三木俊雄

ジャズミュージシャン。美味しいものが好きで、陰謀論と自己啓発が嫌い。tail wind…

三木俊雄

ジャズミュージシャン。美味しいものが好きで、陰謀論と自己啓発が嫌い。tail wind 2nd アルバム「KUON 久遠」をよろしくお願い致します。https://www.youtube.com/watch?v=8FqPRmgbeic http://mikitoshio.com

最近の記事

あとちょっとで捕まえられそうな

例えば難しいコードチェンジの曲があったとして、それをどう演奏するか?あるいはそのためにどう攻略するか。これはプロアマを問わず、多くのサックスプレーヤーが頭を悩ませ、日々取り組んでいるトピックの一つだろう。 コードを分析し、それに適合するスケールを先ず割り出す。それを自在に操れるようにそのスケール上に各種のインターバルで作ったパターンを練習する。いわゆる基礎練習、これを気が遠くなるくらいの時間をかける。 しかし今度はそのスケールを移り行くコードチェンジに沿ってうまく連結できな

    • 都会人と田舎者

      随分昔に白洲正子さんがご自身のエッセイで「ファッションブックから抜け出したような男女は、田舎者にかぎる」と書いていて、今でいうところの炎上のようになったことがある。確かに随分な言い草だと思うのだが、続けて「田舎に住んで、まともな生活をしている人々を田舎者とはいわない。都会の中で恥も外聞もなく振舞う人種を、イナカモンと呼ぶのである」と。 「田舎者」と言えば、それは「都会へのコンプレックス」というようなネガティヴな意味合いを持つ。立ち振舞いが洗練されていないのみならず、舐められ

      • たまご

        一番好きな食べ物は何か? これは結構難しいけど、一番世話になった食品はお米をのぞけばおそらく卵と納豆だろう。でもアメリカにいた時期は納豆はなかったので、やはり一番は卵。 「完全食品」であり「物価の優等生」と言われる卵。白玉と赤玉があり、聞くところによると中身は変わらないそうだけど、どういうわけか赤玉の方が高級感があるような気がしてしまう。そしてやはり一般的な白玉は安価で手に入りやすい。 「〜曜日はゆで卵サービス」という飲食店もあれば、例えば韓国ではテーブル脇に卓上コンロと卵

        • 旧玉川上水緑道問題

          家の近所に旧玉川上水の緑道がある。 桜の季節は結構な賑わいになり、僕もよく犬の散歩をする。 今年の春頃にその緑道の木を伐採するという話を初めて聞いてちょっとした住民運動というか、新聞にも載るような騒動になった。 どうやら渋谷区は民間を誘致して緑道を公園として商業利用しようとしているのではないか、樹木伐採はそのためという話が近隣住民の間を駆け巡る。 それに関係して町内会の方、区議の方と打ち合わせをして渋谷区の長谷部区長との面会に参加することになった。 当然、タイミング的に長谷

        あとちょっとで捕まえられそうな

          遊戯倶楽部

          遊戯倶楽部という倶楽部が東京の某所にある。古今東西の色々な遊戯の愛好家が集まっている倶楽部である。この倶楽部の面白いのは、狭い部屋に一つの蝋燭の灯りだけで遊戯をすることだ。そしてその回の遊戯の内容によっては賭けをするという。  元々この倶楽部は佐々木という遊戯愛好家の金持ちが始めたものであった。だが佐々木は遊戯倶楽部を始めてから十年ほど経った頃、友人で倶楽部会員の滝沢という男に倶楽部についての全ての権限を託すと人々の前から姿を消してしまったという。  この倶楽部について聞い

          遊戯倶楽部

          かつや

          代々木のルーツ音楽院で教えていた頃よく入ったのがとんかつチェーン店の「かつや」 メニューを見て毎度悩んでしまう。 そう、小学校の算数でやったアレ。 「リンゴとミカンは合計〜個あります。リンゴ1個の値段はミカンより〜円高く、全部で〜円です。それぞれの値段はいくらでしょうか?」 「かつや」のメニューはなかなかこの手の謎に満ちていて未だ納得いく解答に辿り着いていない。 セット定食のメニューによれば、 80gロースカツはメンチカツより130円高く、海老フライ2本はメンチカツより

          流れ星

          いや、無理に信じてくれなくてもいいのだ。 どだい、信じろと言う方が無理な話なのかも知れない。 しかしこれは本当にあった事なのだ。 それは冬の寒い夜の出来事だった。 僕は仕事から帰ってきたところだった。 疲れていた。 しかしポケットに手を突っ込み事態を把握するまで時間はかからなかった。 そして落胆した。 「やれやれ、またやってしまったか」 店に部屋の鍵を忘れてきたのだ。 しばらくぼーっとその場に立ちすくしてはみたものの為す術が無いのは分かり切っていた。 電車はもうない。やっ

          万事休す

          万事休すとはこの事だ。 思ったより早く着いたのは良かった。セッティングをしたらお茶でも飲んでゆっくりしようと思っていた。 しかし車のトランクを開けて一瞬状況が分からなくなってしまった。 タキシードを入れたガーメントケースは有る。しかし、楽器が見当たらない。 「多分後部座席だろう…」 しかしやはりそこにも無い。 血の気が引いて行くのが、まるで他人事のようによくわかった。 ここは茨城県の牛久で結婚式の仕事。編成はピアノとデュオ。 万事休すだ。 その日は朝早かった。 渋滞を避ける

          Facebookとnote

          今はそれほどでもないけど、一時はよくFacebookに長めの文章を投稿していた。 僕にとってFacebookは広い意味での広告媒体。何時いつ何処どこでライブをやります、新しい何々が出ました、的な。 僕のやっているジャズという音楽はかなり狭く、しかし長期に亘って確実に、そして熱心なファンを擁している。一般的に年齢層は高め。 Facebookもユーザーの年齢層は高めで、相互フォローを基本とした「興味のある者同士」のSNS。 なのでジャズミュージシャンにとってお金を掛けない告知媒

          Facebookとnote

          交番のお巡りさん

          昔住んでいた所から最も近い山手線の駅は目白だった。自転車で15分程度。 その日は確か鹿児島日帰りという強行スケジュールで羽田空港に向かっていた。当時はまだ現在の場所より随分手前にあった頃で浜松町からモノレールに乗って行く。 支度に手間取って家を出るのが少し遅くなってしまった。急がねば。 目白は山手線で浜松町のちょうど反対側なので新宿回りでも池袋回りでもほとんど同じ。 当時はまだSuicaやPASMOなどというものはなく現金で切符を買うのだが、その頃は山手線回数券というのがあ

          交番のお巡りさん

          Bさん

          最近「発達障害」という言葉をよく目にする。ADHDやASD、一般には知能に問題のない、コミュニケーション能力の欠如、衝動性、注意欠陥などをさす。 発現率は20人に1人程度と言われ、大体クラスに1〜2人いることになる、と言えば思い当たる人も多いだろう。 これは発現率としてはかなり高く、そのため「障害」というネガティブな呼称を使わず「非定型発達特性」と呼ばれる傾向にあるようだ。 その意図の有無はさておき、アニメの主人公などはこのタイプが多い。 サザエさん、ドラえもん、のび太、映

          久遠

          6月末に録音した鈴木禎久tail wind のニューアルバム “KUON”が完成しました。発売は9月30日 鈴木禎久(g)、岡田治郎(b)、加納樹麻(ds)に私のメンバーに加え、日本を代表する多彩なゲストを迎え、我々のオリジナルをいろいろな編成とアレンジで。 佐野聡さんのアレンジによるビッグバンド+ストリングス+フルート、オーボエ、イングリッシュホルン+パーカッションの壮大なオーケストラ。 中路英明による4トロンボーン+フリューゲルホーン+フルート。 僕は4トロンボーンとそ

          鰻屋の天丼

          東京に出てきて初めて住んだのは板橋と練馬の区界だった。 家の近くにはほんの申し訳程度の小さな商店街があり、そのなかの一つに鰻屋があった。といっても仕事もない駆け出しの若造に鰻など食べられるはずもなく、いつもただ前を通り過ぎるだけだった。 ある時その店の前を通ると「天丼始めました。大海老2本 500円」と手描きのイラストが貼り出されていた。 「500円か… これなら食べてもいいかな」 何度か迷った末、思い切って暖簾をくぐってみた。 店内は他に誰もいなかった。 無口そうな親方

          鰻屋の天丼

          そういう時代だった

          少し前に、元バレーボール選手の益子直美さんがかつて指導を受けていた監督に会いに行き、当時のいわゆる「しごき」について今どう思っているかを問う番組をテレビで観た。 益子さんはスポーツに疎い僕でも知っているような華々しい活躍をされた選手だけど、子供時代は「恐怖心しかなかった」と語っている。そして現在は若い世代にそのような経験をさせないように「監督が怒ってはいけない大会」という取り組みを続けておられる。 彼女は慎重に言葉を選び、また最大限に気を遣いながらかつての指導者から反省の意

          そういう時代だった

          ジャムセッション

          最近は実に多くのジャムセッションが開催されている。 かつてはジャムセッションと言えば通常のライブのない日に曜日を決めて行われるものだったのが、現在ではジャムセッションをメインに営業しているお店も多い。 ジャズが聴く音楽から演る音楽に移り変わったことを端的に表している。 かくいう僕もそういったお店でセッションホストを頼まれることがある。 そこでいつも気になるのが自分に期待される役割は何か、ということ。 ジャムセッションといえば、演奏が最低限成立し、かつ参加者の少ない楽器、すな

          ジャムセッション

          自分に求められているもの

          「だが、情熱はある」の録画を観ている。 南海キャンディーズの山里亮太さんとオードリーの若林正恭さんの実録ドラマ。 山里さんは僕と同じ大学出身で、若林さんは中央区入船のご出身。僕は昔、隣の湊に住んでいた。 「このドラマはサクセスストーリーではない」とのナレーションが入るが、今や山里さんや若林さんと言えば押しも押されぬお笑い界の第一人者。もちろん経済的にも成功しているのだろうけど、20代の頃は何をやってもウケず貧乏に喘いでいた。ドラマはその時代から、ようやく売れ出した2009年

          自分に求められているもの