちていった。坊が転がれば、そこが坂となった。

まだ夜は明けていない。ポケットに小さく折り畳んでいた手紙は砂だらけになっていた。スコットランドから届いた手紙。光はあれど、いっこうに水玉の坊は文字を読み進めることができなかった。文字が灼けてしまうから。

水玉の坊は、またあの舗装されていない道に出会った。「姉妹がいる」と言っていたあの道は、あのときと同じようにそこにあった。光はなく、星もない。しゃがみこんで、指先で線を引いた。線と線は混じり合い、曲線となり、ある空白を地面に作り出した。円に囲まれた地面にだけ、足跡が見える。古い遊びのように足跡が飛び上がると、粉塵が舞う。足跡は4つだけ、

水玉の坊は立ち上がって、どこかへ去っていってしまった。


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