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『セバット・ソング』 谷村志穂 作 #読書 #感想

久しぶりに本の感想を書くような気がしている。最近就活に集中しすぎてしまった。反省。



この本は北海道にある児童自立支援施設を舞台として描かれている。ストーリーがものすごく良かった、印象に残った、感動したとかではなく.....純粋に「児童自立支援施設」で生活する子供たちがどんな様子なのかを知らない方たちにはぜひ読んでほしい本である。こういう施設は全国に58存在することを、日本に生きる人の何人が知っているだろうか。


作者はあとがきでこんなことを述べていた。

子どもたちを追い詰める環境は複雑化し、福祉の人たちはいくら手を延べようにも、力及ばず飲み込まれていく構造が見える。人間がすることの凄まじさの中で、手をこまねく大人たちがあり、身動きのできなくなった子どもたちがそこかしこで声にもならない悲鳴をあげている。
ではそこに、救済はないのだろうか。

この本は救済はある.....という人の可能性を信じて描かれている。

主人公はこの施設の院長である藤城遼平。その娘のゆき。施設を卒業した拓弥と摩耶という兄妹。この4人である。

彼らそれぞれの運命が最後まで描かれているというわけではないけれど、藤城さんのような大人に出会えた子どもたちは確かに"救われる"かもしれないと思わせてくれた。



子どもたちを追い詰める、環境の複雑化。それは教職課程を履修する中でも毎日のように実感することでもある。子どもたちを本当の意味で救うためには何が必要なのか。安心して暮らせる場所なのか。導いてくれる大人なのか。

実は救わなければならない存在は彼らの"親"なのではないかと思っている。親が歪んでいると子どもも歪む、と決め付けるわけではないけれど、親からの暴行は子どもが苦しむ原因のうちの大部分を占めるのではないだろうか。

暴力が日常と化すことの恐ろしさは計り知れない。

彼らの親の親もまた、彼らの親を苦しめる存在だったのかもしれない。だからこそ彼らの親は我が子を苦しめることになってしまったのかしれない。他者に依存するようになったのかもしれない。子どもより 暴力を振るう夫を大切に思うようになったのかもしれない。


何が言いたいのか分からなくなってきたが、純粋に小説を読むという気持ちではなく「こういう現状がある」というのを知る意味で手に取ってみてほしい本である。

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