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#これが私の移住生活 case2.南三陸で「唯一無二の人生を」 榊拳秀


実家の神社を継ぐために修行へ
2021年に南三陸へUターン

私はもともと南三陸町の出身で、実家が入谷八幡神社なんです。高校を卒業してから、町を離れて、神職の資格を取るために養成所(志波彦神社・鹽竈神社神職養成所)に入所しました。毎朝5時前に起床して1日が始まります(苦笑) 神主さんに同行して実習をしたり、座学を受けたりして、2年間の修行の末、神職の資格を取得しました。養成所卒業の年に、南三陸町に戻ろうかなと考えたんですが、他の神社で勉強して実家の神社に生かしたいという思いもあって、一旦町外の神社に就職することを決めたんです。その時に誘ってくれたのが、二柱神社の宮司さん。私のことを昔から知ってくれていたんです。毎年、宮城県の神主さんで、1月の大寒の日に海に入る大寒禊っていう行事があるんですよ。本当だったら20歳以上の神主さんしか参加できないんですけど、祖父と母が、私が小学1年生のころから連れて行っていて(笑) 大人の中に小さい子供が1人いるから、たくさんの神主さんに気にかけてもらっていたんです。その中の1人が、二柱神社の宮司さんでした。そこで、6年勤めて、2021年の4月に南三陸町に戻ってきました。

入社時からの付き合いの二柱神社の仲間に、退職祝いをしてもらいました。

入谷八幡神社で宮司として働く

宮司だった祖父の体調が悪くなったので、後を継ぐために南三陸町に戻ってきました。2020年の秋に結婚したので、戻ってくるのにいいタイミングだったと思います。町外にいたときも、実家の神社のお祭りや地鎮祭、お祓いなどは奉仕していましたが、自分が宮司になったら今までとは別物ですね。社務(ご祈祷やお守りの授与、御朱印を書くなど)や境内の管理、宮城県の無形文化財に指定されている入谷打囃子の会議など、神社と地域で連携して行う行事にも積極的に参加しています。あとは、各県にある神道青年協議会で本吉地区の支部の理事を任されているので、その活動もありますね。宮城野雅楽会で篳篥(ひちりき)という楽器を担当していて、演奏会に出ることもあります。神社の仕事や境内の管理は家族も手伝ってくれますが、この町にUターンして、後を継いだので、自分がやらないといけないという覚悟とか、責任感は戻ってくる前と全然違いますね。

私の実家の入谷八幡神社です。社殿前にはオクトパス君がいます。

もう一つの顔、クリエイターとしての挑戦

祖父もそうなんですけど、代々私の神社の宮司は、神主とそれ以外の別の仕事をやっていたんですね。私としても神社の仕事だけだと、自分の可能性が伸びないかなという思いがあって、町内で仕事を探そうとしていました。そんなタイミングで、今勤めている、株式会社はなぶさの求人募集を知りました。はなぶさは映像制作や写真撮影、WEB制作を行なっている会社です。はなぶさで得た知識や技術を神社の仕事にも活かせるという思いと、神社が発展していけば地域も発展していくという思いから、はなぶさの採用面接を受けました。
2021年4月から、はなぶさでクリエイターとして働いています。主に、映像編集やWEBサイト構築、商品写真撮影などを行なっています。カメラで写真を撮ることやパソコン操作はもともと好きでしたが、それは趣味の範囲内。専門的な知識があるわけではありませんでした。はなぶさに入って、撮影機材や撮影方法、WEBサイト構築の仕方など、ゼロから教えてもらいながら仕事をこなしています。今まで趣味でやっていたことが仕事になったので、作業の効率化であったり、専門知識についての勉強であったり、まだまだ努力して学んでいかないといけないことはたくさんありますね。でもその分、新しいことを学べるのは楽しいですし、やりがいをもって仕事をしています。

森の中での撮影。これをきっかけにカメラにどっぷりハマります。

自分で挽いた珈琲でほっと一息つく時間も

珈琲豆を買ってきて、挽いて、自分で飲んだり、友達に振舞ったりすることにハマっています。珈琲がもともと好きで、いろいろな種類の豆を買って、「今日はこれにしようかな」「今日はあっさり目の気分だな」とか、その日の気分に合わせ淹れています。朝とか昼とか、夜だったらカフェインレスにしたりとか、1日に何回か飲みますね。もともと市販の珈琲もよく飲んでいたんですけど、自分で挽くようになったら、自分の好きな味が試せるので、楽しいんです。手間はかかるんですけど、豆を挽いたり、珈琲を淹れることが、ゆっくりできる時間にもなっています

自前のこだわり珈琲セット。毎日これで珈琲を淹れてます!

新米パパとして、子育てにも積極的

2022年の5月に第一子が生まれました。子育ては、初めてでわからないことも、大変なことも多いんですけど、何より子供がかわいい(笑) なので、苦じゃないんですよね。私はお風呂に入れる担当なんですけど、お風呂が好きみたいで、身体を洗ってあげるとにこにこしていて。その時間も楽しいですね。
子供が生まれることがわかったとき、実家が神社ということもあって、本当にたくさんの人から「おめでとう」って言ってもらったんです。地域の人たちがたくさんのお祝いの言葉をくれたことや自分のことのように嬉しく思ってくれることは、頑張る原動力になりますよね。このもらった気持ちは、自分の活動や頑張る姿勢を見せて、返していきたいなと思っています。

子どもの成長が日々の楽しみ。とにかく可愛い!!

南三陸で「唯一無二の人生を」

実は私は、小さい頃すごく活発な子だったんです。遊んでいるはずみで、自分の家の窓ガラスのみならず、友達の家や幼稚園の窓ガラスを割って、いろんな大人たちを心配させることがありました(笑) 20年以上も前のことなんですけど、周りはみんな覚えているんですよ。だから、結婚して神社を継ぐために戻ってきたときや、子供が生まれたって報告したときには「あの拳秀が立派になって…」と驚かれます。
一度町外に出たからこそ、この町の人の繋がりやあたたかみは、都会では得られない、かけがえのないものだと再認識しました。繋がりがありすぎて、噂が回るのも早いんですけどね(笑)
神主でありながらクリエイターというかけ離れた職種に就くことも、みんなが受け入れてくれて、応援してくれるので、本当にありがたいです。「ちゃんとやってるか?」とか「頑張れよ!」って、会うたびに声をかけてくれるんです。南三陸は人の挑戦に寛大で、見守ってくれる人がたくさんいるから、期待に応えられる人間になりたいですし、応援してくれた分恩返ししていきたいと思っています。南三陸で、私にしかできない唯一無二のことを極めて、地域に貢献できるように、これからも精進し続けないといけませんね。