ミクタギ

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ミクタギと申します。 ツイッターやワードプレスで小説配信しています。 #140字の風景のタグで辿れます。 この度ツイ友の後押しも頂いて noteデビューいたします!笑 今後ともよろしくお願いします 🙏

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  • 140字の風景

    ツイッター、1ツイートの上限140字で、日常·非日常の様々な出来事を切り取る。 恋愛、感動、ユーモア、イヤミス等々、あらゆるジャンルで皆様に楽しんで欲しい!

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最愛の薫り

◇****◇ 逃げていた。 誰かが追ってくる。 誰なのか?何故なのか? それは分からない。 ただ捕まってはいけない。 それだけは分かる。 ここは…森の中か? 鬱蒼と生い茂る木々たちを払いのけ ひたすら逃げていた。 が、何かに引っ掛かり、転んだ。 木の根に足をとられたようだ。 不味い。追手は迫る…。 その時、“ こっち!” 私を抱き起こし、手を引いて走る。 誰? 肩越しに顔を覗く …。 西日に重なりよく見えない。 貴方は誰なの? ただ、言い

    • 漂流(終章②)

      終章 2. 次のシンポジウムまであまり時間がない。光男はしかし充実していた。今までの人生で誰かの役に立つ事などほとんどなかった。こんな自分でも社会貢献出来る。そう教えてくれたのは宇佐美だった。今では感謝の気持ちも芽生えてきている。今はこの気持ちを大事にしよう。携わる沢山の仲間たちの事を思い、光男は本来の目的を暫し封印した。 宮本からの言葉は光男の心を惑わせた。彼を100%信用した訳ではないが聡子の為だと言われると何とかしたくなる。それも宮本の計算なのかもしれないが、今はこ

      • 漂流 あらすじ

        幼馴染の光男と聡子は中学生の時、光男の母の死を境にその人生を分つ事になる。大人になった二人は、刑事事件の被告と弁護士として再会し、弁護士の聡子は見事光男の執行猶予を勝ち取る。それは嘗て聡子の父親が光男の母の死に関わった事に対する償いの意味もあった。しかし予期せぬ形で光男に母の死の真相を知られた聡子は、何とか光男を止めようとする。その死に関わった聡子の父親、弁護士事務所所長の秋山は公安の任務遂行中であった為、事故を表沙汰にする事が出来ない事情があったのだ。余命幾許もない聡子の父

        • 漂流(終章①)

          終章 1. 宮本の告白や宇佐美の計画を知った事により、聡子の決断が早まったのは確かだ。光男を巻き込んではいけない。何せこの思いが強かった。彼から母親を奪ってしまった。その事が今も尚、聡子を苦しませる。だからせめて、光男を面倒な事からは遠ざけたかった。その為なら、手段は選ばない。 宇佐美の考えは分かっている。光男を手元に置いて、聡子が公安の所業を白日の下に晒す事を防ごうとしているのだ。既に父の慎太郎や秋山はこの世にはいない。聡子さえ黙っていれば、公安の失態は全て無かった事に

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        最愛の薫り

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        • 140字の風景
          8本

        記事

          『余命零日』一週間前

          1. 優子との再会は、私の余生に大きな影響を及ぼした。そしてそれを実現させてくれた碧の気持ちに、深く深く感謝をした。彼女との出会いがこれ程私に大きなものをもたらすとは、正直想像だにしなかった。 「あぁ~!ぐうぅ~!」 碧の陣痛頻度が増してきた。感覚も心なしか短くなっている様だ。新しい命は着々とその日が来るのを待っている。 久々に店に足を運んでみた。 茜が頑張ってくれているお陰で、店内は以前とほぼ変わっていない。 「マスター。体調はどうですか?」 心配そうに茜が駆け

          『余命零日』一週間前

          『余命零日』二週間前

          1. 「もういつ産まれても、おかしくないね?体調は大丈夫?」 喫茶店に出勤する前に、茜は碧の部屋を訪れていた。正確には私の部屋なのだが、今は留守なので碧の部屋という事にした。 「そうですね。不安しかないです。」 碧は答えに困ったのか、苦笑いで応じた。 「マスターは?優しいでしょう?」 茜は少し揶揄うように尋ねた。 「毎晩、マスターの生い立ちを話して貰っています。」 碧の答えに、茜は驚きの表情を見せた。 「マスターが?噓でしょ?」 素直な感想なのだろう。

          『余命零日』二週間前

          『余命零日』三週間前

          1. 「川村さん、ご結婚は?」 碧との奇妙な生活も二週間目を迎えた。 先週は、私の仕事に関する話がほとんどだった。敢えてそうした様な気がする。お互いにどうでもいい話をする事でそれぞれの心を解していく。言わばウォーミングアップの様なものだ。そして今夜、碧はいよいよ核心に切り込んできた。 「嘗てはしていた。もう二十年以上前の事だ。」 私は努めて、淡々と回答した。 「お子さんは?」 野球で言えば、ピッチャーに両コーナーギリギリを攻められ、翻弄される様な気持ち。それくらい

          『余命零日』三週間前

          『余命零日』四週間前

          1. 「川村さん、どうしてもっと早く来てくれなかったんですか!」 目の前の医者が声を荒げた。通常の医者と患者であれば、こんな事はなかったと思う。何の因果か、長い付き合いになってしまった関係だからこそ、感情的になってしまうのだろう。 「なんだよ、珍しいじゃないか、声を荒げるなんて。」 次の言葉も予想がつく為、敢えてお道化て見せたが逆効果だった。 「あんなに約束したのに……体に異変を感じたら、直ぐに私の所に来ると!」 これほど取り乱すには理由があった。彼は嘗て私の義弟

          『余命零日』四週間前

          『余命零日』一年後

          〈あらすじ〉 ある日、川村雅之は主治医から余命一か月である事を告げられる。 ある程度覚悟していたものの、実際それを宣告されると様々な後悔が思い起こされる。その日の帰り、道端で一人の妊婦・星野碧と遭遇する。激痛を訴える碧を病院へ連れて行こうとするが、彼女はそれを拒む。それどころか碧は、帰る所が無いという。そんな事が切欠で、二人の奇妙な同居生活が始まった。余命一か月の癌患者と出産まで一か月の妊婦。それぞれの過去が互いの心に波紋を広げる。余命へのカウントダウンが進んでいく中、雅之

          『余命零日』一年後

          漂流(第四章⑧)

          第四章 8. 宮本の話は納得出来るものではあった。 しかし全て真実だとも思えなかった。聡子が何かに苦しんでいたのは理解していた。それは勿論、自らの父親と秋山が関与してしまったあの事故に関する事だろうと思っていた。その点に関して、宮本は明言しなかった。健忘症という病についてもまだよく理解出来ていない。それでも宮本はそれを知る為にも自分に協力して欲しいと言う。判断に迷ったが協力する事にした。恐らく聡子に直接聞いても本当の事は教えてくれないだろう。それならば宮本の計画に乗って状況

          漂流(第四章⑧)

          漂流(第四章⑦)

          第四章 7. 会場内を見渡すとまさかと思う人物に出くわした。目が合うとその人物はゆっくりこちらに近づいてくる。 「ご無沙汰しております。」 最後に会った時とそれ程変わりはない。出所の際に感じた、時の流れに比べればほぼ変わらないと言っていいだろう。 「どうして貴方が此処に?」 率直な疑問を投げかける。 「この会場に来てからの貴女の疑問にお答えしようと思ってね。」 宮本は昔と変わらぬ笑顔でそう答えた。まさか今回の光男の事は、この男の仕業なのか? 「宇佐美は公安部の人間です。貴女

          漂流(第四章⑦)

          漂流(第四章⑥)

          第四章 6. 聡子を救ってほしい。宮本の懇願に光男は戸惑った。そもそも自分は何度も彼女に救われている。聡子が居なかったら今頃どんな人生を歩んでいるか分からない。その彼女を救うなど今一つピンとこない。 「どういう事ですか?説明してください。」 光男は思うままを宮本にぶつけた。彼は少し躊躇したが、直ぐに気を取り直し光男に向き直った。 「落ち着いて聞いて欲しいのですが……彼女には健忘症の疑いがあります。」 「健忘症って……」 光男はやや呆気にとられた。健忘症と言えば老人がなる病気

          漂流(第四章⑥)

          漂流(第四章⑤)

          第四章 5. 「私がこの会の発起人になる事について、よく思わない方が多くいる事も承知しております。私は以前、傷害致死の罪で公訴提起されました。そして執行猶予付きの有罪判決を受けています。本来であれば、この様な会の発起人になるには相応しくないと思っています。」 若干会場がざわめいた。聡子は、いま壇上で話しているのが光男だという事に現実味を感じられずにいた。一体どういう経緯でこうなってしまったのか? 「しかしある人に今回の事を勧められて考えを改めました。勿論、相当悩みましたが…

          漂流(第四章⑤)

          漂流(第四章④)

          第四章 4. 美代子が亡くなって、暫くは何もする気が起きなかった。母の死から自らの裁判と降りかかる災厄を自虐的に捉え、流される様に生きてきた。しかし母の死の真相を知る事で昔の活力が戻ってきた。それをエネルギーに復讐だけを考え生きてきた。それなのに最後は呆気ないものに終わり、それを支え続けてくれた美代子もこの世を去った。もう自分は何の為に生きれば良いのだろう?それに対する答えを見い出せず、抜け殻の様に生活していた。聡子の事がほんの少し過ぎった。しかし直ぐに何処かへ行った。

          漂流(第四章④)

          漂流(第四章③)

          第四章 3. 「先生、有難う御座いました。」 セミナーが終わり、参加者が口々にお礼を告げて立ち去る。 「お疲れ様です。諦めず頑張りましょうね。」 聡子はそれぞれに激励の言葉を返す。 北海道N市に戻り、本格的に活動を再開した。犯罪被害者の会を立ち上げて久しいが、その活動もここ数年で実を結びつつあった。比較的犯罪の少ない此処北海道でも50人を越える会員数となった。聡子はその一人一人と向き合い、理不尽な日本の司法に真っ向から立ち向かった。それはまるで禊を祓うかの様だった。自らが行

          漂流(第四章③)

          漂流(第四章②)

          第四章 2. あれからまた月日が流れ、光男は五十の齢を越えた。 色々あったが、今は美代子と幸せに暮らしている。聡子の事を忘れた訳ではない。しかし何となく二人が交わる事は無いような気がしている。それに激動過ぎる人生の中で、流される様に生きてきた自分は少し疲れてしまったのかもしれない。大切だった筈の聡子の面影が今は薄れてしまっている。それを認めたくなくて美代子との生活に没頭している事からは、目を逸らし続けてきた。だがこれでいい。もう、これでいいんだ……。 「光男さん。ご飯出来た

          漂流(第四章②)