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美術館、博物館、展覧会、旅、アウトドア、読書、映画、美味しいもの、考えたことの記録。好…

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美術館、博物館、展覧会、旅、アウトドア、読書、映画、美味しいもの、考えたことの記録。好きなもの、大切なものなども。

最近の記事

パナソニック汐留美術館『フランク・ロイド・ライトー世界を結ぶ建築』、帝国ホテル、山の上ホテル

「門外漢の私でもさすがに名前を知ってる建築家」といえば日本人だと隈研吾、安藤忠雄、黒川紀章、坂茂。外国人だったらル・コルビュジェ、名言の人(ミース・ファン・デル・ローエ)、そしてフランク・ロイド・ライト。 数年前に、東京は池袋の自由学園明日館に行った。無駄なくすっきりと美しく、しかし窮屈さはない。こんな環境の中で学ぶ子供はどんな大人になるのだろう、と感じた。それから数回建築家の展覧会に足を運び、ついに今回、満を持して?「さすがに私でも知ってる」巨匠の展覧会へ。さらにそれを起点

    • 東京都現代美術館『あ、共感とかじゃなくて。』

      下書きに入ったままになっていた昨年の美術展の記録。旬を過ぎた感はあるが、せっかくなので公開にしてみる。 現代美術はそもそも共感を求めていないというイメージがある。作者は共感も賞賛も求めず自分のアイディアや主義主張をそれぞれのやり方で表現し、それを読み解ける人は感じるものがあるが、わからない人は首をひねって終わる。嫌な言い方をすれば、「ついてこられない人は置いていく」ような印象を持っている。あくまでも私の中のイメージだ。 そんな現代美術が、自分で「共感とかじゃなくて」と言って

      • GO!GO!2024年のバケットリスト(Bucket List、やりたいことリスト)

        本来のバケットリストは「死ぬまでにしたい100のこと」を書き出すものらしい。 『最高の人生の見つけ方』という映画(未見)に出てくるのだとか。 「やりたいことリスト」は定期的に考え、書き出している。「ウィッシュリスト」という名前になることもある。 年始にまとめた人生のウィッシュリストはまた別にあるのだが、もう少しカジュアルというか簡単な「2024年のバケットリスト」を書き出してみることにした。 1.オーダーメイド(セミオーダー可)でパンプスをつくる 2.恐山に行く 3

        • 森美術館『ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会』

          「見えないモノを見ようとして」という文字列を目にした時、何割かの人は望遠鏡を覗き込んでしまうのではないだろうか。また、何割かの人はメロディをつけて読みたくなってしまうのではないだろうか。私は展示会場を回りながら、ずっとこのフレーズが頭の中に流れていた。 現代アートとは「見えないものを見ようとする」行為の発露だと思う。「見えないものを『見せよう』とする」試みでもある。 社会にある見えないもの、歴史の中にある見えないもの、人と人との間にある見えないもの、自分の中にある見えないも

        パナソニック汐留美術館『フランク・ロイド・ライトー世界を結ぶ建築』、帝国ホテル、山の上ホテル

          奥多摩リトリート

          よしリトリートしに行くぞ、と出発したわけではないのだが、歩いている時に「これってもしかして、リトリートというやつになるのでは?」と気づいた奥多摩一泊二日ソロキャンプの記録。 9月半ば過ぎ、Yahoo!天気アプリがしきりと「〇〇に雨雲が近づいています」と通知をよこす午後に私は中央線に揺られていた。〇〇にどれだけ雨が降っても関係ない。私は居住地を離れて奥多摩へ向かっているのだから。 二日間の平日休み。先月の立山ですっかりテント泊にハマってしまったが、諸事情で電波の届くところに

          奥多摩リトリート

          立山ソロテント泊記録~信仰の山を歩くということ

          8月下旬に、念願叶って初めてのソロテント泊をしてきた。自分にとって大きなインパクトのある体験だったので、記録しておこうと思う。 そもそも、なぜテント泊?という話から。これまで「山の記憶」の記事は書いたが、それ以外は特に山行の話もなく基本的には美術展や読書の記事ばかりだ。アカウントを分けるべき?とも思ったが、「考えたことの記録」に該当するだろうということでこのまま続ける。 実は、私の名前は穂高連峰に由来がある。両親が山好きだったからだ。昔はそう聞かされても「ふーん」という感じ

          立山ソロテント泊記録~信仰の山を歩くということ

          国立新美術館『ルーヴル美術館展〜愛を描く〜』

          パリのルーヴル美術館には一度だけ、ツアーで行ったことがある。時間が限られていたため、本当にざっくりと有名どころを回るだけで終わってしまった。それでも大好きなサモトラケのニケを筆頭に、本物が本物として惜しげもなく次々に現れる空間に圧倒されたことをよく覚えている。これ3日くらいの通し券ないと無理ね、と思ったことも。 ルーヴル美術館で「愛」といえば、私が真っ先に思い出すのはこれだ。 だが、今回の展覧会がうたうように「ルーヴルには愛がある」という印象は薄い。記憶にあるのはドラクロ

          国立新美術館『ルーヴル美術館展〜愛を描く〜』

          ラグジュアリーに浸る2つの展覧会 東京都現代美術館『クリスチャン•ディオール、夢のクチュリエ』とインターメディアテク『極楽鳥』

          いま日本で最もチケットが取れない展覧会、かもしれない東京都現代美術館のクリスチャン•ディオール展。そして、そちらに比べるとひっそりと開催されているインターメディアテクの特別展示『極楽鳥』。 ラグジュアリーブランドに間近で触れられるこの2つの展覧会が、5月で終わる。特にインターメディアテクは5月7日までと会期終了が迫っているため、のんびりしたい気持ちに喝を入れて3連休の中日にnoteを書くことにした(私の職場は土日勤務がある)。 私は基本的に舶来ブランドにあまり親しまずにこの

          ラグジュアリーに浸る2つの展覧会 東京都現代美術館『クリスチャン•ディオール、夢のクチュリエ』とインターメディアテク『極楽鳥』

          東京都美術館「エゴン•シーレ展」

           正直に言うと、エゴン•シーレをそこまで大好きなわけではない。そこまで、というのは、例えばルドン展だったら「絶対行く!次の平日休みはいつだ!」とスケジュールを確認すると思うし、曜変天目茶碗なんてわざわざ京都まで行ってしまった。そこまでするほどには好きじゃない、といったところ。 ただ、これまで見てきた展覧会にエゴン•シーレの絵があると、どうしてもそこで足が止まってしまうことも事実なのだ。あ、これ知ってる、というだけではなく、目が離せなくなってしまう。 彼の絵はいつも何かがおか

          東京都美術館「エゴン•シーレ展」

          香りにまつわる展示たち

          2022年に行った展示の中から、香りにまつわる展示を2つピックアップしてみたい。香りは五感の中でも原始的な感覚だと言われている。他の4つと異なり、大脳辺縁系という脳の中でも本能的な働きをする部分に直結しているからだ。プルースト効果に代表されるように、人の深いところにある何かに作用するような力が香りにはある。また、洋の東西を問わず、香りは宗教的な場から日常の生活まで人と共にある存在だ。そんな「香り」にまつわる展示たち、雰囲気は全く違うがどちらも素晴らしい時間だった。 1、特別

          香りにまつわる展示たち

          京都国立博物館で、曜変天目茶碗をコンプリートしてきた話

          世界に曜変天目茶碗は3つある。その3つが全て日本にある。ということを知ったのは、大学1年生の夏に稚内のユースホステルでアルバイトをした時だった。 受付の待ち時間に、なぜかそこにあった大判の本を手に取った。ページをめくっていくと、見開きで宇宙があった。いや、宇宙ではなく曜変天目茶碗だ。視界いっぱいに飛び込んできたそれに、なんだこれは、と衝撃を受けた。なんだなんだ、世の中にはこんな美しいものがあるのか、と興奮さえ覚えた。実物を見たい、絶対に見たい。見ないわけにはいかない。 曜変

          京都国立博物館で、曜変天目茶碗をコンプリートしてきた話

          DIC川村記念美術館「カラーフィールド 色の海を泳ぐ」とクライン・ブルー

          イヴ・クラインを知ったのは大学の一般教養科目で現代美術の授業を取った時だったと思う。その時はただの名前としてしか記憶していなかった。ところが、卒業後20年も経って私はその名を追いかけることになる。 数年前から「青」を意識する機会が増えた。太田美術館で浮世絵のベロ藍を知り、インターメディアテクのギメ・ルームでギメ・ブルーを知った。その流れでクライン・ブルーに行き着いたというわけだ。 これはぜひ本物を見てみたい、と思ったが、もちろんそんなに簡単に見られるわけではない。 まず豊田

          DIC川村記念美術館「カラーフィールド 色の海を泳ぐ」とクライン・ブルー

          国立西洋美術館「自然と人のダイアローグ」

          テーマに沿って作品が展示されるタイプの展覧会は、画家個人を取り上げた展覧会とはまた違う楽しさがある。画家それぞれの表現に触れることができるからだ。今回も、宣伝されていたモネやゴッホ以外にもルドンやエルンスト、ムンク、モンドリアンやカンディンスキーまで見ることができ、充実感のある展示だった。 いくつかの作品を除き写真撮影可、という太っ腹な企画だったので、心惹かれた作品は写真がある。いくつか載せていきたい。 モネの海。細筆でササッと書いたような線が印象的だった。思わず「それで

          国立西洋美術館「自然と人のダイアローグ」

          山の記憶

          私は自然の中で過ごすことが好きだ。最近よく山に行くようになったので、自分の山の記憶について書いてみたくなった。とりとめもなく。 登山好きの両親のもとに生まれた私を、当然のように両親は山に連れて行った。だが、あまりにも小さな頃のことは覚えていない。「陣馬山も三頭山も行ったのよ」と言われ写真も見せられたが、首をかしげるばかりだった。 私が覚えている最初の山は、筑波山だ。小学校低学年の頃、父の会社の親睦会のようなものに連れられて行ったと記憶している。そういうイベントなので他にも

          山の記憶

          遊ぶということ〜『ホモ・ルーデンス』と吉阪隆正展〜

          「遊び」という言葉にどのような印象を持つだろうか。小さな子供の「遊び」は微笑ましいものだとされるが、長じて学齢になると「遊び」はしばしば「真面目」な「学び」の敵と目されるようになる。「遊んでないで真面目に話を聞きなさい」などといった風に。さらに恋愛関係に基づき特定の相手と交際するような年頃になると、「遊び」に「軽薄」や「不貞」といった意味合いが加わる。「遊び」は、いい大人のすることではない、よくないことだとされてはいないだろうか。「母親が子供を置いて遊びに行く」と言った時、そ

          遊ぶということ〜『ホモ・ルーデンス』と吉阪隆正展〜

          都会のアーベントロート

          その日、私は東新宿にあるビルの18階にいた。時刻は17時少し前。エレベーターを降りて窓の外を見ると、足元の家々や背の低いビルに今いる建物が影を落とし、それ以外は夕日に照らされている。筑波山がよく見えるから、空気も澄んでいるのだろう。きれいな夕焼けが見られそうだ、と期待が高まる。 お目当てはここから見る日没だ。西側に回ると、目の前に西新宿の高層ビル群が広がる。そのあたりに日が落ちていくはずなのだ。 日没が近づくと、空の彩度が高まる。太陽はちょうど高層ビル群の向こうに沈む方向に

          都会のアーベントロート