『✕○!i』第25話「嗚呼、僕のちっぽけな少女よ」
だれかさんには、
ちきゅうじゃないところかも。
まただれかさんには、
がっこうのかたすみでみつけた、
ふるびたいっさつのご本ほんかも。
さらにつづけて、
いとしいいとしいむすめに、
たよりないおとうさんが、
がんばってかいた【せかい】なのかも、
だれにもわかりません。
ですから、
あなたの【せかい】は、
あなたじしんの手でつくってください。
………………
…………
……
ここは、みまもりの塔。
塔というのは、
ながいながいいっぽんのえんぴつを、
たてにまっすぐにたてたようなかたちを、
そうぞうしてください。
人はふしぎと、
そんな塔のなかでせいかつをしているのです。
みんながみんな、
たいせつな命をふるわせて。
みまもりの塔に、魔王あり。
魔王とはこわくてつよい王さまのことです。
人は、人々は魔王をおそれていました。
こわくてつよいものにはみんな、
どうしてもきょうふをいだいてしまうものなのです。
魔王は人々を、
きょうふでしはいしています。
人はみんなじゆうなのに。
鳥さんのようにうたってはばたけるのに。
塔の人々は、それぞれにかんがえて、
塔でせいかつをしていくために、
魔王へのみつぎものをおくることにしました。
ずっとみつぎもの、
きのうもみつぎもの、
あしたもきっとみつぎもの。
そんなきょう。
魔王はけげん、
「この……かおりは……どうした?」
こわくてくらいひくい声。
魔王のおおきなおへやには、
ふしぎなお花のかおり。
かおりをたどると、
ささげる手。
お花のもちぬしは、
ちいさなおんなのこでした。
ちいさなおんなのこはいいました。
「まおうさまーいつもおしごとごくろうさま♪」
人々は、
魔王へのれいぎ、
ごあいさつのなっていない、
ちいさなおんなのこに、
きょうふとあわれみ、
さげすみとみはなしのめをやりました。
【このよのはて】にいきたくないために。
魔王は人々を、
きょうふでだまらせてしまいます。
「われに……まかせよ。このものを……このよのはてへ」
すごくこわくてとってもひくい声。
人々はそれぞれにかんがえても、
だれもちいさなおんなのこをたすけずに、
「かわいそうなこ……」
そんなことばがちいさなおんなのこに、
ぽつんとなげられました。
しかし、
ちいさなおんなのこはまっすぐに、
「それはいちばんだれがかわいそうなの?」
ことばは人々にはとどきませんでした。
………………
…………
……
塔のそとは、
【このよのはて】とよばれていました。
草木もはえない。
大地のめぐみもないじめんを、
ちいさなおんなのこはあるきつかれ、
ちいさなおんなのこはかれ木にもたれます。
ちいさなおんなのこはおなかもへっていました。
それでもちいさなおんなのこはあきらめません。
【このよのはて】においだされるまえに、
やっともちだせたパンのみみをかじります。
「わたしはパンを……命をたべた。だから、がんばってまえにすすむんだ」
そのみみを、
いえ、
ちいさなおんなのこのみみです。
はむはむ
「ひゃっ!?」
おんなのこはふらふらしてから、
しりもちをぺったんことついてしまいました。
まわりをみわたすと、
ちいさなおんなのこのうえに、
さらにちいさなおとこのこがういていました。
「わあ♡」
笑顔はおおきいちいさなおんなのこです。
「あなたはだぁれ? ようせいさん? ……でもね? 知ってるよ?」
ふたりはめをあわせて、
笑顔になります。
「そう……魔王だよ♪」
ちいさなおとこのこのあかるい声。
「やっぱり♪」
ちいさなおんなのこもまけじと声がはずみます。
「どうしてわかったの?」
ちいさな魔王は、
ちいさなおんなのこにたずねます。
ちいさなおんなのこは、
おなかはへっていてもげんきをだして、
「だって、おひさまがあってかげができるの。すごくこわくてくらいだけの人なんて、かわいそうだよ」
魔王はすこしうつむいて、
「やさしいなぁ」といいました。
ちいさなおんなのこは、
えっへんとむねをはり、
「それはあなたをほめてるの?」
ふたつの笑顔が
ふたたびかさなりました。
「とつぜんですが、貴女にふたつききたいことがあります」
まおうにとってはいつものしつもん。
「まってました♪」
ちいさなおんなのこは、
しんじていたことがむくわれて、
なんでもこいとむかえうち。
「や……やるな?」
いっぽんとられた、
みまもりの塔のあるじ。
ここは……、
………………
…………
……
しきりなおしということで、
こほんっ。
「それでは? うまさん、くじゃくさん、とらさん、ひつじさんがいて、ほしのおわるひに、たすかるためのほしのふねにのっていただく、たったひとつのおあいてだぁれ?」
………………
…………
……
すべての生命はものがたり。
みんな生きていて、
どれもかなしくあたたかなものがたりです。
あなたはあなたをしんじてください。
だれになにをいわれても、
さいごにあなたをうごかすのは、
きっとあなたなのですから。
しんあいなるあにきへ。
ぼくはあなたにかんしゃしてもしきれません。
おんがえしはたったひとつ、ぼくもがんばっていきます。
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