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『✕○!i』第37話「光るなら」
貸コンテナの一件から数日が過ぎ、
暦は四つを迎える。
私立普通学園入寮まであとわずか。
早い人達。
清夜花さんはもう入寮を済ませて、
生活しているはず。
あたしは寮生活の支度を順調に終えていく。
普通学園には大原則があります。
それは、
自由な校風です。
ですから逆に服装には悩む。
普通学園には指定の制服がない為です。
それでも、
お父さんの言葉でそれは解消されます
『✕○!i』第36話「はじまりのとびら」
暗闇の向こう側。
捧華が、
笑んでくれているのが伝わってきます。
伝わるほど痛く、
……辛い。
でもな捧華。
出逢い産まれた生命が、
理不尽に他者に踏み躙られるくらいなら、
僕も鬼になれる。
左腕から左手までそつなくそろえ……、払う。
空気をゆらりと斬り裂く震えで、
捧華は瞬刻、
強張り、身構えさえ揺れる。
「……お……お父さんなんですか!? びっくりするじゃな……い
『✕○!i』第35話「世界の終わり」
着いた場所は、
町中の貸コンテナです。
今日この日の為。
そして、
捧華がベースを心地よく弾く為に、
以前から探しあてていました。
しかし捧華は寮生活に入る。
ですから、
今日この日の為の、
心の修練の場所です。
………………
…………
……
扉を開けると、
コンテナ独特の匂いがする。
僕は、
捧華に先に入る様に促します。
捧華が入り、
僕も続いて、
内側か
『✕○!i』第34話「世界が終わる夜に」
必要なこととはいえ、自分語りが過ぎた。
閑話休題、再び捧華との一夜へ戻る。
市営住宅の辺りは、
もう夜が降りている。
虫さんや様々な生き物さん達の、
オーケストラを聴きながら、
“壁”を巡らす為に思う。
“第四の壁”は、僕には恒常的なものです。
ですから、“壁”の向こう側を常に意識する。
こと創作に関しても、非常に便利な能力です。
3月ももう終わる。
4月には、
愛娘は社
『✕○!i』第33話「憎しみに満ちた愛」
パァンッ!!!!
案の定、第四の壁を再び行使した途端、
倖子君の平手打ちを左頬にくらいました。
だけど、左頬の痛みが些細なくらい、
僕の心は良心の呵責による責苦に苛まれている。
「あんたなんか、はやく死ねばいいのにっ!」
「うん、そうだね」
僕が死んでしまえば、倖子君をこんなにイラつかせる事もない。
どうして僕は倖子君を解放する事ができないのだろう……。
もちろん、彼女が
『✕○!i』第32話「Re:Re:」
ふたたび、僕、早水心也について、
神代学園長のご訪問から一夜明けて、
僕に、顕著に覚えられる変化はない。
記憶自体が入れ替わってしまっているのなら、
どの道僕には手の施しようがないし、
催眠とは、日々のごくありふれた場所に、いくらでも存在する。
これを不安に思う事は、未来が分からないから何もしない、
そう選択し続ける事とあまり変わらないだろう。
僕にとって不安なのは、むしろ昨
『✕○!i』第31話「リローデッド」
それは、そのお方は、魂の双子も、捧華も居ないときに訪れた。
僭越、早水心也の余談になります。
僕にとって月曜日は、他の曜日に比べてゆったりできる日です。
倖子君が台所に居て、彼女の忙しなさのない所作を、
すりガラスをはさんでぼんやり眺められる事に、
ほんの微かな小石を、
心象の池に投げ込まれた程度の波紋の心地好さを感じています。
こんな時間が永遠に続けばいいのに……。
僕
『✕○!i』第30話「世界の果てまで」
ご本を……、
読み……終えました。
あたしはお父さんが大好きだから、
ひいきしちゃってるのかなぁ……?
あたし、
お父さんのご本が大好きっ。
いつもいっつも、
そう想ってしまう。
お父さんは喫煙するからお口が煙草臭いとか。
お部屋ではなぜかトランクス一枚とか。
お出掛けの服装がひとり浮いてるとか。
どうでも良くなっちゃうくらい、
大好きになっちゃうんです。
あたしは
『✕○!i』第29話「しあわせはここにあります」
それは、
はじまりがおわりを司り。
おわりがはじまりを告げる。
ふしぎなおはなしです。
ちいさなおんなのこは、
ひろいみどりのそうげんを、
やさしくなでる風のように、
ふきぬけていくように、
すがすがしく魔王に告げました。
「わたしめのなまえは、タイガーリリィです」
とりさんいちわ。
いちわでいっぱい。
手と手つないで、
かんぱいに、かんぱいです。
あの絵は魔王
『✕○!i』第28話「君と歩きたい」
みまもりの塔の魔王に、
ちいさな夢ができました。
君に出逢うまえには、
みることさえゆるされなかった夢が。
ずっとあきらめつづけた夢が。
人々をまとめるにはルール。
ちつじょがひつようなんです。
魔王はそのために、
きょうふのすべをおぼえていました。
まおうはそんな愛しかしめせませんでした。
塔で生きることをえらぶものには、
きょうふでのしはいを。
魔王をおそれぬ勇
『✕○!i』第27話「懐かしい宇宙」
ふたりはふたり、でもひとり。
オカシイね?
ひとつがふたつにわかたれる。
そのいたみがおしえてくれます。
ふたりはともに生きていることを。
ふたりでひとり。
だれにだっているはずだよ?
魂のふたごが。
とんで……とんで……とんで……とびつづける……、
はるかにほし。
くおんにかなた。
きかがくにまほうを。
げんしょにかがくを。
宇宙をとぶふたり。
ぎんがのうみには
『✕○!i』第24話「浪漫飛行」
とぶために人々は、
どれほどしついにおちたことでしょう?
ちいさなおんなのこは、
そのめに、
おおきくおみずをためていいます。
「のらないよっ! そんなおふねになんかっ!」
「……どうしてだい?」
魔王の声はすこしふるえているようです。
ちいさなおんなのこはさらにいいます。
「……なんで、おんなじ命に、びょうどうにえらぶことをゆるしてくれないの?」
魔王はいいます。
「う
『✕○!i』第25話「嗚呼、僕のちっぽけな少女よ」
だれかさんには、
ちきゅうじゃないところかも。
まただれかさんには、
がっこうのかたすみでみつけた、
ふるびたいっさつのご本ほんかも。
さらにつづけて、
いとしいいとしいむすめに、
たよりないおとうさんが、
がんばってかいた【せかい】なのかも、
だれにもわかりません。
ですから、
あなたの【せかい】は、
あなたじしんの手でつくってください。
………………
…………
『✕○!i』第24話「花かんむり」
あたしはマニとの演奏を終えて、
3時のおやつを食べる。
本日は、お醤油の厚焼き煎餅。
お母さんとともに、
キッチンすぐそばのテーブルについて、
お話しを楽しんでいる。
「お母さん? このお煎餅とっても美味しいのです。いつも有難う」
お母さんはにやり。その表情には何処か、してやったりが見え隠れ。
「だろぉん♪ ふふふ私の眼に狂いはない。よく噛んでお食べ?」
あたしはお煎餅を食べ