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『✕○!i』第24話「花かんむり」

 あたしはマニとの演奏を終えて、

3時のおやつを食べる。

本日は、お醤油の厚焼き煎餅。

お母さんとともに、

キッチンすぐそばのテーブルについて、

お話しを楽しんでいる。

「お母さん? このお煎餅とっても美味しいのです。いつも有難う」

 お母さんはにやり。その表情には何処か、してやったりが見え隠れ。

「だろぉん♪ ふふふ私の眼に狂いはない。よく噛んでお食べ?」

あたしはお煎餅を食べる度に想う事を口にする。

「捧華は西洋菓子も好きですが、この厚焼き煎餅の無骨しかして洗練。“質実剛健”を想うと、日本の素晴らしさを想う事しきりですよ」

 ちょっと吹き出すお母さん。

え……今格好いい事言いましたよねあたし?

「あなたは一体幾つのお人だよ? でも私は嬉しいかな。そうだね。お煎餅って日本を体現する、誇りを持てるお菓子のひとつだね」

 そうお母さんと会話を楽しんでいると、

お父さんが、

自室から出て来てあたし達に、

「できました」と告げた。

 あたしはニコぱっ☆

できました。

つまり、

お父さんのご本の新作です。

「お父さん? 今回のご本は、どんな感じのお話なのですか?」

 お父さんは、

きっとあたしが興味を持ち易い様に言葉を考えてくれている。

「……小さな魔王様に立ち向かう、小さいけれど、とても賢い女の子のお話です」

 すかさずお母さんに、

お願いの目線を送ってしまう。

お母さんは右手をひらひらさせて、

「良いよ」

 これであたしは、

お父さんのご本の最初の読者になれた♪

 お父さんは優しげに、

「捧華、有難うな?」

右手であたしの髪を愛してくれて、

左手でご本を渡してくれました。

その声音の優しさは、

何処からやって来たものなのでしょう……。

「その代わり倖子お母さんは、今から僕が独り占めです」

 お母さんはおもむろに、

「そう言えば、今日はスーパーの特売日だ。バカだんな様と行ってこようかしら?」

少し恥ずかしそうにそう言う。

 お父さんはその言葉を承り、

「お仕えいたします♪」と、

姫君に恭しく接する。

 それでもそれから、

ふたりは口酸っぱく言ってくる。

「誰か来ても出ちゃだめよ? 鐘の音みっつで私達だからね?」

あたしを……まだ子供扱いする。

………………
…………
……

 あたしは、

お部屋でゆったりとしながら、

ご本の表紙をまず拝見。

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        OTOIROEHON

    ♪Happiness is here♬~しあわせはここにあります~

  

 
      もじ こひなた いろえ じょにー

         げんさく みんな

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………………
…………
……

 それから表紙をさらりとめくり、

物語の始まりです。

………………
…………
……

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「その花かんむりは、あなたのものです」




                    おしまい

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………………
…………
……

 ……おや?

物語は始まりの頁で

終わってしまっている。

ん? どうゆうことかしら?



 しあわせはどこ?
わたしのこころにたずねてみる。
おわりははじまりのためにはじまりはおわりのためにある。

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