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Op.49 2018年12月中旬


Dienstag-Donnerstag, Dezember 11-20


11日(火):
学校を休んだ。俗に言うサボり。「練習したい」って理由で休んだ日は、面白いくらい練習が捗らない。こういう自然の摂理みたいなこと、あるよね。なんて笑ってる場合ではないんだが。


12日(水):
朝7:30から合わせ。冬の5時起きはつらい。私だって家が近いわけじゃないのに、って毎度思ってしまう。疲れちゃうだけだから考えたくはないけど、愚痴として心が吐いてしまうよね。
これまででいちばん密度があって効率的な合わせだった。
マックで初めてチーズバーガー以外のものを食べた。テリヤキチキンバーガー。美味しかった。


13日(木):
レッスン。今日も相変わらず暗譜が飛んだ。「君ほど一般教科のできる生徒は僕のクラスにはいないよ。君は傑出して頭が良い」。
笑ってしまった。“頭が良い”って、こんなタイミングで言われるとは思ってなかった。驚きのあまり、たどたどしく「いやあ、そんなことはないと思います、本当に」なんてヘラヘラしてしまったけど、本当の本当に、本心で否定した。それでもやっぱり先生は「君はどこを取っても秀でている」と言い、続けて「なのに、音楽相手だと君のインテリジェンスは発揮されてない」と。ごめんなさい。不器用な完璧主義、なくせにお尻に火がつかないとやらないタイプなんです。これじゃただの言い訳だよね。頑張る、努力する。頭の出来の話は一旦なかったことにして、納得できるまで試行錯誤します。
先生にあれほどデキる人間だと思われてるとは心外だった。とてもじゃないが埋められるギャップではない。でも、人生をかけてその虚像を実像にしたいと思った。目指せ超人。

親友との久々のごはんを控えていたから、前回みたいに先生のお昼休み中も弾き続けたりはせず(コンチェルトの合わせも断ってちょっと申し訳ない気持ちになった)、すぐに渋谷へ向かった。
何がきっかけかはお互い覚えてないけど、なぜかものすごく親密感がある。趣味と価値観の齟齬がほぼ無いに等しいからかな。彼女のセレクトはいつも私に刺さる。良い趣味してる。彼女の好むものが、私も大好き。もちろん、完全一致するわけじゃないから、意見がずれることもたくさんある。でも、受け入れ難いことはひとつもなくて、毎回学びや発見に繋がる。ありがたいこと。
あとね、彼女にならどんなことでも話せるから、いつも聞き役に徹して喋りたがらない私ですら、本当になんでも話しちゃう。私がすぐに強がることも、本当は崩れそうなのに平気なふりをしてしまうのも、彼女には全部お見通しなんだ。嘘なんかついたって、すぐバレる。私、貴女と出逢ってから、ほんのちょっとだけかもしれないけど、気持ちに余裕が出来たんだ。ひとりじゃないって思えることが、こんなに安心できることだとは知らなかった。
彼女に促されるように話していくうちに「ほら、やっぱり傷ついてるじゃん!自分大事にして!」って言われて、ようやく気づく。あ、私、ダメージ受けてたんだ。って発見と同時に、なんで分かるんだよマブダチ〜!って驚きの混じった感謝が湧いた。いつもありがとう。これからもずっと、一生の友でいさせて。


14日(金):
試験前最後の合わせ。私に伴奏を頼んでくれてありがとう。引き受けてなかったら今頃こんな歓びも楽しみも面白みも知らないわけで。せっかく私なんかに齎されたチャンスなんだから、許される限りしがみつきたい。頑張ろうね〜〜!


15日(土):
珍しく、午後からの二台ピアノのレッスン。先生はいつもピアノとピアノの間に立って、まるで指揮者みたいに腕を振りながら歌ったり踊ったりして、これでもか!ってほど私たちに伝えてくださる。その場ですぐに再現する難しさはあるけど、こうやって油絵みたいに重ねて重ねて味を深めて確かにしてゆく感覚が、私はたまらなく好きだ。
レッスンの後に寄った喫茶店はとても雰囲気の良い、静かな空間だった。一人で来てたら5時間くらい居座っちゃいそう。
夜は恵比寿で口まで運ぶのも難しいお洒落なパスタを食べ、赤ワイン片手に初シーシャをキメた。本当に、マックシェイクと同じ要領だった。シーシャとアルコールの同時摂取はめちゃくちゃ酔う、なんて聞いたけど、歩き出しでちょっとふらついた以外、何の問題もなかった。可愛げのないやつ。何でか、冬の別れ際はより名残惜しい気持ちになるね。
卒業までにしたいことがいとも容易く叶ってしまう今日この頃。もう、あとは逢いたい人と逢うのみだな。


16日(日):
何してたんだろう。ピアノの前で21歳最後の日を費やし、昨日の余韻を楽しみ、また勝手に減ってゆく21歳を他人事のようにただぼんやり眺めていただけ。たぶん。


17日(月):
去年とはまた違う“すんなり”だった。事務連絡を受けたみたいな、「あ、22歳ね、わかった〜」ってノリ。自覚するしないの揺らぎもなかった。勿体ぶる歳でもないし、この先ずっとこんな感じなのかなあ、なんてつまらなさが滲んだくらい。

「16時に東京駅待ち合わせ」と聞いて、そうじゃなかった時のために、億が一のために一応程度に携えていた疑念ももはやただのお供え物になってしまった。女優気取りで現地まであほ面してすっとぼけてみようか、なんて悪戯心も湧いた。しなかったけど。
「きみの好きそうな店」であまおうづくしのリッチなケーキを食べて、尋ねないままでいるのもおかしいと思って「何線に乗るの?」と聞くと「京葉線だよ〜〜」だって。ふふふ。笑っちゃったね。分かってたけど、笑っちゃった。嬉しいのと可笑しいので。
ありがとう。誕生日に、一緒にいてくれてありがとう。楽しかったです。次は一日かけて行きたいなあ。
誕生日は彼氏とどこに行って、景色の良いレストランでお高めなディナーをご馳走してもらって、ホテルに泊まって……なんて話を人から聞くと、羨ましくないのは嘘になるけど、ちょっと引いてしまう自分がいる。まだ学生の身分なのにそんなに背伸びして。もっと身近に、もっと楽しくて美味しい時間はあるはずなのにね。


18日(火):
当日決行バンザイ。高校からの同輩に完全紹介&予約制のお店に連れて行ってもらった。めーーっちゃ美味しいの。流石です。今日だけ、リッチピープルぶった。セルフプロデュース力を彼女から学びたい。たぶん、今日が知り合ってからいちばん会話した日。知り合って7年目、20時半に待ち合わせてワインを嗜みながら将来の話をする仲になるとは思ってなかったな。ちゃんと話してみたら、思ってた以上にしゃんとしてた。お互い、社会人になったらまた呑もうね。


19日(水):
昼まで寝ました。22歳3日目、余韻に浸って終わりました。大人3年目なんだけどなあ。おかしいなあ。勉強道具を揃えて満足しちゃうのも直しなね。


20日(木):
明日本番だよ?本番と言っても、後輩のコンチェルト試験の伴奏だけど、本番は本番だよ?自分のすらそんなんで大丈夫なわけないけど、人様の成績が貴女の出来に左右されるわけよ?いつからだろうか、こんなに危機感を持たなくなったのは。いや、持ってないわけじゃないんだけどさ、「まだ大丈夫」「なんとかなる」って気持ちが危機感に蓋をしてるんだよね。良いこと?悪いこと?どっちかな。まあ、今はとりあえず度が過ぎてるからさ、後悔する前にやれることはやっとこうね、私。
(この曲を弾くのも、明日で最後かも)って考え出したら、急に愛おしくなって感情がこもっちゃった。明日はよろしくね。お互い楽しく弾けますように。



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