みかづきふゆき

日本児童文芸家協会会員。アマチュア小説家です。 2022年、アマゾンにて児童向け小説と…

みかづきふゆき

日本児童文芸家協会会員。アマチュア小説家です。 2022年、アマゾンにて児童向け小説とライトノベルを電子出版しました。

最近の記事

2万年前の姫(4)

 七理は、片手で剣を握り、重量のありそうな剣を、軽々と上下左右へと振って、冬馬を威圧している。  剣のデモンストレーションが終わると、再び剣先を冬馬へと向けた。  すると、血を固めたような赤い刃先が、淡く輝いた。 「な、何だその剣?」  刃先が赤く光る剣なんて、初めて見た。 「へー、知らないんだ。この剣の刃は血刀でできているの。血を固めた刃よ。自分の血を使うの。だから、気合いを入れるとそれに反応して、こう光る。そんなことも知らずに、よくヘムネイルに入ろうと思ったわね」 「自分

    • 侵略少女エクレアさん(8)

      「やー、やー、君達、こんにちは」  僕の席の前に、片手をあげてニッと白い歯を光らせているアロハシャツの男が現れた。  しゃべり口調は、普通に戻っている。  ひょいと、アロハシャツの男の後ろからショートカットがよく似合う少女が顔を覗かせた。 「か、香月さん! もう、大丈夫なの?」  嬉しさのあまり、立ち上がって、香月さんに詰め寄る。 「う、うん。良く覚えていないんだけど……。私、中央公園の谷で、倒れていたみたいなの。この人が見つけてくれて、助けてくれたの。佐々木君を知っているよ

      • 2万年前の姫

        ■あらすじ 2036年、地球温暖化で南極と北極の氷が溶けて東京都23区が水没した。氷に閉じ込められていた数万年前の巨大生物、魔獣が蘇る。  15年後。何者かに冬馬の父親が殺され妹の六花が誘拐された。  冬馬は吸血鬼と戦う組織・ヘムネイルの隊長・レオンと知り合い、父親はヘムネイルのメンバーであり、六花は南極の奥深い氷に眠っていた2万年前の人間で魔獣をコントロールする能力を持ってることを告げられた。冬馬は六花を救い出すことを決意する。  誘拐された六花は吸血鬼に血を吸われて、封印

        • 2万年前の姫(3)

           冬馬はレオンと共に高尾駅で電車から降りた。  改札を出ると、高層ビルが建ち並んでいた。  駅前の交差点はたくさんの人々が横断している。  15年前、東京都の23区が沈んで高尾駅周辺は大規模な開発が行われ、商業の街に変貌していた。  前を歩くレオンが、歩く速度を速めた。 「急に早足になって、どうしたんですか?」 「つけられている」 「え?」  視線だけを横に向けても不審そうな人は見当たらない。 「冬馬、走るぞ」  レオンが点滅している歩行者信号の横断歩道に向かって駆け出した。

        2万年前の姫(4)

          2万年前の姫(2)

           六花は、自分の名前をアミラと言われてムッとする。 「あたしは六花。アミラではありません」  するとオースティンは鋭い視線で六花を睨んだ。けれど、すぐに穏やかな表情に戻った。  睨まれたとき、ドキリ、と六花の心臓が大きく鼓動した。  およそ人間の目ではない、まるでヘビにでも睨まれたような感じがしたからだ。  オースティンが椅子に座る。 「まぁいいでしょう。お腹がお空きでしょう。どうぞ、お座りください」  オースティンのこの言葉で、ルーシーが六花の椅子を引いた。  六花は、オー

          2万年前の姫(2)

          2万年前の姫(1)

           2051年7月、八王子市の午後5時。  高校1年の雪風冬馬は剣道部の練習が終わると、一目散に道場を飛び出した。 「おさきに!」 「冬馬! 今日の部室の掃除当番、お前だろ!」  3年の部長がツバを吐きながら怒鳴る。 「ごめん! 明日やるよ!」 「昨日もそう言ってサボっただろう! なめんなコラ――!」 「そうだっけ?」  部長に両手を合わせて、ゴメン、とジェスチャーして更衣室に飛び込む。  急いで学生服に着替えて、スクールバックを肩にかける。 「今日は、3か月ぶりに、父さんが、

          2万年前の姫(1)

          侵略少女エクレアさん(7)

           僕は、香月さんの怪我が治るまでエクレアとアパートで待つことにした。  エクレアの話ではあのアロハシャツの男はザラアースの諜報員でこの地区の担当責任者らしい。  その男が、香月さんを連れてくる段取りらしい。  さすがにエクレアも疲れたのであろう、エクレアは僕のアパートに着くなり、僕の秘密の部屋を勝手に開けると、万年床の布団に潜り込んだ。  布団の下に隠してある、秘密の本がバレないか、ドキドキだったけれど、心配は無用だった。  そのあとすぐに、エクレアの寝息が聞こえたのだ。

          侵略少女エクレアさん(7)

          侵略少女エクレアさん(6)

           空き地でうつ伏せになっているエクレアが、むくっと頭を持ち上げた。 「くっそ、あのヤロー……、ザラアース人をバカにして。今度会ったら、絶対に、倒してやる」  と頭を3回ほど振って、ゆっくりと起き上がった。  黒いベストとチェック柄の赤いミニスカートが、土やホコリで汚れている。  すぐにエクレアまで駆け寄って、今にも倒れそうなエクレアの両肩をしっかりと受け止める。 「エクレア! 大丈夫? 怪我とか、していない?」 「あ、ありがとう。大丈夫、かすり傷よ」 「良かった。も

          侵略少女エクレアさん(6)

          侵略少女エクレアさん(5)

          「そんな卑怯な手を使う、ザラアースを、俺は、絶対に許さない」  篠原は、怒りを押し殺すようにそう言った。 「あと、俺はおまえに謝らなければならない。俺は、地球人じゃ、ない」  えっ? 「俺は、地球から8万光年離れた、カスパーゼからきた。……今まで、騙していて、すまない」  それって……、篠原が、異星人だってことなのか? 「篠原、本当なのか?」 「本当だ」  ショックを受けた。  高校に入って、最初に友達になった篠原が、異星人だったなんて……、信じたくない。  

          侵略少女エクレアさん(5)

          侵略少女エクレアさん(4)

          「佐々木に女がいるという情報はなかった。おかしいと思って、つけてみれば……。あたりだった」  背中から、知っている声がした。  振り返ると、首元の白シャツのボタンを外し、両手をズボンのポケットに突っ込んで、突っ立っている少年が、いた。  その少年は、帰ったはずの篠原だった。  篠原が、鋭い目つきでエクレアを睨む。 「おまえ、ザラアースのスパイだな」  何か今、篠原がすごいことをさらりと言ったような気がするけれど、僕はここに篠原がいることの方が驚きだった。 「篠原、どう

          侵略少女エクレアさん(4)

          侵略少女エクレアさん

          ■あらすじ 高校1年生の少年・アルトは、アパートを借りてひとり暮らしをしていた。そこに突然、幼なじみを名乗る少女・エクレアが現れ「地球侵略はどうしたのよ!」と意味不明なことを言う。  エクレアは惑星ザラアースからきた異星人で、アルトも地球侵略の諜報員らしい。しかしアルトにそんな記憶はない。アルトはエクレアを家出少女と思い込む。  クラスメイトの少女・香月がアルトの部屋にいるエクレアに衝撃を受ける。香月はアルトのことが好きだった。  逃げ去る香月をアルトは追う。香月は交差点で事

          侵略少女エクレアさん

          侵略少女エクレアさん(3)

           エクレアが、万能通信機を口元へと近づける。 「スィーヴッツ・ヴァカン、ステーレアナビア、アクシオン……」  僕の知らない言葉だった。   「エクレア……、君はいったい、何を言っているんだ……」  その言い方は、まるで君が、本物の異星人のような、口調じゃないか。  その言い方は、まるで君が、香月さんを救ってやる、と断言しているような口調じゃないか。  それって……、ま、まさか! 「スィーヴッツ・ヴァカン、ステーレアナビア、アクシオン、ポスランティ・クラティイオ・ラーシ

          侵略少女エクレアさん(3)

          侵略少女エクレアさん(2)

           この先の信号のある交差点で、人が集まっている光景が見えた。  何だろう? 人が倒れている……。女の子が倒れている……。  道路脇に、赤いスポーツカーがハザードランプを点滅させて停車している。  まさか!  僕は人をかき分けて、倒れている女の子に駆け寄る。  信号機のそばの車道に、額から血を流して倒れている女の子は、香月さんだった。  全身からスーッと力が抜けて、その場にしゃがみ込む。  この場合、どう行動すればいいのか、どのような顔をすればいいのか、本当にわからない

          侵略少女エクレアさん(2)

          侵略少女エクレアさん(1)

           高校生活初めての夏の、とある日曜日。  来週から1学期の期末試験が始まる。  僕、佐々木アルトは、初めてできたクラスの友達と、僕のアパートで試験のための勉強会をすることになった。  そう、僕は今、ひとり暮らし。  実家は遠くの田舎で高校がない。そのため、中学を卒業するとみな都会の高校へ行く。  通いの人もいるけれど、僕はアパートを借りることにした。  ピンポーン。  ドアチャイムが鳴った。  誰だろう? 勉強会は午後1時からのはず。今は午前11時51分。まだ、1時間以

          侵略少女エクレアさん(1)

          小説「先天の少女と魔術機動隊」第2巻、電子出版しています!

          小説「先天の少女と魔術機動隊」第2巻、電子出版しています! アマゾンにて絶賛販売中です! 「先天の少女と魔術機動隊」はライトノベルです。 イラストは雨つゆさん(ツイッター@ame2yu)(旧名、水都ここさん)にお願いしました。 タイトル:「先天の少女と魔術機動隊(2)」 電子書籍販売サイト:アマゾン ASIN : B0B69ZNJ49 https://www.amazon.co.jp/dp/B0B69ZNJ49 ご興味のある方は、ぜひ、読んで頂ければ幸いです! ■「先天

          小説「先天の少女と魔術機動隊」第2巻、電子出版しています!

          小説「スバルの異世界ゲーム」電子出版しています!

          小説「スバルの異世界ゲーム」電子出版しています! アマゾンにて絶賛販売中です! 「スバルの異世界ゲーム」は児童向け小説です。 イラストはRyukaさん(TwitterID「@Ryuka1229」)にお願いしました。 https://www.amazon.co.jp/dp/B0B5G4DNZ9 ■「スバルの異世界ゲーム」はこんな話です 「わかった! 何でも腹一杯食わせてやる! ただ条件がある! あのドラゴンを、今すぐ倒せ!」  そう叫ぶと、虚ろだった少女の瞳に、精気が宿った。

          小説「スバルの異世界ゲーム」電子出版しています!