ミクタギ

ミクタギと申します。 ツイッターやワードプレスで小説配信しています。 #140字の…

ミクタギ

ミクタギと申します。 ツイッターやワードプレスで小説配信しています。 #140字の風景のタグで辿れます。 この度ツイ友の後押しも頂いて noteデビューいたします!笑 今後ともよろしくお願いします 🙏

マガジン

  • 140字の風景

    ツイッター、1ツイートの上限140字で、日常·非日常の様々な出来事を切り取る。 恋愛、感動、ユーモア、イヤミス等々、あらゆるジャンルで皆様に楽しんで欲しい!

最近の記事

  • 固定された記事

最愛の薫り

◇****◇ 逃げていた。 誰かが追ってくる。 誰なのか?何故なのか? それは分からない。 ただ捕まってはいけない。 それだけは分かる。 ここは…森の中か? 鬱蒼と生い茂る木々たちを払いのけ ひたすら逃げていた。 が、何かに引っ掛かり、転んだ。 木の根に足をとられたようだ。 不味い。追手は迫る…。 その時、“ こっち!” 私を抱き起こし、手を引いて走る。 誰? 肩越しに顔を覗く …。 西日に重なりよく見えない。 貴方は誰なの? ただ、言い

    • 漂流(第四章⑧)

      第四章 8. 宮本の話は納得出来るものではあった。 しかし全て真実だとも思えなかった。聡子が何かに苦しんでいたのは理解していた。それは勿論、自らの父親と秋山が関与してしまったあの事故に関する事だろうと思っていた。その点に関して、宮本は明言しなかった。健忘症という病についてもまだよく理解出来ていない。それでも宮本はそれを知る為にも自分に協力して欲しいと言う。判断に迷ったが協力する事にした。恐らく聡子に直接聞いても本当の事は教えてくれないだろう。それならば宮本の計画に乗って状況

      • 漂流(第四章⑦)

        第四章 7. 会場内を見渡すとまさかと思う人物に出くわした。目が合うとその人物はゆっくりこちらに近づいてくる。 「ご無沙汰しております。」 最後に会った時とそれ程変わりはない。出所の際に感じた、時の流れに比べればほぼ変わらないと言っていいだろう。 「どうして貴方が此処に?」 率直な疑問を投げかける。 「この会場に来てからの貴女の疑問にお答えしようと思ってね。」 宮本は昔と変わらぬ笑顔でそう答えた。まさか今回の光男の事は、この男の仕業なのか? 「宇佐美は公安部の人間です。貴女

        • 漂流(第四章⑥)

          第四章 6. 聡子を救ってほしい。宮本の懇願に光男は戸惑った。そもそも自分は何度も彼女に救われている。聡子が居なかったら今頃どんな人生を歩んでいるか分からない。その彼女を救うなど今一つピンとこない。 「どういう事ですか?説明してください。」 光男は思うままを宮本にぶつけた。彼は少し躊躇したが、直ぐに気を取り直し光男に向き直った。 「落ち着いて聞いて欲しいのですが……彼女には健忘症の疑いがあります。」 「健忘症って……」 光男はやや呆気にとられた。健忘症と言えば老人がなる病気

        • 固定された記事

        最愛の薫り

        マガジン

        • 140字の風景
          8本

        記事

          漂流(第四章⑤)

          第四章 5. 「私がこの会の発起人になる事について、よく思わない方が多くいる事も承知しております。私は以前、傷害致死の罪で公訴提起されました。そして執行猶予付きの有罪判決を受けています。本来であれば、この様な会の発起人になるには相応しくないと思っています。」 若干会場がざわめいた。聡子は、いま壇上で話しているのが光男だという事に現実味を感じられずにいた。一体どういう経緯でこうなってしまったのか? 「しかしある人に今回の事を勧められて考えを改めました。勿論、相当悩みましたが…

          漂流(第四章⑤)

          漂流(第四章④)

          第四章 4. 美代子が亡くなって、暫くは何もする気が起きなかった。母の死から自らの裁判と降りかかる災厄を自虐的に捉え、流される様に生きてきた。しかし母の死の真相を知る事で昔の活力が戻ってきた。それをエネルギーに復讐だけを考え生きてきた。それなのに最後は呆気ないものに終わり、それを支え続けてくれた美代子もこの世を去った。もう自分は何の為に生きれば良いのだろう?それに対する答えを見い出せず、抜け殻の様に生活していた。聡子の事がほんの少し過ぎった。しかし直ぐに何処かへ行った。

          漂流(第四章④)

          漂流(第四章③)

          第四章 3. 「先生、有難う御座いました。」 セミナーが終わり、参加者が口々にお礼を告げて立ち去る。 「お疲れ様です。諦めず頑張りましょうね。」 聡子はそれぞれに激励の言葉を返す。 北海道N市に戻り、本格的に活動を再開した。犯罪被害者の会を立ち上げて久しいが、その活動もここ数年で実を結びつつあった。比較的犯罪の少ない此処北海道でも50人を越える会員数となった。聡子はその一人一人と向き合い、理不尽な日本の司法に真っ向から立ち向かった。それはまるで禊を祓うかの様だった。自らが行

          漂流(第四章③)

          漂流(第四章②)

          第四章 2. あれからまた月日が流れ、光男は五十の齢を越えた。 色々あったが、今は美代子と幸せに暮らしている。聡子の事を忘れた訳ではない。しかし何となく二人が交わる事は無いような気がしている。それに激動過ぎる人生の中で、流される様に生きてきた自分は少し疲れてしまったのかもしれない。大切だった筈の聡子の面影が今は薄れてしまっている。それを認めたくなくて美代子との生活に没頭している事からは、目を逸らし続けてきた。だがこれでいい。もう、これでいいんだ……。 「光男さん。ご飯出来た

          漂流(第四章②)

          漂流(第四章①)

          第四章 1. 路上に突如現れるコンクリートの壁。 広大な土地を取り囲む様に聳え立っている。その一角にひっそりと備え付けられた一畳ほどの扉。それが何の前触れもなく開いた。中から出てきたのは初老の男性。看守から一声掛けられ、それに一礼をして戸外に姿を現す。聡子はそれを万感の思いで迎える。長かったと言えば長かった。しかし印象としてはやはり “あっと言う間” が正しいのかもしれない。 「お疲れ様。」 男は僅かに微笑んだように見えたが直ぐにその痕跡は消え、居住まいを正し聡子に向かって

          漂流(第四章①)

          漂流(第三章⑪)

          第三章 11. 久し振りに会う光男は変わらなかった。いや、少し痩せただろうか?それが持前の精悍さを際立たせていた。込み上げる懐かしさを抑え、聡子は光男に語り掛ける。 「父に会ったのね?秋山の事は聞いたんでしょ?」 しかし光男は答えない。答えられないが正しいのだろう。やはり秋山の死を既に知っている様だ。ショックは大きいと思う。 「ねえ、光男。ごめんなさい。本当にごめんなさい。もっともっと早く、私から真実を伝えていれば、光男にこんな思いをさせないで済んだと思う。私が悪かったの

          漂流(第三章⑪)

          漂流(第三章⑩)

          第三章 10. 秋山の刺殺体が発見された。その一報は全国放送のニュースで流れた。犯人は直ぐに見つかった。逮捕されたのは、秋山の経営する弁護士事務所に所属する宮本という弁護士だった。以前から依頼人の振り分けを巡って対立があったと本人が証言しているらしい。長野県の避暑地にある彼の所有する別荘での出来事だった。光男はそのニュースを呆然と眺めていた……。慎太郎の独白は、光男を混乱させた。長年に渡る調査で漸く辿り着いたと思っていた真実が、寸でのところでまた擦り抜けていく。正直そんな

          漂流(第三章⑩)

          漂流(第三章⑨)

          第三章 9. あの日、秋山から真実を聞いた日から、聡子の心はそれまで以上に凍り付いていった。司法試験、その後の弁護士としての仕事も全く心の通わないものとなった。父の嘆願。秋山から聞いた真実。光男との決別。繋がる様で繋がらない。いや、所詮15歳の聡子にはどうする事も出来なかった現実。そんな諦念が聡子を自暴自棄にさせた。それでも光男と再会し、ほんの少しでも償いが出来たかと思っていた矢先の光男の失踪……私はいつも不本意な場所に立っている。そんな思いがふと胸を過ぎった。 美代子に光

          漂流(第三章⑨)

          漂流(第三章⑧)

          第三章 8. 病室のベッドで上半身だけを起こし、痛みがあるのか時折顔をしかめながら慎太郎の独白は続いた。 「その場から走り去った私達は、事故の後処理を考えた。土砂降りが幸いし目撃者は恐らくいない。そして雨が証拠も洗い流してくれる。しかし警察が本気で捜査をすれば、いずれ該当車両を割り出すだろう。それは公安任務遂行の大きな妨げになってしまう。私は当時の上長である警視庁副総監へ事故についての報告を入れた。」 光男は意外と冷静だった。ずっと知りたかった真実。やっとそれが明らかになる

          漂流(第三章⑧)

          漂流(第三章⑦)

          第三章 7. 「あの日、車を運転していたのは俺なんだよ。」 秋山は、聡子の方は見ずに天井へ煙を吐き出しながら話し出した。話の展開は何となく予想は出来た。自分がずっと感じていた違和感と答え合わせする様な気持ちで秋山の話に耳を傾けた。 「当時俺は弁護士をする傍ら、お前の父親の情報屋をしていた。俗にいう “エス” というやつだ。キャリアである早川は、現場での最後の仕事である公安任務に従事していた。既に警視正という階級にいて、これを問題なく熟せばいよいよライバル達を蹴落とし、警視長

          漂流(第三章⑦)

          漂流(第三章⑥)

          第三章 6. 「何故あの時逃げたんだ!直ぐに救急車を呼んでくれたら、母さんは助かったかもしれないのに!」 積年の恨みを吐き出すべく、光男は慎太郎に向けて思いの丈をぶつけた。 「たった……二人だけの家族だったんだぞ…俺のために毎日……それをお前は!」 いくら叫んでも収まらない。寧ろその思いは強くなっていく。慎太郎はそれを静かに見つめていた。僅かに微笑を浮かべながら……。それが光男を苛つかせる。 「何とか言ったらどうだ!」 涙を浮かべながら激高する光男に対し、慎太郎は静かに切り

          漂流(第三章⑥)

          漂流(第三章⑤)

          第三章 5. 暫く黙り込んでしまった美代子に対して、聡子は一つの大きな決断を迫られていた。全てを知った光男の次なる行動を予想するのは容易い。そしてそれが重大な結果をもたらす事も火を見るより明らかだ。何としてもそれは避けなければならない。それが聡子に課せられた最後の任務とも言える。しかし……。 そこで思考はストップする。美代子が言った重要な何か……。そこには恐らく彼女も、そして光男もまだ気づいていないであろう真実が隠されている。それを知らない光男は、まず間違いなく聡子の父であ

          漂流(第三章⑤)